第224話 大好物は堅くてHP低めの奴
「出たな――中ボス的モンスター! ココール、倒して進むぞ!」
「オッケーだコケ!」
「ドウシテモタチサラヌトイウカ――」
大ガーゴイルの目が一層ギラっと輝く。
完全に殺す気マンマンって感じだ。
「ここはオイラの家だコケ! 勝手に入ってるのはお前だコケよ! 出て行ってくれコケ!」
「ソウハイカヌ――!」
ガーゴイルは一つ大きく息を吸い込むような動作をし、そこからこちらに向けて炎を吐き出して来た!
スゴゴゴ――ッ!
太い炎の帯が俺達に降り注ぎ、ダメージを与えてくる。
ヒュージガーゴイルは火炎の息を吐いた!
蓮に341のダメージ!
インフェルノアーマーに332のダメージ!
「あちいぃぃぃコケーーッ! 焼き鳥になるコケーーッ!?」
「ぐっ――! 結構効くなあ、流石中ボス!」
破壊力的にはデスチャリオットとか、ハーデスローズとかの『アーズワース海底遺跡群』のボス達の方が上回るだろうが――
なんせ今こちらは二人だけだし、回復も闇サークルの吸収頼みだから乏しい。
この状況で炎連打されたらちょっときついな――!
「よし、オイラに任せるコケ! インフェルノアーマー、合体解除だコケ! 帰っていいコケ!」
ココールが合体中のインフェルノアーマーを帰還させ、素の状態に戻る。
「フロストイーグル! 来てくれコケ―!」
呼びかけに応じて、青い色をした怪鳥型のモンスターが現れる。
ココールが同時に呼び出せるモンスターは1体だけなので、切り替えようと思うと元々いたインフェルノアーマーは帰還させるしかなかったわけだ。
こいつもギルド対抗ミッションの時にココールが使ってたモンスターだ。久しぶりに見ると懐かしいな。
「蓮! 乗るコケよー!」
「おうっ!」
俺とココールはフロストイーグルの背にしがみ付く。
フロストイーグルはすぐさま飛び立ち、大ガーゴイルの頭上に舞い上がる。
このホールがバカでかいおかげで、フロストイーグルも楽々飛び回れるな。
「ヌウウ――! コザカシイ――!」
大ガーゴイルは空を飛ぶフロストイーグルを目がけて、炎を吐きまくる。
だがこちらも空を飛んで機動性は十分。そう簡単には当たらない。
敵の炎が大きなホールのあちこちに着弾。床やら壁やらが焼け焦げて黒く汚れていく。
「コケーッ!? 家が焼けるコケー! 人の家でなにすんだコケーッ!」
「確かに室内で炎は迷惑だわな――」
「こうなったら炎には氷だコケ! フロストイーグル! 吹雪だコケ!」
キュオッ! とフロストイーグルが一言鳴き、炎をかいくぐりながら吹雪を吐き、ヒュージガーゴイルに浴びせた。
フロストイーグルは吹雪を吐いた! ヒュージガーゴイルに35のダメージ!
「むっ……!? あんまり効いてないコケ!?」
「炎を吐くからって氷に弱いわけじゃねえって事か――」
にしてもダメージが全然釣り合わない。
こっちは300くらうのに、向こうには30ちょいだからな。
その後もフロストイーグルが頑張って吹雪を敵に浴びせてくれるのだが、大したダメージには――
と、俺はそこで気が付いた。
「ん――? あ、そうか。そういう事だな!」
「ん? どうしたコケ、蓮!?」
「ココール! 俺が合図したら、フロストイーグルを奴に突っ込ませてくれ!」
「わ、分かったコケ!」
俺は着替えずに大範囲の『エレメンタルサークル』を展開し、MPをギリギリまで減らしておく。いつものMP捨てだ。奥義の下準備である。
「よし! いいぞ突っ込んでくれ!」
「コケ! フロストイーグル、あいつに突っ込むコケーッ!」
キュオオオオッ! ココールの指示に従い、フロストイーグルが敵の懐に突っ込む。
――俺がさっき注目したのは、このヒュージガーゴイルのHPバーだ。
ダメージが30ちょいを3~4発、つまり100ちょいのしか与えていないのに、何%かはバーが減っていそうだったのである。
つまり推測するところ、こいつの最大HPは2、3000しかないのではないかと!
すごく防御力が高いがHPが低い敵って結構いるからな。そういうタイプかと。
そして、俺の奥義は必中かつ防御力無視である。
つまり――こういうタイプは大好物です!
さぁフロストイーグルが突っ込んでくれたおかげで、もうヒュージガーゴイルは目の前だ。一発ぶちかましてやるぞ!
「奥義――『デッドエンド』おぉぉぉーーっ!」
ズシャアアアアァッ!
紫色に輝く斬撃が、ヒュージガーゴイルに襲い掛かる!
蓮のデッドエンドが発動。ヒュージガーゴイルに4984のダメージ!
蓮はヒュージガーゴイルを倒した。
「オアアァァァ――!」
ヒュージガーゴイルの体がバラバラに崩れ落ちて行く。
「――うむ! 予想通り一発だな!」
堅くてHP低めの奴とか、このロマン砲には大好物だからな!




