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第41話 ギルドマスターになることになりました

 翌日――


「ふわぁ……ちょっと寝過ごした」


 俺は朝七時過ぎにUWアンリミテッド・ワールドにログインした。

 朝イチにギルドハウスの準備ができると聞いていた。

 また朝イチログインして見てみようと思ったんだが、一時間ばかり寝過ごした。

 結局俺が敵を引き付けている間に、あきら達は『ギルド設立許可証』を発見していた。

 すぐギルド設立の手続きをやって、翌日まで待ちって言われたからその日はみんなログアウトし、それで今だ。


「きゅーきゅー!」


 ログインするとリューが俺にまとわりついてくる。

 おはようの挨拶か、可愛いな。

 昨日ログアウトしたのは学園の転送ルームの前だった。

 俺はリューを抱っこして、転送ルームへ。

 で、転送の行き先を見てみると、ギルドハウスへっていう項目が増えている。

 さっそく選ぶ。


 すると目の前がぐわんと歪んで歪んで――また戻っていくときには別風景に。

 そこは、木造のファンタジー風家屋の中。

 殺風景で家具は何もない。上に続く階段と、いくつかの部屋への扉が見える。


「まぁギルドハウス貰っただけだからな、家具付きっていうのは甘いか」


 このゲーム家具も合成できるからな。

 そういうので揃えて好きなようにコーディネートしなさいって事だな。

 うん、いいねマイホーム! 苦労したかいがあったってもんだ!


「リュー。今日からここが俺たちの家だぞ! お前がくつろげるスペースも作ってやるからな~」

「きゅーきゅー♪」

「よっしゃ上にも行ってみようぜ?」


 階段を登ろうと近づくと――


「あっ! 蓮くーん。おはよー」


 階段の上にあきらが。俺は見上げて挨拶を――


「おお、あきらおはよ……ぉおっ!?」


 声を上げてしまったのは、見えたから。

 ソードダンサー装備だったし丈短いし、階段の角度的な問題で――

 よく見えて最高だなとは思うが、これは不可抗力だった。


「!?」


 あきらも俺の反応で何事か伝わったらしく、さっと引っ込んだ。


「い、いいよ上がってきて!」

「ああ、りょーかい」


 階段を上ると、脇に立ってるあきらはすでに女子高生ルックに。


「……今のは、わたしも不注意だったから怒るのやめとくね」

「ああ――どうも……何でソードダンサー装備だったんだ?」

「昨日のままで、テンション上がって着替えるの忘れてたの」

「なるほど――」


 まあ俺もわくわくして早起きしてきたし、みんなちょっと浮かれ気味だよな。


「今はまだ何もないけど、これからいろいろカスタム出来そうだし、楽しみだね!」


 ちょっと落ち着いたらしいあきらが、にっこりと笑顔を見せる。


「おお。この殺風景さが逆に何かわくわくするよな! ここからどう改造してやろうかってさ!」


 普通のネトゲでも似たようなシステムはあるけど、体感では完全に実写なUWアンリミテッド・ワールドの方が喜びもひとしおだわなー。

 ねんがんのマイホームを手に入れた世のお父さん方の気持ちがちょっと分かる気がしなくもない!


「ふふふ……蓮くん的にはどうしたいの?」

「そりゃまあまず、合成やりたいからマイ工房が欲しいな! んで作った物を売るための店がいるし、商品やら合成素材の保管庫もいるよな!」

「じゃあ琴美ちゃんたち戻ってきたら、みんなでどう使うか方針会議だね!」

「お、そうなんだ? みんな来てたのか。俺が最後かよ」

「うん。二人ともちょっと外も見て回って来るって。あ、ねえねえ蓮くん。記念に一緒にスクショ撮ろ?」


 と、カメラを取り出すあきら。


「分かった。スマホの自撮り棒みたいなのあればいいのにな」


 手を伸ばして離して撮るしかない。

 するとリューがカメラに手を伸ばす。


「きゅーきゅきゅきゅー」


 自分を指さして、うんうん頷く。


「あ、リューくん撮ってくれるの?」

「きゅきゅ」


 こくこく。おお、出来るのか。さすが守護竜さんは仕事ができるな。

 こうやってギルドハウス貰えたのもお前のおかげだよ。マジでできる子だ。

 というわけでリューに撮って貰って楽できた。


「ねえ蓮くん、何か強引に誘っちゃったけど……この学校来てよかった?」

「そりゃあ、もちろん! 今までも楽しかったし、これからも楽しそうだぜ?」

「うんわたしも! これからもいっぱい楽しもうね?」


 あきらはそう言って、すっごい可愛らしい笑顔になる。

 やーガチムチの獣人キャラだったフレの中の人がこんなだとは……返す返すも驚き。

 まあ嬉しいか嬉しくないかと言われれば嬉しいから、何ら問題はない。


「おう。これからもよろしく」

「うんっ!」


 握手。まあ何となく。あきらの手はすごい柔らかい感じだった。

 これからは、とりあえずこのギルドハウスをみんなでカスタムだな。

 それからギルドもでっかくして将来的には浮島貰って――

 紋章術師としてさらなる一撃必殺のロマンも追及しないとだし、マラソンランナーとしての可能性も突き詰めてみたい。リューの育成にも励まないとだ。


 ああギルド対抗イベントでジャイアントキリングも忘れちゃいけない。

 色々やれることあるな。このゲームは。

 三年の卒業までにどこまでやりつくせるかは分からない。

 とにかく、思う存分遊び倒してやろう!

 そこで、散歩から戻ってきたらしい前田さんと矢野さんが姿を見せた。


「おっ。高代も来てるしー。おはよー」

「おはよう高代君」

「おう。おはよー」

「琴美ちゃん優奈ちゃんおかえりー」

「あれえ、ひょっとしてお邪魔しちゃったし? もっといちゃいちゃさせろー! って感じだったり?」

「ち、違うもん! もう……!」


 と、あきらがちょっと顔を赤くする。


「矢野さんもすぐそういう話にしたがるよなー」

「そりゃもう、そうじゃなかったらこんなファッションしてないって」

「そーいうもんなのか?」

「そそ。バカだから、ファッションと恋バナとゲームの話しくらいしかできませんしー」

「心外だな。ゲームってのは目の前の現象の奥に潜む計算式とか、ステータス1ポイントの意味を突き詰めて検証して、そこから自分なりの論理を構築して結果を出すのが楽しいんだよ。何も考えずに楽しむもんじゃなく、考えさせてくれるからこそ楽しいわけで」

「うわなんかウザッ!」

「蓮くんは蓮くんでそんなことばっかり言ってるよねー……」


 と、階下の方からごめん下さい、と声がした。

 ん? 誰か来たのか?

 俺たちが下に降りて扉を開けると、来訪者はNPCの女の人だった。

 すらっとしたモデル体型の美人だ。


「おはようございます。ギルド管理局事務所より参りましたレイミーと申します。ギルドハウス引き渡しの最終手続きと各種機能の説明に参りました。ただいまお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」


 ほうほう。チュートリアル的なことね。

 俺たちは頷いてレイミーさんをハウス内に招き入れる。


「では早速ですが、どなたがギルドマスターになられるかはお決まりですか? お決まりでなければ、あと二日以内に――」


「「「いえ、決まってます」」」


 と、あきら達三人が一斉に俺を指差した。


「ん!? 俺かよ! クラス委員の前田さんかと思ってたけど!?」

「私はクラスだけで十分よ。ギルドの方は高代君にお願いしたいわ」

「よろしくー。ギルマス蓮くん!」

「めんどーだからねえ。高代おねがーい」

「……へーい」


 ま、いいか。


「じゃあ俺がギルドマスターでお願いします」


 俺はそう言って、手を挙げた。

 さてこれから、どんなギルドになっていくかな!

以上で一部完というところです。お疲れさまでした!

キリのいい所で、ここまでの評価などしていただけると助かります。


さて続きですが、他作業との兼ね合い&書き溜め期間のため

多少お時間頂こうと思います。


また再開しましたらよろしくお願いします!

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