第223話 装備とは見た目ではなく性能
「これなら回復しながら戦えるコケ―! 助かるコケ!」
ココールと合体しているインフェルノアーマーにもMPがあるので、追加効果のHP吸収が発動していた。
インフェルノアーマー自体の防御力も高いし、闇サークルの追加効果だけでHPが全然減らない。
むしろ上限越え時の最大HPブーストでどんどんHPが増えて行く。
「見た目はともかく、使いたい効果を絞れるようになったのは便利コケね!」
ココールが見ていたのは、ランダムで属性が発動する『エレメンタルサークル』だけだからな。
追加効果が優秀な闇サークルに絞れるようになったのは、劇的進化である。
確かに、見た目はちょっとユニークになっちまうがな。
だが、装備に重要なのは見た目じゃねえ、性能だ!
見た目はクソださいけど、性能が良くて入手のハードルも低い装備があったりしたら、皆がその装備一色になるなんてのは、ネトゲではよくある事。
「ああ。いつかこの闇サークルを活かした紋章術師が大人気となり、街にデスチャリオット姿の紋章術師が溢れかえる事を祈ってるぞ、俺は!」
「……嫌な未来だコケな~」
なんて言い合いながら、襲ってきた敵を倒すと、俺達は庭を再び進んで行く。
途中、他にも魔物が絡んできたが、特に問題なく倒して進むことが出来た。
奥義が必要になるような強い敵も現れなかったし、闇サークルで十分だった。
これがないともっと火力的に厳しくなるから、やはり無いよりあった方が全然いいな。
紋章術師の能力底上げにはいい魔法ではある。
まあ、これ一つだけで他のまともな攻撃役に並ぶとか、そう言う次元では全くないが――
やっぱロマン砲は奥義を撃たないと、全然ダメージが稼げない。
とはいえこんな所でぶちかましても完全オーバーキルで意味は無いし、やはり雑魚連戦は向いていない。
ただ『エレメンタルサークル』のおかげで、奥義無しでは100点満点中5点だったのが15点くらいにはなったか?
当社比三倍! すげぇ進歩だ!
さて庭の魔物を倒しつつ屋敷の中に踏み込むと、俺はココールに尋ねる。
「お前の母ちゃんがモンスターを操ってるって言ってたよな? どこにいるか分かるか?」
「とりあえず、母ちゃんの部屋に行ってみるコケよ。案内するコケ!」
「よっしゃ行こうぜ!」
ココールが俺を先導してくれ、俺たちは馬鹿でかい屋敷の中を走って進む。
鎧に覆われたココールの背中を見て思うのだが、ギルド対抗ミッションで俺たちの所に来た時のような、臆病さや頼りなさは感じられない。
立派になったもんだなあ、うんうん。育てた俺も鼻が高いぜ。
「この先にでっかいホールに突き当たるコケ~! 母ちゃんの部屋はそこから階段を上って行くコケ! 三階だコケ~!」
「了解!」
屋敷の中のモンスターは、外をうろついているような獣系ではなく、ココールのよく使うリビングアーマー系や、アンデッド系などの人型のシルエットのものが多いような気がする。強さ的には外とそれほど変わらなかった。
まあ単純に、屋敷の中だと体のでかい獣系の奴らはちょっと邪魔だしな。
それに室内入れると、毛とか落ちて掃除大変だろうしな。
更に敵を倒しながら進んでいくと、俺たちは通路の先で大きな扉にぶち当たる。
ココールの案内通り、この扉の向こうは大きなホールになっているのだろう。
「開けるぞ!」
「おうコケ!」
俺たちは体当たりするようにして、バァン! と勢いよく扉を開く。
そこは恐らく玄関ホールのような場所だった。
複数階ぶち抜きの天井はめちゃくちゃ高く、天窓から柔らかな光が降り注いでいる。
ドーンと大きな螺旋階段が各階に繋がっており、そこかしこに置かれた調度品も立派。
ただしこう、金ピカだったりする高そうな置物も、モチーフがニワトリのシルエットのものが多いな。さすがはコケ族。
しかしとりあえず、めちゃ広いしめちゃ高そうだ。ほとんど城だなこれは。
で、そんな中に――
グウゥゥゥ――!
羽根の生えた悪魔の姿をした石像、すなわちガーゴイルってやつか? それがホールから続く階段を守るように鎮座していた。
相当デカく、俺の身長の倍以上はあるだろう。
確かにこの広いホールなら、これだけデカいやつでも置いておけるよな。
ガーゴイルは唸り声を上げながら、俺達をぎろりと睨む。
ビカッ! と真っ赤なルビーのように目が光っている。
「タチサレ――! サモナクバ、イノチハナイ……!」
出やがったな、中ボス的存在!
奴の言う通り帰るわけには行かない。
ここは戦って倒すしかないか――!




