第219話 劇的リフォーム! 実家が魔物の巣に
ココールは何だか血相を変えて焦っているようである。
俺は何事か尋ねる。
「俺ならここだぜ。どうしたんだココール?」
「おー! 蓮! いてくれたコケか!」
「きゅ~! ちきんちきん~!」
リューが喜んでココールに飛びついて、頭をカプカプやり始める。
ほんとリューはココールを甘噛みするのが好きだな。
「んぎゃー!? いつもこうだコケ! 捕食すんなって言ってるコケーッ!」
……いつもこれを挟まないと、話が進まんなー。お約束ってやつか。
「えーと。で、何だ? 俺に何か用なのか?」
「そ、そうだコケーッ! 力を貸してほしいコケ!」
「ん? いいぜ、何があったんだ?」
「お、オイラの実家が大変なんだコケー! なんか魔物の巣になっちゃってるっぽいんだコケー!」
「ええっ!? 何でそんな事になったんだよ!?」
「オイラのためだコケ……!」
「うん? どういう事だ?」
「オイラは今蓮のおかげで、ミシュリア王国の騎士なんかやらせてもらってるコケ? 父ちゃんもそれを大層喜んでたコケ。オイラも父ちゃんや母ちゃんも弟達も喜んでくれてるから、頑張ってたコケ!」
「ああそうだな。この間から格好も騎士になってるしな」
騎士の鎧を着てはいるが、やはり元々が丸っこくてコミカルなココールなだけに、格好いいというよりは何か可愛い感じになっているが――
これでもココールはギルド対抗ミッションの『英雄育成』でトップになった男である。
あのイベントはミシュール大陸のミシュリア王国で国の将来を担う人材を確保するとかいう設定があったので、イベント後のココールは自国に帰って騎士に登用されたという事である。
結構なことだ。ココールを育てた俺も鼻が高いぜ。
思う存分ココールはワシが育てたできたしな!
「それが何でお前の実家が魔物の巣になる事に繋がるんだ?」
「オイラの戦い方だコケー。オイラはオイラだけじゃあ戦えないコケ? 『ゴールデンイエロー・スウィーツ』で雇ったモンスターを使わなきゃだコケ!」
「……あ、そういう事か――大体見当ついたぜ!」
察した! 察したぞ!
ココールの戦力になるからって、ココールの父ちゃんは魔物を集めようとしたんだな。
んでそれが暴走したとか、大繁殖したとかそういう感じだろう。
「お前のために魔物を集めてくれようとしたんだな? それがおかしな事になったと」
「そ、そうなんだコケー! 父ちゃんが張り切って集めた魔物の中にとんでもないのがいたらしいコケー!」
なるほどなあ。ココールのためを思って父ちゃんがやった事が逆にあだになったと。
しかしこれは、ちょっと俺のせいもあるかも知れない。
ココールはワシが育てたわけだからなぁ。
俺が『ゴールデンイエロー・スウィーツ』を使った戦術を確立してココールをミシュリアの騎士になるまで出世させてなけりゃあ、こういう事にはならなかったわけで。
――ここはちゃんと責任もって面倒見ないとだろうな。
「蓮も『アーズワース海底遺跡群』の攻略が忙しいだろうコケが、何とかお願いするコケー! 助けてほしいコケー!」
「ああ。そっちなら大丈夫だ、全然問題ない! 手を貸すぜ! お前の実家に行こう!」
「コケーッ! ありがたいコケ! 蓮が来てくれれば安心だコケ!」
「いやいやそれほどでも――」
ピロリローン ピロリローン
急にシステム通知音が! そしてメッセージも表示された。
限定クエスト『劇的リフォーム! 実家が魔物の巣に』が発生しました!
おぉ限定クエストか! そりゃそうだろうなあ限定クエストだよな。
俺達の所にしか現れないクエストだ、これは。
「じゃあ行こうぜ! けど悪いけど、今は俺とリューだけしか行けないけどな」
「コケ? それは構わんコケが、あきらや琴美や優奈はどうしたんだコケ?」
「いや、みんなは『アーズワース海底遺跡群』に出かけてるぜ」
「ええっ!? なんで蓮は一緒じゃないコケか? いや、オイラとしては蓮がいてくれて助かったコケが……?」
「単に今回は俺は戦力外だからな。留守番になっちまった。まあ仕方ねえ、今回のボス攻略に向いてなかったからな――フフッ」
「コケー……お、落ち込むことないコケよー! 蓮はすげーダメージ出すだけじゃなく、オイラの戦い方とかもいろいろ考えてくれるコケ! 頭がいいんだコケ! そういうのは絶対必要な事だコケー!」
「ははは。悪いなココール、気を遣わせちまって。全然大丈夫だ行こうぜ!」
俺はココールの背を叩き、水上コテージを出た。
まあちょっとたそがれてる所に、俺に助けてほしいって言ってくれるのは、逆に嬉しいというかありがたいというか――必要とされるのはいい事ですな。
このクエストは俺達にしか出てこない限定ものだし、頭を切り替えてキチっとやってくるべし!




