第29話 アウミシュール大古墳
俺達は早速飛空艇でミシュール大陸に渡り、アウミシュール大古墳に向かった。
クラス対抗ミッションが終了すると、選択できる飛空艇の航路も増えた。
ミシュール大陸へのルートもその一つだ。
現場は優しい緑色に覆われた丘陵地帯。
そこら中に大古墳内部に入り込める入り口が開いていた。
地上部分にもモンスターがいるが、向こうからは襲ってこないノンアクティブ。
しかもレベル10代くらいで特に問題にはならない感じだった。
「よっしゃ、じゃあ手当たり次第入り口に入ってみるかねー」
俺達はPTを組んで古墳の中に。
紋章術師、ソードダンサー、学者、空賊でレベルは25、25、27、30。
はじめの入り口には特に門などはなく、ほら穴が直接内部の遺跡に繋がっていた。
中は結構薄暗い。
しかし壁面に所々魔術文字? 古代文字? みたいなものが刻まれていた。
それが薄明るく発光しているので、特に問題なく探索ができた。
「ほほー。何か古代文明してるねー」
初めて行くところはカメラでスクショがあきらの行動原理。今日もブレていない。
「お。敵がいる」
一本道の通路の途中に敵発見。
魔法で動いてるマジック・ドール系の敵だ。
先っぽに鉄球が付いた痛そうな両手杖を携えている。
キーパーズ・ドール レベル28
古墳を守る警備兵か? まあ特に問題なく倒せるだろう。
「倒しちゃうね?」
と、あきらが言うと全員頷く。
反応を見たあきらは、敵の感知範囲外から『スカイフォール』の衝撃波を放つ。
「それっ!」
衝撃波が直撃。敵は慌ててあきらに向かってくる。
が、衝撃波の連射でゴリゴリHPを削られていく。
加えて矢野さんも装備してるライフルで攻撃。
昔のヨーロッパ式のデザインだ。
さらに前田さんも攻撃魔法の『ファイアボール』を放つ。
一斉にそれらが着弾し、敵はこちらに一太刀浴びせる前に倒れた。
「うん、さくさく進めそうだね」
と言うあきらが先頭に立って、探索を進めていく。
途中何体も敵がいたが、三人の遠距離攻撃で特にピンチもなく進むことができた。
うーん……俺やる事がねえなー。
ここで奥義撃ってはしゃぐ意味もない。
だから仕方ない事だが……見てるだけ感が凄い。
こういう時に何かできる用のタレントもそのうち取っておくべきか。
必要に応じて付け替えればいいわけだし。
それができる自由度がこのゲームのいいところである。
「こういう時に消費武器しかないのって地味に辛いなー……」
矢野さんがそう愚痴っていた。
「空賊って武器が全部遠隔攻撃用だものね」
「そだよことみー。攻撃したら常に矢弾消費して金が飛ぶし」
「近接用の武器持てるタレントとか欲しいとこだね」
と、あきら。
「MEP空になっちゃったからなー。まああれはあれで後悔してないけど」
「どちらにしろ100ポイント代じゃ皆伝の証系のタレントは取れないわよ? 次のテストで頑張りましょう」
「うう……ゲームにべんきょー要求してくるなんてひどくない? この学校。バカが不利なのはリアル人生だけでいいんですけど」
「そうかぁ? 俺は逆に、特にやる意味感じない勉強に意味を持たせてくれて良かったって感じがするけど」
前よりは授業に身が入るようになったわな。特に興味のない教科に関しては。
「実際この学校で成績が上がるってケースは多いらしいわね」
「そだねー。その謳い文句がなかったらわたしとかここ入らせて貰えなかったよ」
「私もそうだわ」
「俺んちは関係なかった……好きな事やれしか言われん」
「あたしもぉ。親がせめて高校は行けっていうから、面白そうだからここにしたし」
「羨ましいわね、自由で」
と、前田さんがちょっとため息をつく。
「ことみーの家って親とか頭堅そうなのに、よくこんな遊び半分の学校入れたよね?」
まあ実際成績は上がる傾向にあるとはいえ、矢野さんの言うように遊び半分に見えるのも事実だろうな。
「ええ確かに少し喧嘩もしたけれど……それまで堅苦しくて何だか疲れちゃったから、高校は好きな所にって言ったら考えてくれたわ。ただし成績が落ちたら退学させるって言われているけど」
「けっこう横暴だなーそれ。まー養われてる側が言える台詞でもねえけど」
うちの親はそんなこと言いそうにないな。感謝しないとだなと。
「大丈夫よ高代くん。前より授業に集中できるようになったし、落ちない自信はあるわ。この学校は楽しいもの」
前田さんは自信ありげに笑っていた。
さて探索を進めて、俺達は宝箱を発見した。
「おお! お宝ー! お宝!」
矢野さんが一目散に宝箱に飛びつく。
「優奈、罠がないか見てね」
「おっけー!」
盗賊や空賊は、素の状態で宝箱の鍵開けとか罠の見破り&解除ができる。
他ジョブが鍵開けや罠対応をしようと思うと、それ用のタレントが必要だ。
俺達はまだ誰もそっちの方は取得してないから、空賊の存在は助かるな。
「んー。罠あるねーこれは、んーあれだし。アカデミック?」
「あ、小テストかー」
罠名アカデミックは、要するに学力テストだ。
はじめて見るが、ガイドブックには確かに載っていた。
解除不可で、正解ラインを越えられなければ中身が消滅するという。
学校ならではのシステムだよな。
「……得意分野だわ。頑張りましょう、青柳さん」
「うん、任せといて!」
おー。平均90点以上が二人いるのは心強い。
ここでも俺は何もすることなさそうだ。
「じゃあ開けるよー。ことみーあっきー後は任せた!」
矢野さんが宝箱オープン。
宝箱の中からファンファーレと音声アナウンスが流れ出した。
「突然ですが小テストの時間です! 5問中3問正解で宝箱の中身をゲット! 正解数が多い程中身のグレードもアップ! それでは第1問――」
結果だけ言うと、あきらと前田さんの活躍で五問連続正解だった。
さすがだと言わざるを得ない。
「きゅーきゅきゅー!」
俺のローブのフードの中に入り込んで寝ていたリューも起き出し、拍手していた。
今のところ好きに食べて好きに寝るだけだ。
まだバトルの役には立ってくれなさそうだけど、可愛いので全然許す。
このまま成長を見守ろうか。
さて宝箱の中身は何かね――




