第218話 海を眺めてたそがれる
その後――
というわけで俺は攻略をみんなに託して水上コテージに残り――
海を眺めて一人たそがれていた!
「はー……」
「きゅ~れん~がんばって~がんばって~」
と、心配したのかリューが俺に纏わりついてくる。
うーん、何てご主人思いの守護竜さんなのだろうか!
俺はリューを抱っこして撫で撫でする。
「おー。ありがとな、リュー。頑張るからな」
と言いながらも、俺の口からはため息が出る。
まぁ、なんでも上手く行くわけはないが、こんな時に俺自ら俺自身をベンチに下げざるを得ないとはな!
そりゃまあ今回はあきらのために仕方がないし、俺の判断は正しいと思うのだが、やっぱりちょっと複雑だぞ!
俺の手で颯爽と『ハーデスローズ』をぶっ倒し、『レインボーガード』を取ってあげたかったんだがなあ――
Himechanに貢ぐ従者じゃないが、やっぱいいとこ見せたかった感はあったからな。
とはいえこのままはーはー言ってても仕方ない。
手伝い頼んで攻略に送り出してるんだし、俺は俺で何かしないとな。
「……が、何をするべきかねえ――」
もう一回、ほむら先輩の所のアイテムミュージアムで情報収集?
それかゲーム屋台に戻って、行列に並んでくるか?
エミリーがまだ勝ち進んでるなら、対戦相手のクジ引きに名乗り出るのもありかも知れない。
それとも、またアイランドバニー師匠で検証してくるか?
まあ別にアイランドバニー師匠に拘ることはないが、何か今後の役に立ちそうな検証作業をってことで。
今回の『超級転移石』投入で『ハーデスローズ』を何とかできたとしても、その先はまだ何があるか分からないからな。
しかしどうも俺と『アーズワース海底遺跡群』は相性が悪い気もするが――
各層ごとにお題をクリアして進んでいくわけだが、基本的を素早く大量に倒していくようなお題が多い。分かりやすいもので敵を全滅させろとか、アンデットを何体倒して来いとかである。
今更ながらだが、俺はそういうシチュエーションには向いていない。
最大の特徴である一撃必殺の奥義が、雑魚連戦では単なるオーバーキルになってしまう。一発ごとに安くない銭を投げざるを得ないのに無駄に奥義を連発していると、あっという間にMPことマネーパワーが底をつく。
しかも奥義一発一発の間には、武器の再合成の手間と、再合成の条件である武器破壊のための『ファイナルストライク』の再使用時間待ちが存在する。
『ファイナルストライク』の再使用時間待ちはソードダンサーから『剣の舞い』を貰えばゼロにできるが、それだってソードダンサーのAPを使う事になる。
雑魚連戦なら、その分ソードダンサーが普通に攻撃のためのアーツを使った方が早いんだよなーきっと。
オーバーキルになるからと、奥義を控えているとますますパフォーマンスの差は開く。
最近身に着けた新魔法『エレメンタルサークル』は、通常攻撃に属性ダメージを追加してダメージを増す効果だ。
ただし一発ごとに俺ではなく、効果を受けている人のMPを食う。
闇属性サークルならばHP吸収&上限を超えた分の最大HPを増加させる効果がある。
光属性サークルならばMPだ。
一発ごとにMPを強制消費させるから、下手すれば邪魔になってしまうが光サークルが出た場合や、MPの回復手段が十分にある状況なら支援効果は認められる。
今の所闇サークル以外の属性は固定手段がないが、異世界サーマルなら装備で浴衣があるから支援にはなってくれるが――
とはいえそれだけなら、片岡の盗賊とか普通にバシバシ攻撃して、アーツの威力も結構あるようなアタッカー系を入れた方が攻略が捗るよなー。
通常の進行で全く役に立たない置物が、置いておくと多少いい事のある置物に変わったくらいだ。
やはり堅くてHPの高い敵や、ボス系に一撃必殺を喰らわすのがロマン砲仕様の紋章術師の存在意義だ。しかし『ハーデスローズ』にはそれが通用しなかった感がある。
もし『超級転移石』を使っての持久戦で倒すような設計だとして、この先もボスもそういう系だったとしたら――
やべえな、俺要らない子じゃねーか!
まあ、それでも普通にマイペースで攻略していく分には問題ないのだが、競争相手がいて、しかも絶対に負けられない戦いとなると、効率を突き詰めたら外れざるを得ない――
「……となるとやっぱ俺自身を何とかする方法を探さないとか……」
ずっとベンチは嫌だからな!
とにかく出かけるか。『ハーデスローズ』はきっとあきら達が何とかしてくれるはず。
「っし! じゃあ行ってくるか! 出かけるぞ、リュー!」
「きゅ~! れんげんきになった~!」
「おお! いつまでもたそがれてられねーし! なんか見つけに行くぞ!」
で、俺が水上コテージの出口に向かうと――
「コケーッ! 蓮~! 蓮はいるコケか~!?」
お――? ココールか?




