第220話 ココールの実家
水上コテージを出た俺達は、ココールの実家があるミシュリア王国へと向かった。
異世界サーマルから出ると、そこはこのゲーム内での俺達の学校がある浮遊都市ティルーナの港だ。
そこから飛空艇に乗ってミシュリア王国へ向かった。
ココールの実家のある街には飛空艇も停まってくれるので、一本でサクッと行くことが出来た。
「で、お前の実家はどこなんだ?」
「あそこだコケー」
と、そこは飛空艇乗り場からは小高い丘を登った所にあるでかい屋敷だった。
真っ白い壁はピカピカとして美しく、屋根や何かの飾り系の色は赤だ。主に屋敷のてっぺん部分に赤が集中している。
白ベースに赤のアクセント――うんこれは、ニワトリの配色だな! 間違いないココールの家だ!
屋根のてっぺんにでっかい風見鶏も付いてるしな。無論そのシルエットはニワトリである。
しかし見るからにニワトリ、ことこのゲームではコケ族の主張が激しいのは置いておいて、とんでもない広さの屋敷だなあれは――
一体何部屋あるんだってレベルで、これはもうどこぞの王族とか貴族が住んでるレベルだぞ。
「でっか!? お前凄い金持ちの家の子だったんだなー!」
「まぁ――父ちゃんは大商人だからな、コケ~」
「すげーなぁ。羨ましいぜ――」
ゲームの中とは言えな――あの屋敷に比べたら俺の家なんてうさぎ小屋とかそんなんだぞ!
いやそれでも俺に取っちゃ十分なものはあるし、養ってくれる親父や母さんには感謝感激雨あられなんだが、こんなとこに生まれたらどういう気分なんだろうな。
あきらのリアル実家もこんな感じなのか――? すごいお嬢様なんだもんな。
同じお坊ちゃまのココールならあきらの気持ちが分かるのかも知れないな。
いや、ココールはNPCだからあれかも知れないが、よく出来過ぎてるから普通に存在する奴に思えるんだよなあ。
本当よく出来たゲームだ。最先端のAI技術を投入してるって話だが――
「思ったほどいいもんじゃないコケよ? オイラなんて弱いのに英雄候補に選ばれたから、父ちゃんのコネだの何だの言われたし、いじめられたコケー。その時だけじゃなく、小さい頃からそんなことよくあったコケ。だから、こんな家に生まれなきゃよかったって思ってたコケー」
「うーむ。生々しい話だ」
リアルでもあるあるっぽい気がするなあ。
このコミカルなコケ族の人生に重い設定被せてきやがるなあ、開発者さんは。
「前にあきらに話したら、何か分かるって言ってくれたコケー。自分も似たような感じだって言ってたコケ」
「あきらが?」
「そうだコケー。でも蓮のおかげで楽しいから、オイラも蓮たちのギルドにいればきっと楽しくなるって言ってたコケ。で、それは本当に本当だったコケ!」
「おお! そりゃ結構だな! そう思ってもらえるのは嬉しいぜ」
「蓮たちのおかげで自分に自信が持てるようになったコケー。だから、蓮とあきらには明るく仲良くいて欲しいコケー。喧嘩とかしてないコケよな?」
ああ、ココールのやつ俺とあきらが一緒にいないから喧嘩したと思ったのか?
NPCなのにそういうとこ気にするとは、優しい奴だなー。初めから性格は良かったもんな、ココールは。
レベルが上がって偉くなっても、そういうところは変わらないようである。
「してないしてない。お前も手伝ってくれてたけど、あきら用の『レインボーガード』をゲットするために、最適のパーティ編成にしただけだぜ。まぁ最適構成考えて俺が漏れたのは切ないけどな」
「コケ―。そりゃそうだコケな~。あきらへのプレゼントは自分でゲットしたいコケ?」
「まあなあ。そう思ってたんだが、ちょっと対策が間に合いそうになかったんで、とにかくゲットできるのを優先したわけだ」
まあそれはそれで間違ってないとは思うんだが、悔しいのは悔しいんだよなー。
「あきらのためってことだコケな~?」
「ああ。そう思って自分で自分をベンチに置いたぜ……ま、それはそれこれはこれ! お前の実家も早くなんとかしねえとな!」
「助かるコケー! オイラ、蓮たちのおかげで自分に自信が持てるようになったコケ。だから家族も明るくなったコケ。父ちゃんも嬉しかったらしくて、オイラを助けようとして張り切り過ぎたコケー。悪気があっての事じゃないコケ。街に被害が出る前に早く何とかしてやりたいコケ!」
「おう、そうだな!」
と、会話を交わしながら俺達はココールの実家の屋敷に近づいていく。
段々その様子が詳細にわかってくるようになると、屋敷の周囲には半透明の壁のようなものが張り巡らされている。
これは結果的なものか? 取り合えず屋敷の敷地からモンスターが出てこないようにしてるのか?
で、屋敷の庭には魔獣系のモンスターがウヨウヨ。
屋根には鳥系統のやつもいるな。
で、屋敷の中には人型の魔物がいるように見えるな。結構数も多い。
これ全部魔物か――完全にモンスターに支配されてるなあ。
さてさてどうしたもんかね――?




