第238話 巨大アイランドバニー
「はぁい♪ それじゃあいってらっしゃーい♪」
アニメ声のライオンヘッドの声を聴きつつ、目の前の視界が歪む。
ダンジョン内部へのワープだ。
歪んだ視界が元に戻ると、そこは青黒い石で構成された遺跡ダンジョンの中だ。
さぁB71Fに戻って参りました!
『上級転移石』使用なので制限時間は60分、ハーデスローズはB80Fにいるからそこまでは普通に進まざるを得ない。
フロア毎に出される攻略のお題をクリアしながら進むわけだが、モノによっては時間がかかる。
変なお題が出ないといいな。最悪あれもあるしな、モンスターハウス。
モンスターが大量に出て来て、数の暴力でボコボコにされるあれだ。
低確率だとは思うんだが、あれが出るとかなりきついからなあ。
まあ、口に出すとホントに出そうだから触れないではおこう。
「さぁ、お題は何だ!?」
ピンポーン。ゲート解放条件、敵モンスタ―を全滅させろ!
お。まぁ普通! よし、ガシガシ倒すぞ!
「よし敵、集めてきますし!」
矢野さんが『スプリント』を発動して速攻で走って行った。
見ての通り、一時的に足が速くなるスキルだ。
これで敵に追いつかれないようにしつつ、襲ってくる敵にわざと絡まれてかき集めてくるわけだ。
理想を言うと、このフロアにいるモンスターを全部モンスタートレインして連れてきて欲しいよな。
そこを待ち伏せて一気に殲滅! という訳だ。
俺も『ディアジルサークル』の鈍足効果を使えばモンスタートレインを引っ張ってくることは出来る。
が、移動速度自体は通常速度で、敵の足を遅くしつつ引っ張るので、自分が早くなって行って帰ってくる矢野さんの方がかかる時間は総合的に少ない。
最適任は矢野さんなので、効率を考えると任せてしまった方がいい。
「じゃあわたし達はAP溜めだね!」
「ですわね!」
あきら達は、一番近くに見えた敵に向かって行き、ビシバシ殴り始める。
あえて近い奴は見逃して残して行った矢野さんは良く分かってる。
皆動き出しが早くて、何と言うかチームワークが一層高まったような気がするな。
やっぱさっきまでここに来てたからだろうな。
俺はココールの実家に行って、ファッキン野郎になってしまったリューとか、何かとんでもなく強かったマミール師匠とか、いろいろショッキングなものを見せられていたからか、一瞬反応が送れてしまった感。
俺もキリキリ働かないと! 出来る範囲でな!
正直道中の雑魚連戦への適性は低いのは変わらないので、そこまで重要な仕事も無いが――
取り合えず『エレメンタルサークル』で支援しつつ俺もAPを貯めておこう。
暫くすると、矢野さんが大量にモンスターを引き連れて帰って来た。
「後よろしくですし~!」
「うん! 優奈ちゃん!」
「行きますわよ!」
「任せておけ――!」
あきら、赤羽さん、シズクさんが一斉に範囲攻撃のアーツや奥義を撃ち込む。
それにより、矢野さんが連れてきた敵の殆どが壊滅。
物理攻撃に強いスライム系の敵がちょっと残ったが、残り僅かのHPは前田さんが的確に攻撃魔法で処理していた。
ピンポーン。ゲート解放条件を達成! 次の層へのゲートを目指せ!
「……」
大丈夫大丈夫、俺の仕事のメインはB80Fにある! それまではぶっちゃけ寄生と言われようが気にしない!
これでも『エレメンタルサークル』出来るようになった分、マシにはなってるんだ!
ただ元がアレ過ぎるだけでな――!
「さぁ次行こう、蓮くん!」
気合の入った顔をしたあきらが、俺に呼び掛けて来る。
うーん、頼もしい! B80Fまでおねがいします!
という訳で俺達は次のB72Fへ。
ピンポーン。ゲート解放条件、敵モンスタ―を全滅させろ!
うむ。まぁ寄生感に俺の胸がちょっと痛む以外は何ら問題ないな!
特に何事も無くクリア!
――B73F。
ピンポーン。ゲート解放条件、巨大化モンスターを倒せ!
「うわ! アイランドバニーだ! アイランドバニーがデカくなって帰って来た!」
「いつも特に理由も無く襲い掛かってくる蓮くんへの恨みで巨大化したとか……?」
「なんだその設定は――? とにかく倒すぞ!」
「うん――じゃあ様子見っ!」
あきらがスカイフォールの衝撃波を放つ!
ボエエェェェェッ!
「あ……一発で死んだ!?」
「えぇぇぇぇっ!? あ、あんなに大きくなってたのに――!?」
「あーあれかもな。元のステータスとかレベルを数倍に引き上げた系なのかもな。もともと弱いから数倍化しても大した事ないって感じか」
「……なんか悪いことしちゃったかなぁ」
ピンポーン。ゲート解放条件を達成! 次の層へのゲートを目指せ!
まあいいや次行こう次!




