第38話 サークル魔法が超進化した
「ん!?」
「おお!? 光ってるし!?」
「リューくんどうしちゃったの!?」
「お、お腹でも壊しちゃったのかしら……!?」
俺は自分のログを確認してみる。
リューの成長段階が上がりました! 習得するスキルを選んでください
ほう……!?
「おおー。いい効果みたいだぜ! 成長したからスキル覚えれるよってさ」
いいねいいね育成の醍醐味だね。何を覚えられるのかね?
選択肢を確認。
リジェネレート(常時発動)
<効果> 守護竜の近くにいるプレイヤーのHPが
徐々に回復するようになります
マスター以外のPTメンバーにも有効です
回復量は1秒あたり5HPです
オート採集(常時発動)
<効果> 近くに素材の収集ポイントがある場合、
時々自動で素材を回収してきます(採集道具は不要)
マスターがログアウトしている間にも、素材を収集してきます
ターゲットマーカー(常時発動)
<効果> 範囲魔法や範囲スキルの発動ポイントになれます
対象はマスターが使う魔法及びスキルのみです
設置系の魔法やスキルを受けた場合、
守護竜が移動すれば合わせて効果範囲も移動します
どれも常時発動型のサポート効果だな。
ふむふむふむ。あー欲しいの二つあるぞこれは。
だが欲しさのレベルを考えたら、ぱっと一つに決めることができた。
あれだな、あれ。
「何覚えられるのー?」
「このメッセージ見てくれ『リジェネレート』『オート採集』『ターゲットマーカー』だってよ」
俺はウィンドウを拡大表示してあきら達に見せる。
「みんなどれがいいと思う?」
「『リジェネレート』じゃん? PTメンバーにも恩恵あるし、HP回復手段は多ければ多いほどいいし」
「安全第一よね」
矢野さんの意見に前田さんが頷いてた。
「でも『オート採集』も捨てがたいかも。このゲームって強制ログアウトの期間があるから、死に時間の有効活用になるよねこれ」
あきらの意見はもっともで、俺もこれには魅力を感じた。
「おうじゃあ『ターゲットマーカー』にしよう」
俺は『ターゲットマーカー』を選択して決定した。
「じゃあって全然人の意見入ってないし!」
「聞く意味あったのかしら……?」
「蓮くん、なんでそれなの?」
「『リジェネレート』は『デッドエンド』撃つときのHP1調整を崩される可能性あるからな。逆にちょっと邪魔かなってさ。『オート採集』は悩むけど『ターゲットマーカー』が紋章術師にはかなりいいと思うんだよな。優先度としてはこっちだわ」
さっそく試してみよう。俺は『ディバイトサークル』の詠唱を開始。
おお『ターゲットマーカー』の効果でリューをターゲット指定できる。
リューをターゲットに発動! 光の円陣がリューの回りに発生。
「リュー。ちょっとその変ぐるぐるしてくれ!」
「きゅっ!」
敬礼みたいなポーズをするとリューが俺達の回りをくるくるし出す。
すると展開されたサークルもリューにくっついて移動していく。
そうそうこれ! サークルの移動ができるようになるって事。
「紋章術師のサークルは展開した後動かせなかったからな。これは超進化だ! リューいいぞ! ナイスナイス!」
「きゅーきゅーきゅー!」
俺が褒めるとリューは満足げだった。うん可愛いなー。
「ほーん。動くのは分かったけど、それで何が嬉しいし?」
「ヘイトが管理できていれば、敵は動かないからサークルが動く必要もないんじゃ?」
矢野さん前田さんは、いまいち納得いかないみたい。
「対人戦用って事だよね? リューくんに相手追いかけて貰えば使えるようになるし」
対人戦はヘイトとか関係なくなるから、設置型のサークルは見て回避余裕になる。
リューの能力でサークルが動けるようになれば、確かに対人でも使えるようになる。
「それも正しいけどさ、俺的にはもっと紋章術師の可能性が広がると思うぜ。そのうち検証してみんなに見せるわ。今は先進もうぜ」
今はワンミス全滅のダンジョン攻略中だ。そちらに集中しないと。
そして先に進んで――俺達は、黄金に輝く物凄く豪華な扉を発見した。
「ん!? 何かいかにもお宝がありますって感じの扉発見!」
「ほんとね。けど……!」
「まあそりゃそうだよねって感じだけど……!」
「うーむ。さぁどうすっかね……!」
扉の前には門番がいた。
デッドリー・キング レベル99 王冠アイコン(レアモンスター)
やっばいの来たぞこれ。
さっきのデッドリー・ジェネラルの上位種だな。
明らかに格上感漂う宝飾された黄金の鎧に、ジェネラルの倍以上ありそうながっしりした体格。目の奥がカッと真っ赤に輝いていて、携えている漆黒の両手剣も禍々しいオーラを放っている。
スケルトンっちゃスケルトンのくせに、風格があってカッコいいのだ。
それが更にデッドリー・ジェネラルを六体側に控えさせている。
計七体の門番が、宝物庫と思われる扉を守っていた。
「うっわー……ねえ高代どーすんのこれ?」
「と俺に聞かれましても……強そうだなこれ……」
「こーいう時に何か考え出すのあんたの役目じゃん? さぁ早く早く!」
何かすっごい便利キャラ扱いされてるな俺は。
「いつも俺ばっかりな件について……」
「それだけ高代くんを信頼してるって事よ。何か考えつかない?」
「すっかり軍師ポジだねー蓮くん。孔明がんばれー」
「俺劉備ポジがいいなー。配下任せでも生きていけそうだし」
と冗談を言いながらも、必死で考えた。
うーん。この『デッドエンド』封印縛りダンジョンじゃな。
結構深く潜って来たし、できれば今回で目的の物をゲットしたいが。
うーむ……あ、そうか。別にあいつ倒す必要はないんだよな。
奥の宝物庫にさえ入れれば……
後で検証してみんなに見せると言ったけど、いきなりここでやってみようか。
上手く行くかは知らんけど――これしか思いつかない。よーしやるか!
「よし。勝つのは諦めるか?」
俺は笑顔でそう提案したのだった。




