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第254話 新たなる称号

「俺も好きだあぁぁぁぁーーーっ! 今度ともヨロシクーーーーッ!」


 と、大声で口に出すと、何故だか背筋がゾクッとした。

 ――これは想像以上に恥ずかしいのだ!

 あきらもやってたし合わせようと思ったんだが、結構辛いものがあった!

 よくこんな事やってたなぁ、あきらは――


「……ってことでお願いします!」

「れ、蓮くん――ゲームのキャラを恋人にするとか結婚させるとかじゃないんだよ!? 分かってる? リアルの話だよ!? いや、リアルに一回も会った事ないんだけどね。それでも、そうなんだよ?」

「分かってる分かってる。そこまでリアルとゲームの区別付かない人じゃねーから!」

「だって蓮くんゲームバカだし……」

「まぁゲームバカなりに考えても、これが最適解だろ! 今後ずーっと一緒にゲームを楽しんで行こうと思ったら、付き合ったり結婚したりするのが一番いいのかなと!」

「……あっはははは! 蓮くんらし~~! 確かにそうだね!」


 俺の答えを聞いて、あきらは涙目になるくらいウケていた。


「いや笑ってるけどさ、俺なりにまじめに考えてはいるんだぞ。この学校に入る前からあきらとゲームするのは楽しかったけど――こっちに来て、中の人がすげー可愛い女の子でびっくりしてさ」

「うんうん。蓮くんわたしの事男の子だって思って疑ってなかったもんね」

「そうなんだよ! でも驚きはしたけど、それまでと同じ感じで組んでやれたし、気づいたら前以上に楽しくなっててさ。我儘かもしれねーけど、今じゃもうあきらが側にいてにこにこしててくれないと落ち着かないと言うか――嫌なんだよ。だから『レインボーガード』の件はガチで取りに行こうとしてたしな」

「蓮くん――そうだね。すごい頑張ってくれてるよね」

「まぁ俺にでも分かるのはあきらは特別って事なんだよな。俺ゲームバカだからさ、毎日一緒にゲームやってるだけで満足して、ピンと来てない所はあるかも知れねーけど――でもまあ、今の俺達に彼氏とか彼女とか、恋人、とかそういう称号を与えるなら、反対する理由はないなと。相手があきらならな」

「うん……そうなんだ。ちゃんと考えてくれてるんだね? 分かったよ」


 多分、涙目の理由が変わったような――

 切なそうな、でも嬉しそうな――そんな笑顔をあきらは俺に向けて来る。

 一言で言ってとんでもなく可愛いな。


「ああ。って言うのを一言に纏めつつ、あきら式に合わせたらああなった!」

「わたし式じゃないし! あれは希美さんが……! も~真似しなくて良かったのに!」

「まぁもう済んだことだし、俺の脳内にも多分一生セーブされたぞ、あれは」

「ああぁぁぁぁ~~!」


 と、頭を抱えるあきらだった。


「……ふっ――ふふふふ……」

「おぉ? いきなりどうしたんだよ?」

「あんなに恥ずかしい思いしたんだから――もうこうなったら、ついでにわたしのやりたい事もやってやるから!」


 キラーンと光る眼が俺を見つめて来た。


「お、おう……? どうするつもり――」


 がしいっ! とあきらの腕が俺の首に巻き付いてくる。

 そしてあきらが背伸びをして、その絵にかいたような美少女フェイスがどんどん近づいてきて――


「お、おいあきら――! ちょっと待て何を……?」

「そんなのもう、この体勢なら分かるでしょ? キスするからね!」

「いやここ外だろ――それにそんないきなり――!」

「だってわたし、恋愛直結厨だもん。蓮くんの側にいて、ずっとこういうことしたいなって思ってたんだよ? だからいきなりじゃなく、満を持してだし! あんな事があったから、恥ずかしいついでだよ」

「だ、だからってなぁ……」

「わたし達は何ですか? さっき新たな称号を得たよね?」

「あ、ああ――恋人とか彼氏彼女とか……」

「だったら何の問題もありませーん! はい観念して大人しく目を閉じなさい!」

「……は、はい」


 ええい観念した! 観念したぞ!

 いきなりで驚くが、確かにあきらの言う通り何も問題は無い。ここが外だという以外は。

 こうなったらこの状況を楽しんでやるぜ――!

 俺が目を閉じると、あきらの息遣いが分かるほどに顔が接近してきて――


 ブーーーー! バチイィィィィンッ!


 警報のようなものと共に、何かが弾けるような衝撃が走った!


「!?」


 目を開ける。ログと警告音が――!


 倫理コード違反です! 不純異性交遊は禁止です!


 おぉそんなシステムが――!? これ学校だしな!

 そういう事しようとすると、動作を強制キャンセルされるのか?

 で、俺の方はちょっと揺れたくらいで済んだが――

 キスを仕掛けようとしていたあきらは、かなりの衝撃を受けて吹っ飛んでいた!

 現場は星空に面した臨空公園。そしてあきらは、外側に向けて飛んでいた。

 高く舞い上がったその体は、公園の柵を軽く飛び越え――そのまま空にダイブした!


「んきゃああああああーーーーあぁぁぁーーぁぁ…………」


 悲鳴が尾を引くように遠くかすれて消えて行く。


「あきら……!? お、落ちた――――!?」


 あきらは力尽きた……


 あ、落下死のログが――!

 えー……今起こった事を纏めると――

 『生まれて初めて彼女が出来たと思ったら、俺にキスしようとしてぶっ飛ばされて死んだ』かな……

 何を言ってるか分からないと思うが、これがありのままの事実なんです――!


「え、えーと……とにかく戻るか。今の設定なら水上コテージに復活してるかな」


 で、俺は戻ろうと移動を始めたのだが――


 ピロン。


 お。メッセージだ。あきらからだ。


 探さないで下さい……


 うん、まあ恥ずかしい上に恥ずかしかったよな、あれは――

 でまあ、その日はそのまま俺もログアウトし、翌朝――


 ピンポーン。


 リアル家のチャイムが鳴って、玄関を出ると――


「お、おはよう蓮くん……き、昨日はごめんね?」


 生まれて初めて会うリアル彼女のあきらさんは、とんでもなく恥ずかしそうにそう言ったのだった!

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