第246話 極度のパワープレイは頭脳プレイでもある
ピンポーン。クリア条件達成! ゲートが解放された!
流れるシステムログが、俺達の勝利を宣言している。
「うわああぁぁぁっ! すっごーーーーい! 本当に一撃で決まったね!」
「フフフフ……! そう! カウンターで雑魚召喚やら、雑魚の攻撃でボスが回復するとか、全てのギミックを無効化する頭脳プレイ!」
「いやー……面倒臭いから何も考えずに一撃でやっちゃえ! っていう極度のパワープレイのような――」
「そのパワープレイを成立させるために綿密な検証やら下準備がいるんだよ! すなわちこれは頭脳プレイ!」
ピンポーン。後30秒後に強制排出となります。
「うわ時間ないね! どっちでもいいから早く行こ!」
「よくはねーが行きますか!」
俺とあきらは、次層へのワープゲートにダッシュした。
そして、出たところにあるセーブポイント!
何かの宝玉が置かれた台座だ。
「よっしゃセーブセーブ!」
「蓮くん早く早く!」
「おう!」
『セルリアの銀盤』を取り出して、セーブポイントに翳す。
セーブしました! 次回以降はこの階層から再開が可能です!
「オッケー! これでハーデスローズクリアしたな!」
突入から30分が経過しました。強制排出となります。
そしてその直後にタイムアップ!
俺達は、『アーズワース海底遺跡群』の出口へ転送された。
「ふー。よしよし! 想定通り! 行けた行けた!」
「やったね蓮くん! クリアできたね!」
よっぽど興奮したのか、あきらが俺に飛びついてくる。
「お、おう……! やったな!」
こんな美少女に抱き着かれて嬉しくないわけがない。役得!
このゲーム、人の質感とかにやけに拘っているので、ゲームの中でもあきらはすげー柔らかいはず……だったのだが何か手触りがカチっとしてるな?
あ、メタルコーティングされたライブシルクドレスか。
もしもに備えて着替えてたのか。
「あ、ホントに手触りがメタルなんだなーこれ」
「あ、そうだねー。これのおかげで助かったね!」
「防御力高いのはいいけど、守ってない部分も多いのにあれだけ硬いのは流石ゲームらしいご都合主義ですなー。うむうむ。ありがたい」
まあ、見た目でも楽しませてくれるので俺としては大歓迎だ。
「だから見過ぎだって蓮くん! ホント遠慮しないんだから――まあでも、これを出してくれた希美さんに感謝かな。無かったら最後まで行けなかったよ」
と、あきらは赤羽さんの方を見る。
外に出るとみんな戦闘不能からは復活していて、普通に近くに立っている。
「まあそうですわね――間違えたのはミスですが、転んでもただでは起きませんのよ」
「……たまたまだろ? すげーテンパってたじゃねーか」
「う、運も実力のうちと申しますでしょう!」
「まま、勝てたんだから結果オーライですし!」
「これで先に進めるわ! きっと私達がリードできているわよね!」
と喜ぶ俺達に混じり、シズクさんだけがやや苦い顔をしていた。
「難関を突破できたのは結構だが……それは問題だと思うんだが――」
と、指を差すのはメタリックなライブシルクドレス姿のあきらである。
「赤羽家の兄妹ならいざ知らず、君までがそんな卑猥な格好を――学生の娘には相応しくないだろう。そこのところをどう考えているんだ?」
シズクさん、お兄様とか赤羽さんの姿を見てダメ出ししてたからなあ。
あきらはそれを見てたから、シズクさんの前でのソードダンサー装備は自粛していた。
浴衣が便利だったからそれでよかったというのもある。
だが、最後の一連の流れでは、着替えざるを得なかったわけで――
「う……家の人に見られたら怒られるかなって言うのは、分かってます――」
「君の家は赤羽家とは違うからな。だからこそ、私もこう言わねばならんと思っているわけだ。自覚がないと言われても仕方がないぞ」
「堅い事をお言いになるものではありませんわ。あの装備がなければクリアできなかったのですし、そもそも今回頑張っているのは、あなたのおっしゃる卑猥な格好とやらをしなくて済むようにするためなのですわ。ですから仕方のない――」
「仕方がないで済ませてしまう発想自体に、自覚の問題があるという事だ。君は口を出さないでいてもらおう」
「そんな事はわたくしの勝手ですわ。あなたに何の権利があってあきらさんを――」
と、何だかゴリっとした空気になりかけたところに――
「――だが待って欲しい! 待つのだ妹よ!」
二人の間に突如として、変態フルフェイス仮面が現れる!
いつもの腕組みをしてびしっと決めたポーズで!
いつの間に!? さてはこいつ『バニッシュフリップ』で隠れて俺達の会話を聞いて、良き所で姿を現したな! 何してんだこの人は!?
「あなたがそう言われるのは、理解はできます。賛同は致しかねますがね。青柳巌氏よ」
ん? 青柳!? シズクさんの中の人がか!?
俺も聞き咎めたが、それ以上にびっくりしているのが当然あきらだった。
「えええぇぇぇぇぇぇっ!? お、お爺ちゃん!?」
おお、お爺ちゃんの名前か!?
いやでも、シズクさん若い女の人だけどな――?




