表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

222/256

第221話 親の夜の生活の事情

 俺達がココールの実家の屋敷の目の前までやって来ると、そこには心配そうに中の様子を見守るギャラリー達が集まっていた。

 まあそりゃそうだろう。今は結界っぽいのが張られて魔物は外に出てこないみたいだが、もし結界が破れて外に魔物が出てきたら大騒ぎだしな。

 だったら遠くに逃げればいいのだが、そこは野次馬根性というか、メタ的に言うとクエストを盛り上げるための舞台装置と言うか――

 ともあれ、その中にはココールの親父さん達もいて、俺達を見つけるとコケ族特有のとてとてした走りで駆け寄って来る。


「おおおおーっ! ココール! 蓮さんを連れて来てくれたコケか! これで安心だコケー!」

「ピヨーッ! 師匠が来てくれたピヨーッ!」

「これで勝ったも同然だピヨ!」

「師匠なら、師匠ならきっと何とかしてくれるピヨーッ!」


 ココールの弟のピヨピヨ達もいて、俺にしがみ付いてくる。

 コケ族の子供はヒヨコなんだよなー。まあニワトリだし当然なんだが、これが可愛いのである。


「ああ、まぁ困ってるみたいだし協力しに来たぜ!」

「きゅ~! ぴよぴよ~! ぴよぴよ~!」


 リューもヒヨコが好きなのか、追いかけて捕まえようとする。


「「「ギャー!? お前は呼んでないピヨ~! 逃げろ喰われるピヨ~!」」」


 バタバタと賑やかな事だ。どうもコケ族は守護竜が苦手なのかも知れないな。

 ココールも若干リューを怖がってるもんな。リューがココールの頭を甘噛みするからだが。


「こらお前ら、静かにせんか! 父ちゃんは大事な話があるんだコケーッ! 騒がしくてすいませんだコケ」

「いや、別にいいですよ。うちのリューが、ちょっかいかけるせいでもあるし。で、この中の魔物をどうにかして欲しいって事っすよね?」

「そ、そうですコケー! ココールが騎士としてお勤めするのに必要な戦力を、すぐに確保できるように家に飼っておこうと思ったですコケが――」

「何かミスってああなったと?」

「そ、そうなのですコケ~! 息子のためにと張り切って、珍しい魔物も取り寄せたコケですが……何故か家内が突然モンスターを率いて暴れ出して、屋敷を占領されたコケ~!」

「ええっ!? 奥さんが――!?」


 そういやココールの母ちゃんがいないと思った!

 そんな事になってたのかココールのやつ、その事は言ってなかったが――?


「コケ―ッ!? そりゃオイラも初耳だコケ!」

「あ、ああ――いきなり言っても混乱するだろうし、まずは蓮さんを連れて来て貰ってからと思ったコケ。それにそうしているうちに、お母さんが正気に戻りはしないかと願ってたコケ――」

「どうしてそうなったか、心当たりはあるんっすか?」

「わ、分らないコケー。でも、ココールのためになりそうなものを色々かき集めていたから、そのうちの何かがとんでもない代物だったかも知れないコケが……」

「……単なる夫婦喧嘩とかじゃないコケよな?」

「そ、そんな事は無いコケ! 夫婦仲は円満だコケ! つい最近もお前達の新しい弟か妹をと、ハッスルしちゃった所だったコケ――」

「コケーッ! 親の夜の生活の事情を暴露すんなコケーッ! 恥ずかしいコケーッ!」


 ……ま、まあ確かにな。ココールの言う事も分かるぜ。

 そんなこと聞かされたら正直キモイわなー。


「ピヨッ!? 弟か妹ができるピヨーッ!」

「やったピヨーッ!」

「何て名前がいいピヨーッ!?」


 あ、純粋だなあ。まだまだ幼児だもんな、ピヨ達は。


「やっとピヨ達にも下っ端ができるピヨーッ!」

「顎でこき使ってやるピヨね!」

「人生の厳しさを教えてやるピヨーッ!」


 ……どうしようかなぁ。

 今立て込んでるし触れないでおくか。

 うん、スルーしておこう。スルーだな。

 あとはココールの家の事ですから――という事で俺はこの状況を何とかすることだけ考えようか。そうだな、それがいいな。


「そういう事だから、騎士団とかに言って大事にはしたくないんだコケー。後で家内が牢屋に入れらりしたら可哀そうだコケー! きっと何か悪いものに操られてるだけだコケ」

「なるほど……そりゃそうっすね」

「今はまだ、うちにあった商品で作った結界が効いていて、魔物は外に出てこられないコケ! 今のうちに何とかして欲しいコケ~!」

「うぃっす! 分かりましたけど、どうやって中に入ればいいんっすかね?」


 結界は屋敷全体を覆っていて、俺達も中に入ることができなさそうなのだ。

 すぐ目の前なので結界に触れてみたが、何か強い力で内側から押し返されるような手触りがする。


「これを持って行って欲しいコケ~! この呪符を持っていれば結界の中に入れるコケ」


 と、ココールの親父さんは呪符を取り出して俺に手渡す。


「父ちゃん! オイラにもそれをくれコケー!」

「ああ。持って行くコケ~! こんな時だコケが、お前をこういう風に頼りにできるようになって嬉しいコケな~。立派になったコケ!」


 ココールの分の呪符もゲット。


「コケ~褒めるのは無事帰ってからにしてくれコケ~」

「そうだったコケな、母さんを頼むコケ! ココール!」

「分かったコケ! じゃあ行こうコケ、蓮!」

「よっしゃ! 行こうぜ!」


 俺とココールは呪符を手に、結界の内側へと侵入した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ