最終話 二年目のジョブチェンジ!
で、それから――
結局俺達が夏休みの宿題をコンプリートして、あの扉の先に乗り込むと――
もう既に別のチームによって『レインボーガード』はゲットされており、残りは一つもなかった!
ただ、俺達よりも一歩早かったっぽい雪乃先輩&ほむら先輩達も、ダブルロマン砲による攻略動画をアップしたエミリー達も宿題やっているうちにぶち抜かれてしまい、ゲットできなかったのはご愛嬌である。
あれ以来、反省を活かして長期休みに入ったらまず宿題という行動ルーチンに変わった俺達の成績がますます上がったことは言うまでもない。
そして俺達を抜いて行った他パーティの連中は、みんなエミリー達の戦術を採用したため、それ以来紋章術師の人口は増加傾向に転じた。
『エレメンタルサークル』の研究も進み、デスチャリオット装備の闇サークルだけではなく、光サークルやその他のサークルも狙って出せるような装備セットも(主に俺の手によって)開拓され、一撃の威力では他の追随を許さないロマン砲ジョブとして認知されたのである。
『エレメンタルサークル』によって必要最低限のソロ戦闘能力のようなものも得ていたのが大きい。瞬発火力というメリットが、銭投げ必須&ソロで弱く使い勝手が悪いというデメリットを上回るとの評価を得る事が出来たのだ。
銭投げこそ必須だが、瞬発力は最強。
対ボス用に群れれば恐ろしいスペックを発揮する――
そうゲーム内攻略本に書かれる日も近いだろう。
俺とあきらのことを言えば、赤羽さんとかシズクさんの目論見通りというか、まあそういう事になった俺達は、そのまま変わらず仲良くやっていた。
周りからはそういう事になっても、見ていて前とあまり変わらないと言われる。
だがまあみんなは知らないのだ――
やり過ぎたら倫理コード違反でぶっ飛ばされる事を――
あの初めてぶっ飛ばされて落下死した日の後も、あきらは何度かぶっ飛ばされている。
まあそれ以外は時々あきらの家に呼ばれて行ったりしていた。
そんなこんなで夏休みは終わり秋が来て、冬休みが来て、春休みが来て――
俺達も二年生に昇格する日がやってきた!
俺はギルドハウスの窓から、外を行き交うプレイヤー達を眺めていた。
「おぉぉ~。今年の新入生は結構紋章術師多いな~!」
あのボンクラーズの王と言われていた頃が懐かしいな!
「まぁあの夏休みの攻略動画きっかけで、その後も蓮くんが色々暴れ回ったもんね~。おかげでほら、今年の攻略本!」
あきらが今年度の『UWガイドブック』を見せてくれる。曰く紋章術師の評価は――?
デフォルトでは支援能力も身体能力も貧弱な後衛ジョブ。
だがタレントの『暗器使い』『ファイナルストライク』等により、一撃必殺の高火力ジョブに化ける。
レベルが上がると共に加速する銭投げ。
決して使い勝手の良くないソロ性能。
全てに目を瞑って、一撃大ダメージのロマンを追求しよう!
うーんロマン溢れるコメント!
まぁこういう風に書けって片岡に働きかけておいた結果か?
これに惹かれて皆やってみようとしてるんだなー。
俺的には、この一年検証と実践を繰り返して来た結果が出て嬉しいぞ!
「うむうむ! 分かってるな攻略本! これでもう、紋章術師をボンクラーズの王と呼ぶ奴もいないだろ!」
「そうだね~。ジョブランクの評価もBになってるし、ジャンプアップしたね!」
「本来想定されてる後衛仕様とは全然違いますし――」
と、聞いていた矢野さんがコメント。
「そういう自由度もこのゲームの良さよ。楽しいじゃない」
と、同じく聞いていた前田さんも言う。
「まーね。高代がメチャクチャやってるの見るのは楽しいですし」
「でもあれだね~。これでますます紋章術師が増えたら、パイオニアとして蓮くんはみんなに大きな顔ができるね」
「え? そんなのしねえよ? ってか俺、紋章術師やめるし」
「「「え?」」」
みんなの声が揃っていた。
「ってかもうやめたぞ?」
「うわぁぁぁぁぁ!? ホ、ホントだ、ビーストテイマーになってる!」
「ちょ――何やってますし!? これから時代が来るはずだったですし……!?」
「な、なんて思い切ったことを……それでいいの高代くん!?」
「? ああ勿論。紋章術師がボンクラーズの王を卒業したのなら、俺も卒業するのが普通だろ? 俺はダメな奴を魔改造して、覚醒させて、ジャイアントキリングするのが好きなんだ! 魔改造、覚醒、ジャイアントキリングですよ!」
もう紋章術師は俺の元を巣立ったのだ!
いわば、優遇ジョブとかいう敵球団に移籍したのである!
「ははは……馬鹿ですしこいつ――」
「……としか言いようがないわね――」
前田さんと矢野さんは、すっかり呆れかえっている様子である。
一方あきらは、楽しそうにニッコニコ笑っていた。
「あはははははっ♪ 蓮くんらしい~♪ もう病気だよね病気!」
「まーまーいいじゃねーか。これであきらもソードダンサー卒業できるから、見た目問題も自動的に解決できるしな!」
「お! わたしのためとか言いつつ、またわたしを思い通りにして弄ぼうとしてるね?」
「いやいや人聞きの悪い――」
「でもまあいいよ、付き合ってあげる! で、わたしは何すればいいの?」
「おう! それはですね――」
と、俺は二年目の魔改造プランの披露をはじめるのだった――!
本作はこれにて完結となります!
ここまでお付き合い下さりありがとうございました!
元々ネトゲにドはまりしていた僕としては、楽しく書けた作品でした。
また別な作品もよろしくお願いします。




