第231話 スーパーコケ族!?
『ハヤブサの極光石』をダマスカスソードと合成することで、二回攻撃の『隼のダマスカスソード』になる。
で、これをダマスカスステッキと合成することで、『隼のダマスカスソード』が中身の仕込杖が完成する。
その仕込杖で撃つ奥義は、二回攻撃すなわちダメージ二倍になる。
まさに切り札に相応しい最高の仕込杖が完成するわけだが、仕込杖自体はOEX属性である。
Oが一つしか持てない。EXが他人に渡せない、だ。
つまり、一度仕込杖化してしまうと、ちょっと取っておいて別の一回攻撃の仕込杖で奥義を撃つ――みたいなオシャレな事はできない。
一度作ったが最後、次は奥義でぶち壊すのみになる。
今アイテムボックスの中では『隼のダマスカスソード』にまでしてあるのだが――
でも、いいよな! ここで使うぞ!
「れ、蓮――大丈夫だコケか? よく分からないけど出たとこ勝負って言ってるコケ?」
「ああ――ちょっと探ってる余裕も無さそうだからな――」
黒いオーラに包まれた大人リューは、すぐ目の前まで迫っているのだ。
あちらはすでに殺る気満々。こういう時俺としては、突破口を探るための時間稼ぎとして、ディアジルサークルの鈍足効果とかで逃げ回って様子を見たりしたいのだが――
それをするためには、俺の移動と同時にサークルも動いてくれないとできない。
それができるのは小さなリューの持つスキル『ターゲットマーカー』だ。
リューが乗っ取られてこんなことになってる以上、それも無理なわけで。
結構リュー依存の戦法って多いんだよな――
「そ、それはいかんコケよ! 蓮らしくないコケ~! 勢い任せに見えてちゃんと考えてるのが蓮らしいコケ! ここはオイラが何とか――」
「いやでも、お前相当ダメージ喰らってるだろ……!」
「しかしコケ――!」
「そうよ。蓮さんの言う通りコケ。ココールちゃんは休んでいてコケ」
その声は、俺でもココールでもない。
ココールの母ちゃんである。目が覚めたのか。
「か、母ちゃん! 大丈夫だコケか!?」
「ええ。迷惑をかけてしまってごめんなさいコケ、蓮さんココールちゃん。おわびにここは私が何とかしてみるコケ」
言ってココールの母ちゃんが、俺達の前に立った。
「ええっ!? ちょっと危ないっすよ!?」
しかしココールの母ちゃんは余裕の構えである。
「大丈夫よコケ。これでも結婚してココールちゃんが産まれる前は、お父さんのボディーガードをやっていたのよコケ」
「そ、そういや母ちゃんって、昔メチャクチャ強かったって、父ちゃんが言ってたコケ。コケ族どころか鳥人種全体でも最強だったって……」
「ほんとかよ!?」
「い、いやオイラも父ちゃんが話を盛ってるだけって思ってたコケが……!」
「うふふふ。私はまだまだ現役のつもりコケよ。蓮さん、私が突破口を開いてみるコケ。よく見ていて欲しいコケ」
だ、大丈夫なのか――? 任せていいのかこれ!?
いやでも確かに、ちょっとダメージでも与えてもらえれば、おおよそあいつのHPとか分かるし、助かるっちゃ助かるんだが――
「で、でも……!」
さっきのクレリックバニーみたいにあっさり消滅とかされたら怖いんだが!?
いや、この限定クエストって途中でココールとかお母ちゃんがやられたらどうなるんだ!? 復活できるのか? イベント分岐で二度と戻らないとかあったら――!?
流石に寝覚めが悪いぞ、どうする!?
「心配いらないわ――はあぁぁぁっ!」
ココールの母ちゃんが気合を入れると、その体を黄金のオーラが包み込む!
まるで体が全身金ピカになったみたいな――!
ドオオォォォン!
解き放たれた気のようなものが衝撃を巻き起こし、建物全体がビリビリ震えた。
「お、おお……!?」
何だこれ、何か凄いぞ!
あの丸っこいコケ族ボディから、もの凄い威圧感を感じる!
「蓮さん、よく見ていて――作戦を考えてコケね」
「わ、分かりました……!」
迫力に思わず俺も頷いていた。
レベルとかHPの数値は見えないのだが、何か凄そうなものは感じるのだ。
「フン! 虚仮脅しだ――! 喰らえ!」
魔人ヴェルドーはブレイジングボムの構え!
ああさっきクレリックバニーを一撃で消滅させたやつか――!
「母ちゃん危ないコケ!」
「大丈夫よ。見えていなさいコケ」
あくまで動じないココールの母ちゃんである。
丸っこくてユーモラスなコケ族の見た目なのだが、話し方とか声の雰囲気は上品なマダムって感じで、それが今も崩れることはない。
ズゴボオォォォォッ!
火球が直撃してデカい火柱が上がる――!
真っ赤な炎の中にココールの母ちゃんの姿が消えた。
「う、うわ……! 直撃した……!?」
「か、母ちゃああああぁぁぁん!?」
ココールの悲鳴が上がった。




