第30話 隠し通路とラッキースケベ
宝箱の小テストにあきらと前田さんで全問正解。
見ていた矢野さんが喜んではしゃいでいた。
「よっしゃー全問正解だしっ! で、中身は中身は?」
「えーと……おっ。『特殊合成指南書<銃剣>』だって。これもしかして優奈ちゃんが使える感じかな?」
「んー銃剣って何? ことみー」
「銃の先に装着する刃物ね。それで槍みたいに使うのよ」
「ほう! んじゃ接近戦できる感じ?」
「そうなんじゃねえ? しかしこのゲーム銃剣もあるんだな。俺知らんかった」
「でも銃剣のアーツって聞いたことがないわね」
「作ってみりゃ分かるかねー。それ特殊合成身に着ける奴だよな? 俺が貰って作ってみようか?」
「そうね。私も鍛冶とかは上げてないし、任せるわ」
「うんわたしもー。興味ないから蓮くん貰ってー」
「あたしも上げてねーし。作ってみて作ってみて」
「おう。んじゃあ使ってみる」
俺は指南書をもらって使用。
『特殊合成<銃剣>』を身に着けたってログが出た。
こうやって特殊合成スキルが必要なアイテムもあるんだよな。
んで――合成メニューを開いてレシピ一覧を確認。
リストに銃剣類の項目が追加されてる。
ほうほう――いろんな素材の銃剣があるわけだが。
まあ今のレベルにちょうどいいのは『鉄の銃剣』とかだよな。
『アイアンインゴット』で出来るし……三個か。手持ちは十分ある。
「どれどれ――」
合成開始。タレントで『流れ作業』が付いているから即終了。成功。
俺の手に鉄で出来た銃剣が現れる。
「っしゃ成功っと。これと銃を合成だよな? 矢野さん銃貸してもらえるか?」
「ほい」
手渡されたのは『マスケットガン』という銃だった。まあレベルなりの装備だ。
「これと銃剣を――」
合成。お、合成開始できた。間違ったレシピなら開始できずにエラーになる。
推測が合ってたな。で、合成の結果もすぐ出た。
『マスケットガン』が『マスケットガン<着剣>』って表記になったぞ!
見た目的にも銃口の下側に金具がついて、ナイフを装着した感じに。うん銃剣だな。
「はい出来た!」
「おぉーこれ接近戦できそうじゃん? いい感じー! ありがとぉ♪」
嬉しそうに銃に頬ずりするギャル女子高生って、何か凄い光景だ。
だがまあ、喜んでもらえたなら何より。
「よっしゃこれは試し切り待ったなしじゃん!? さあいこいこ!」
敵を倒しながら探索続行。
矢野さんが試し切りをして分かったことは――
まず銃剣では突き攻撃のモーションが出せる。威力は当然銃撃よりは劣る。
突き攻撃自体は、銃の装備適性の範疇に入っている。
槍っぽい動きだから槍適正ないとスカスカ――というわけじゃなかった。
ただし銃剣専用アーツみたいなものはない。
あくまで銃のアーツが使えるだけ。
つまり、不得手な接近戦をちょっと補完してくれるオプションだな。
それでも突き攻撃からの銃撃とか格好いいし、なかなか強い。
そんなに差し迫らない相手なら銃剣攻撃オンリーで弾節約とかも全然ありだ。
経済的にかなり助かる装備なのでは。
銭投げ上等の空賊にとって、使い減りしない攻撃手段は貴重だ。
そんな感じで試し切りをしながら探索を続けたが、問題が起きた。
「あれぇ? ねえ蓮くん、ここで行き止まりだよね?」
「だな。鍵使うところもなかったし……ここは外れか」
「まぁ武器進化したし、あたし的には外れでも全然おっけ」
「無駄足じゃなかっただけよかったわね」
途中俺とあきらのレベルも上がったしな。
俺26、あきら26、前田さん27、矢野さん30になった。
「外に出て、別の入り口から入ってみましょうか」
誰も異議なし。外に出る。
別の穴から入り直し。今度は宝箱も何もなく空振り。
それが二、三回繰り返されると、ちょっと空気もだれてくる。
「あーん。また外れだったねえ」
「だるいしーめんどいしー……飽きたあ」
リアル時間的にはそろそろ夜の七時。お腹も空いてくる頃だ。
流石にリアルな空腹はゲーム内では満たせないからな。
「少し休憩を入れて、後でまた集合する?」
「うーん……それがいいか――」
と言いかけたが、俺はふとあることに気が付く。
今俺達がいるのは、外れだった出入り口を出たところ。
丘陵地帯の中腹あたりで、結構広い範囲が見渡せる。
で、向こう側に見える丘の頂上あたりに、別の集団が入っていくのが見えた。
10人くらいか? 約2PTだな。
「あ、あっちにも入り口があるんだな。人が集まってら――」
「ん。本当ね。あっちの入り口が宝物庫に繋がっているのかしら」
「そうかも! ねえ行ってみようよ」
「んじゃあれ外れだったら休憩希望~」
という事で、他の人たちが入っていったところに移動。
俺達が着いた時には既に中に入っていった後らしく、入り口は無人。
で、俺達もそこから中へ。
「……ここ、何か他と雰囲気違う感じがするな」
「そだね。何かちょっと怖いね……」
と言いつつスクショは欠かさないあきらである。
ここは何か他に比べて朽ち果て具合が凄いし、一段と暗かった。
広場みたいなところだが、あちこち崩れいて、いかにも何か出そうな感じがする。
そこら中で青白い人影がふっと浮かんで消えたりしている。怨霊的な何かの演出か?
あちらこちらの壁に、人型のミイラっぽい何かが埋もれているのも不気味だ。
「よく考えたら古墳って墓だし……うう~お化け屋敷とか駄目なんですけどあたし……」
意外だ。矢野さんが一番怖がってそうだ。
「だ、大丈夫よゲームなんだから……」
前田さんもちょっと腰が引け気味。
ゲームと分かってるとはいえ、VRMMOの臨場感は半端ない。
要はこれ、超リアルなお化け屋敷みたいなものだ。
怖がっているみんなを見ていると、何か女の子してるなという感じでほほえましい。
俺はこういうのは割と平気だった。
何かこうなると、ちょっと悪戯してみたくなるぞ。
というわけで――
「わああああぁぁっ!!」
ベタに大声。案外これが効果覿面だった。
「「「きゃあああああっ!?」」」
みんなびっくりして俺に抱き着いてくる。
それは健全な男として嬉しくないわけはない。
だが、三人いっぺんに来られると勢い余って全員こけた。
「うわっ!?」
そしてこけた先の床が、ぱかっと開く。
落とし穴!? そこに全員まとめて落ちてしまった。
結構な深さを落下し、衝撃。
痛てぇ……ていうか痛いくらいで済むゲームでよかった。
「う~……いたたたぁ……もお蓮くんびっくりさせないでよぉ!」
「大声と落とし穴で二回驚いたわ……悪趣味よ高代くん」
「いっててて……悪い悪い、つい出来心で……っ!?」
うぉっ!? 見てはいけないものが見えた……!
俺は地下室の床に顔面直撃していて、そこから顔を上げたわけだが……
ローアングルから、床に尻もちをついていたあきらと前田さんのスカートの中が……
「高代~? 今ことみーとあっきーのスカートの中見たなぁ?」
矢野さんがにやっと笑ってツッコんでくる。おいぃ! なぜばらす!?
「蓮くん! 人前でえっちぃのはダメなんだよ!?」
あきらはぷんぷん怒って――
「ち、ちち違うのよこれは……」
前田さんは何か慌てている。
「し、知り合いがね? あなたは大人しいから、下着くらい大胆にって無理やり……」
うん何か、あきらのはゲーム内の髪の色とおんなじでさ、ピンクでさ。
まあ可愛い感じでイメージ通り。
前田さんのがさ。黒でさ。何か凄いセクシーな感じでさ。
清純なイメージだったからギャップがあってびっくりした。
「だ、だからね。決してこう――遊んでるとかそういうわけじゃ……」
「ああそれは分かってるというか……ちとびっくりしただけ……」
「そ、そう……?」
「ほう? 何々ことみーそんなエロいのはいてるの? ちょっと見せてみー?」
「い、嫌よ! なんでそんな事……!」
「どれ、わたしも後学のために……」
「お。あっきーじゃあそっち押さえて」
「うん」
「きゃー!? ちょっと止めてー!」
「ま、まあまあ二人とも。前田さん嫌がってるし止めとけよ」
「はぁ? そもそも高代のいらん事しいのせいじゃん? 何いい子ぶってんの?」
「そうだそうだー。みんな蓮くんが悪いんだから手伝いなさーい」
「できるわけねえし! 俺が悪かったから、謝る。とりあえず上に戻る道探そうぜ?」
と平謝りで悪ノリする二人を止めた。
そして、落とされた地下フロアをみんなで見渡してみる。
「ん? 何かいかにも意味ありげな扉が……」
巨大な、複雑に紋が彫られた扉が鎮座していた。
「蓮くん、何かはめ込めそうな穴があるよ?」
「これ、買ってきた鍵の形に似てないかしら?」
「おお、そうかも――」
俺は『古代王族の鍵』を取り出す。確かにまともな鍵の形してないんだよなこれ。
扉のくぼみに鍵をはめ込む。お、ぴったり。
「はまった!」
鍵が光り出して、その光が扉全体に行き渡る。
重い音を立てながら、ゆっくりと開いていく。
「おー正解ルート来たんじゃん!? ナイス高代ー!」
「さっきいらん事しいって言ってたくせに……」
まあいいけどな。
俺達はウキウキで扉奥に足を踏み入れ――そして見た。
「う…うう……」
「やられたぁ……」
「まだ早かったかぁ――」
一言でいうと、死体だった。




