表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/256

第34話 続いて合成魔法も検証してみる

 俺と前田さんはそれぞれ『マジックエンゲージ』を発動した。

 さあここからそれぞれ魔法の詠唱に入る。

 前田さんはもちろん『ディアボリク・ハウル』。

 俺はまあサークル系なら何でもいい。

 ここはMND(精神)を下げる効果の『ディマインサークル』を選択。

 MND(精神)は魔法へのレジスト率にかかわるから、ちょっとでも確率上がるかなと。


「『ディアボリク・ハウル』!」

「『ディマインサークル』!」


 俺達の魔法の詠唱完了。さてどんな感じになる?

 俺が範囲指定した、近くにいたアイランドバニーの足元に紋章陣が展開される。

 能力低下のアイコンがアイランドバニーに点灯する。


 ここまで普通の『ディマインサークル』か? そこから――

 地面に展開されている紋章陣の色が赤寄りに変化していく。

 そして、紋章陣の中から『ディアボリク・ハウル』のドラゴンヘッドが飛び出す。

 それが咆哮しながらアイランドバニーに噛みつき、HPバーが7割がた削られる。


「おお当たった!」

「何だか、HPの減りが少し多いかしら?」


 前田さんは言いながら、アイランドバニーが反撃して来るのを逆に杖で殴り倒す。

 さっきからずっとやってるから、もう空気扱いだ。

 学者が直接攻撃弱いとはいえ、最低レベルのモンスターを倒すくらいは簡単だ。


「そこも含めてまた数撃って検証してみようぜ。もう100本行くぞ!」

「えぇまた!? あ、でも……ええ分かったわ」


 なんだかちょっと嬉しそうに、前田さんは笑顔で頷く。

 やる気になってくれてるのは、いいことだ。

 というわけで100本ノック2回目開始――


 ――はい終了。


「……いーねぇ!」

「ええ、劇的に違うわね!」


 『マジックエンゲージ』で撃った結果は、大当たりだった。

 何と命中率100%。100回撃って100回当たった。

 これは完全耐性持ち以外には必中なんじゃなかろうか。

 しかも『ディアボリク・ハウル』のHP半減効果が増幅していた。

 やっぱりHPを半減でなく七割がた削ってくれる。


「これはいい発見だな! 竜言語魔法は『マジックエンゲージ』前提なんだな」


 UWアンリミテッド・ワールドガイドブックも内容的には初歩的なことしか載っていない。

 『マジックエンゲージ』で何と何の組み合わせが強いまでは書いていなかった。

 だから手探りで開拓する必要があるが、これはいい組み合わせを見つけた。

 紋章術師と学者も相性いいじゃないか。

 紋章術師本来のサークル系魔法が活かされているのも嬉しい。

 何せ俺ときたら、紋章術師のサークル魔法をMP捨てにばっかり使っていた。


「便利よね。実は結構有名な組み合わせなのかしら、これ」

「どうだろ。王冠付きには全く効かないとかある気がするな。じゃなかったら、もうちょっと学者も紋章術師も世間の評判よくてもいいよな?」

「本当に重要なときには役に立たないから、評価されてないって事かしら?」

「そんな感じだと思うけどな」


 それに強過ぎる雑魚モンスターを狩るのは、ニッチな行為だ。

 このゲームでは雑魚モンスターの経験値は、こちらとのレベル差によって決定する。

 それには上限があり、大体自分より10もレベルが上の相手ならマックスの点数だ。

 アウミシュール大古墳の奥の敵は俺達より数十も上になるが、倒しても経験値的には10レベル上の奴と同じになってしまう。正直、意味がないのだ。趣味の範囲だ。

 趣味的行為が得意だからと言って、ジョブの評価には繋がらないだろう。


「だけど俺達の今の課題は強い雑魚モンスターを何とかする事だから、これは使える。希望が出て来たんじゃね?」

「ええ、そうよね」

「もうちょっと強い敵にも試してみたいな。まだ気になるところもあるし」


 まずあのアウミシュール大古墳の敵はアンデッドだった。

 だから、アンデッドに効かないとかはないかってこと。

 それから『マジックエンゲージ』した魔法のヘイトはどうなってるのかってこと。

 この辺りを把握しないとな。


「場所を移す?」

「だな。10層に上がって、アンデッド系の奴にちょっと撃ってみよう」


 というわけでワープで10層に移動。

 適当にレベル20くらいのアンデッドの敵を見繕う。

 

 ファイター・スケルトン レベル19

 

 うんこれだな。早速『マジックエンゲージ』してみた。

 剣と盾を持った骸骨のモンスターに合体魔法が発動する。

 HPバーがギュ-ンと減った。おお、効くな。いいねいいね。

 そして、攻撃された敵は俺達に向かって攻撃しに突っ込んでくる。

 魔法で迎撃しようとする前田さんを、俺は止めた。


「待った前田さん。しばらく攻撃なし。防御も回避もなしで、黙って攻撃受けてくれ」

「? 分かったわ」


 ファイター・スケルトンは前田さんに向かって剣を振り下ろす。

 ヒット。前田さんのHPが減る。

 するとスケルトンはくるっと俺の方に向いて攻撃してくる。

 ヒット。俺のHPも減る。

 スケルトンがくるっと前田さんの方を向く。あっち行って攻撃。

 ヒット。次また俺に――

 こんな感じで、俺と前田さんの間を行ったり来たりのピンポン状態。


「なるほどな……じゃあもういいぜ前田さん。倒そう」


 前田さんはこくんと頷き魔法を詠唱。


「『エクス・ヒール』!」


 回復魔法を受けたスケルトンはHPが0になってカラカラと崩れ落ちた。


「……うーんなるほど。これはちょっと考えないとだわ」

「? 何を?」

「いや、これを見る感じ俺と前田さんでヘイト半々になってるっぽいからさ」

「モンスターの挙動を見る感じ、そうよね」


 敵モンスターは、最もヘイトを稼いでいるプレイヤーを攻撃するようになっている。

 主にこちらが攻撃をもらうことでヘイトが抜ける、つまり減少する。

 さっきスケルトンがピンポン状態だったのは、一発攻撃するごとのヘイト抜けで俺と前田さんのヘイト量の大小が入れ替わっていたからだ。

 優先目標がころころ変わっていたんだよな。

 つまり元々のヘイトがほぼ一緒だったということになる。


 ダメージは『ディアボリク・ハウル』のほうでしか稼いでいない。

 だが合体魔法だからか、俺にも半分ヘイトが来るらしい。

 しかしそうなると……困りごとが出てくる。

 今のままじゃ駄目だ。もうひと押し何かがいるぞこれは。


 それからもう一つ確かめるため、俺達は八層に降りた。

 で、王冠付きのアイアン・ジェミニに合体魔法。

 今度は効かなかった。やはり王冠付きには効かない――と。メモメモ。


 と、そこで不意にチャイム音が鳴った。

 システムメッセージがログウィンドウに表示される。


 ――間もなく朝礼の時間です。生徒の皆さんは至急学園に戻ってください。


「あ、もう授業の時間か。とりあえず戻るか」

「そうね、そうしましょう。続きはまた放課後ね」


 というわけでいったん検証は終わり、と。

 でも大分収穫はあった。何とかなるかもしれないと思えるくらいには。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ