第215話 時が来た!
「……やっぱりこうなってるよな~」
「あははは……」
やはりとんでもない人だかりである。
今日も仲田先生が仕切っているが、先生も仕切りがいがありそうである。
「さぁ次の挑戦者は誰かな~!? 久しぶりに5人まで勝ち抜いた子が出てきたぞ~!」
「「「はいはいはいはいはいっ!」」」
手を挙げる奴がとんでもなく多かった。
こりゃあ、挑戦者を決めるだけでも一苦労だぞ。
「はいは~い。じゃあ参加希望の人はこっちに集まってね~!」
ぞろぞろと先生の所に人だかりが。
「これじゃ中々対戦も進んでいかないね」
「ああ。人多過ぎだな」
だが、各ギルドの思惑としてはそれで悪くはないのだろう。
タイムロスを多くして、敵に『超級転移石』を渡すのを防ぐ事に繋がる。
ここの対戦の状況はギルド本隊にも伝わってて、勝ち抜けそうな奴がいたらガチでこのゲームに強い奴を呼んできたりとかするのだろう。
結果、レベルの高い潰し合いが発生して誰も『超級転移石』を手にできずに終わるという寸法だ。
「……まあ、他が足の引っ張り合いで停滞してくれたら、俺達は楽だけどな」
俺たちは持久戦の方向で考えてはいないが、もしかしたら『ハーデスローズ』に持久戦は有効なのかも知れない。
そこを試したいと思って試すような奴らが、ここでまごついてくれるなら願ったりだ。
結局誰も『超級転移石』をゲットできずに時間が過ぎる――という事になるのだ。
「この隙に俺達が打開策を見つければ勝てる――」
「ならここにいても仕方ないかも知れないね。ここはこのままの方がいいんだもんね」
「そうだな。別のところに行くか」
何も取れなかったが、今の状況が分かったのは良かったかな。
そういう意味では無駄足だったが無駄足ではないだろう。
まだ多少の時間の猶予はありそうな感じだ。
ただ、雪乃先輩達が既に『超級転移石』をゲットしていないかとか、帰って行ったエミリー達のプロゲーマのチームが既に攻略法を見つけていないかとか、その足立は気がかりだが――
何にせよ、俺達は俺達で何か見つけないとな。
「そうだね、じゃあ――」
と、俺たちがその場を離れようとした時、舞台の上から声をかけられた。
「あっ! 蓮! あきら! おーい! こっちこっち!」
「ん……?」
「あ、エミリーちゃんだ!」
あきらの言う通り、舞台上にはエミリーがいて、俺達に手を振っていた。
さっきは姿が見えなかったが、混んでたのもあるし、ちょっと分からなかった。
対戦相手が決まるのを舞台から一度降りて待ってたのか。
「エミリー! 今勝ち抜いてたのってエミリーだったのか!?」
「うん、そうよ。だけど見ての通りで、人が多過ぎて対戦相手が決まるのにも時間かかるし、これじゃあいつになったら十人目まで勝ち抜けるのか――嫌になっちゃう」
ふう、とエミリーはため息をついていた。
「やっぱエミリー達も『超級転移石』が必要って判断なのか?」
「正直意見は割れてるかな? あのあと一回ルーカス達と攻略に行ったけど、やっぱり負けちゃったしね。戦略の練り直し中よ。でもまあ、いろんな手を考える上ではあって困るものじゃないし、とりあえず取って来ようかなって感じよ。他のみんなは他のみんなでそれぞれアイテムを取ったり、準備してるわ」
「なるほどなぁ――ステータス的には俺達と一緒か」
「まだどこも攻略は出来てないって事なのかな……」
「うん。そうだと思うわ。クリア者が出たらすぐ話題になるだろうし。で、蓮たちはどうなの? 確か『超級転移石』持ってたわよね? 使って失敗しちゃったとか?」
「いや、まだ取ってある。俺達は持久戦であいつの子分が尽きるのを待つとかは向いてないからなぁ。まあ他の方法を何とかって事で」
「ふふふ。そりゃあそうよね。そもそも蓮がああいう一撃必殺のロマン仕様なんだから、持久戦になんてまるで向かないわよね? もしそうするなら蓮を外して別の人を入れた構成で臨んだ方がいいくらいだし。あくまで短期決戦で行ける方法を探すって事でしょ?」
「そうそう。そうならざるを得ませんな」
「でもそれでいいと思うわ。魅せるプレイも大事だもの! 上手くいったら間違いなく目立つわ、頑張ってね! みんなで盛り上げましょ!」
「おう! エミリーも頑張れよ、じゃあ俺達行く所あるから、またな」
「うん。あきらも頑張ってね、蓮をよろしく!」
「うん、じゃあまたね」
と俺達はエミリーと別れてその場を後にすることにした。
あきらもついて来てくれるが、不思議そうにしていた。
「ねえ蓮くん、エミリーちゃんがやってるなら、もうちょっと見て行ってよかったんじゃない? 帰っちゃっていいの?」
「ん? ああ、全然いいぜ。やる事が見つかったからな」
「え!? そうなの? いつの間に――」
「エミリーと話しててさ、ちょっと思いついたんだよ。とりあえず水上コテージに戻ってみんなを集めよう。『超級転移石』もぶち込むぞ……!」
そう。とうとう使うべき時が来たぞ、恐らく!




