第244話 ラスト1分
俺達がダッシュで曲がり角を曲がると、縦長の通路のその先に――
「あ――! ゲートだ! 蓮くんゲート見つけたよ!」
「ああ! いい場所にあってくれるな!」
「このまま一気に飛び込んじゃお! 時間ないしね!」
「いや、あきらはゲートのギリギリ手前でストップな! んで、またメタルコートのやつに着替えてちょっと耐えてくれ!」
「えぇ!? 時間ないのに!?」
「必要だからな!」
「わ、分かった! 蓮くんの言う事だから、大丈夫かなあってちょっと不安になりつつも信じるね!」
「いやそれ信じてねーし! 疑ってるし!」
「だって今までの積み重ねがねー……ってわけではい、行きまーす!」
次相への転送ゲートを前に、急ブレーキをかけるあきら。
同時にメタルコーティングされたライブシルクドレスへの着替えも。
「さぁかかってきなさーい!」
足を止めたため、当然あきらには敵が一斉に群がる。
そして、すごい勢いで殴られ始める。
いくらメタルコートでカチカチになったとはいえ、ここまで敵の手数が多いとそう長くはもたないかも知れない。
俺はそれを――ちょっと離れたところで止まって見ていた。
ヘイトは全部あきらに集中しているため、敵は俺を素通りしていた。
現場は細めの通路であり――
俺とあきらを結ぶ直線上に、殆どの敵がわちゃわちゃしていた。
さあ――やりますか!
「装備変更、セットD!」
セットDのDはデスチャリオットのD! まあたまたまだが!
フフフフ――デスチャリオットの本気を見せるぜ!
「『エレメンタルサークル』!」
デスチャリオット装備の隠し効果により、エレメンタルサークルの発動率は100%!
通路上に黒い光の道ができたかのように見える。
いやあ、いいカモがいっぱいですね!
さぁて、行きますか!
俺はおもむろに合成を開始。
『ダマスカスソード』と『ダマスカスステッキ』で『仕込杖』を作成した。
『ハヤブサの極光石』を使用した『隼のダマスカスソード』はまだ使わない。
状況によりどちらの『仕込杖』が必要になるかは分からないので、合成せずにいた。
ここは前座で普通の『仕込杖』な!
「装備変更、セットA!」
元に戻ってからの――!
「『ファイナルストライク』! そして喰らえ奥義! 朱雀一閃ーーーーっ!」
ズゴオオオオオォォォォォッ!
炎を纏った突進斬り!
まっすぐ進む進路上にいる敵も巻き込むのが特徴である。
前方直線範囲攻撃なのだ。
それにより大量の敵が巻き込まれ、一撃で吹っ飛んだ!
「よっしゃ! 大量大量!」
「蓮くん、雑魚狩りしてて大丈夫!? 時間ないよ!?」
「いいんだよ、これは絶対必要だからな! HPを見てくれ!」
「おぉぉすごい! 倍になってるね!」
闇サークルの効果だ。
HP吸収&上限を超えた場合は最大HPブーストもしてくれる。有能!
俺の奥義は最大HPと現HPの差分が大きければ大きいほど威力を増す。
HPが二倍になったのだから威力も二倍化だ!
この最大HPブースト効果は三分で切れて長持ちはしない。
だからハーデスローズに攻撃する直前でやっておく必要があるのだが、まあ丁度良かった。
これは絶対必要な前振りで、本来ならハーデスローズが生むブラックローズでやろうと思っていたが、予定が繰り上がっただけだ。
こっちの方が安全に出来るしな!
「そう! そしてHPが最大HPが多ければ多いほど俺の火力は上がる!」
「うんうん! よぉし、じゃあすぐ次に飛ぼ! 時間ないよ!」
ピンポーン。
突入から58分が経過しました。後120秒後に強制排出となります。
「後二分だよ、蓮くん!」
「いや待った! でぇぇぇい!」
と、俺は手近に生き残っていたモンスターに通常攻撃を仕掛ける!
敵は9割方吹っ飛んだが、まだちょっとは残っている。
「えぇぇぇぇ!? 何やってんの!? 時間ないよ!?」
「AP溜めだ! 今使ったからな! あきらは手を出すなよ、俺のAPを溜めないとだからな!」
「ああもう、じれったいなあ――早く早く! 二刀流でパパパって殴って溜めればいいのに!」
「俺は二刀流はしねえ!」
国民的人気スキルは俺の敵!
そういうのを魔改造で超えていくのが楽しいんだ!
とはいえまあ二刀流はしないし出来ないが、俺なりにできる限り急いでAPを溜めた!
APは300! 満タンだ!
「よぉしお待たせ!」
「うんじゃあ行こ! もう終わっちゃうよぉ!」
「待った最後にあれ頼む! 『剣の舞い』!」
今さっき『ファイナルストライク』を使ったばかりだし、本来なら再使用時間待ちになる。
あきらに『剣の舞い』を貰って即使用可能にしてもらわないと、次の一撃も打てずに終了してしまう。
「あああもう! 確かにそうだね! 『剣の舞い』!」
「あざーっす! ま、結局最後はあきらがいないとどうにもならねーんだよな俺!」
「そうだね! でもわたしはそれでいいよ! さぁ行こう!」
「おうよ!」
ピンポーン。
突入から59分が経過しました。後60秒後に強制排出となります。
それを聞きながら、俺達は今度こそ次のワープゲートへと飛び込んだ。




