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第237話 惜敗?

 と、いう訳で俺達は水上コテージに戻ると早速『アーズワース海底遺跡群』に再び向かった。

 今日もまだ、そんなに人は多くない。

 『超級転移石』を確保すべく、ゲーム屋台のあるお祭りエリアの方に人が集まっているからだ。

 今こっちにいるのは、何か試したい作戦を持って来た攻略班か、『アーズワース海底遺跡群』の内部ダンジョンで『上級転移石』や『超級転移石』を集めようとしている収集班かのどちらかか。

 まあ単に『超級転移石』を持ってきても、雑魚の出現に上限はないっぽいから無駄なんだけどな。

 他のパーティで試した奴がいるかどうかは不明だが、失敗したとしてもその情報がそう簡単に表に出てくることは無いだろう。

 他のパーティを助ける攻略情報になってしまうからな。

 情報が出るとすれば、攻略が成功した後だろう。

 自分達が『レインボーガード』を確保した上で、ドヤ顔で攻略情報公開と。

 ……俺もドヤりてぇ! そうすれば、紋章術師の知名度向上にもなる!

 とにかく、何らかの攻略法が見つかればこちらにがっと人が増えるはず。

 その攻略法をコピーして後追いするために、だ。

 それが無いって事は、まだまだ『ハーデスローズ』が踏ん張っているという事。

 ようし、今から一番乗りで倒させてもらうぜ!

 ちなみにメンバーは片岡に交代して貰ったので、俺、あきら、前田さん、矢野さん、赤羽さん、シズクさんだ。


「最後に一個だけ『上級転移石』が残っててよかったなあ、今ゲーム屋台めっちゃ混んでるし、手に入れるのに時間かかりそうだからな」


 屋台のゲームをハイスコアでクリアしたら、普通の『転移石』の二倍、60分間内部にいられる『上級転移石』が貰えるのだが――

 今は各ギルドの妨害工作が炸裂しまくってるから、ゲームをやらせて貰うためにすげー並ばないといけない。

 流石にその時間は勿体ない。もたもたやっていると、エミリー達や雪乃先輩とほむら先輩のチームに先を越される事になってしまう。


「そうだね――ここで決めちゃおうね!」

「高代くん、勝算はあるのよね?」

「おう、もちろん! まぁ楽しみにしててくれ!」

「期待してますし。あの『ハーデスローズ』はむかつくですし、ぶっ倒したいですし!」

「そうですわね。『超級転移石』を使わされて失敗させられましたもの。少々腹立たしいですわね」

「何にせよ、こういう勝負事は勝ってこそだ。勝てるというなら期待させてもらおう」

「うぃっす! 任せて下さい!」


 なんて話しながら入口に近づいていくと――


「「ちっくしょおおおぉぉぉぉぉ~~~~っ!」」


 雪乃先輩とほむら先輩である。

 台詞まで被らせて、なんだかブチ切れながら駆け出してきた。

 何だ何だ? あと1ミリくらいまで『ハーデスローズ』を削ったけど、惜しいとこで負けたとかかか?


「先輩! 何騒いでるんですか?」

「どうかしたんですか? 雪乃さん、ほむらさん」

「おっ!? 蓮にあきらか――どうもこうもないぞ! このクソゲーめが……!」

「あんたが悪いんでしょうが、文句言う前に過去の自分を反省しなさいよ」

「何を言ってるお前もだろう!?」

「度合いが違うわ! あたしとあんたでは倍以上の開きがあるわよ!」


 何だ何だ? 何の事だ――?


「『ハーデスローズ』に何かすごい仕掛けが……!?」

「ああ実はな――」

「あ、こら雪乃! しゃべっちゃダメでしょ! みんな競争なんだから!」

「む……そ、そうだな――すまんな、蓮。そういう事らしい」

「いや、仕方ないっすよ。当然ですからね」

「悪いわね。ただ一つだけ言っておくけど――君達が思っているよりも恐ろしいかも知れないわ、これは――」

「……大丈夫っす! こっちにもちゃんと手はありますから!」


 まあ俺達と雪乃先輩達のレベルは違うから、同じ『ハーデスローズ』でもレベルに合わせてステータスとか行動とか変わってくるんだろうけどな。

 どのレベル帯でも似たような難易度になるように調整はされてるんだろうが、実際どのレベル帯が一番楽かはよく分からんし、検証も不可能だからなあ。


「頑張れよ、蓮! じゃあ私達は帰るからな! またな!」

「急ぐわよ雪乃! 早く家に帰るのよ!」


 帰るのか? リベンジマッチとかはしねーんだな。

 この後何か用時でもあるのかな?

 ともあれ、先輩達を見送った俺達は『アーズワース海底遺跡群』の突入口へ。


「こんにちは♪ 中に入りたい人は、私の口に『転移石』を投げ入れてね♪」


 アニメ声のライオンヘッドが、俺達に呼びかけてくる。


「『上級転移石』でB71Fから頼む!」


 さぁ、行くぞ!

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