第207話 微調整
『エレメンタルサークル』を百回ほど撃ったところで、水上コテージにあきらが戻って来た。
「ごめーん遅くなっちゃった。お待たせっ!」
「おーう。じゃあ行こうぜ!」
「うん、じゃあどこに行こうか? また基本のアイランドバニーから始める?」
「まぁそうじゃなきゃいけないわけでもないけど――それでいいか」
取り合えず弱い奴から強い奴まで、色んなのに当ててみると何かしら発見もあるかも知れないしな。
それにこう、アイランドバニーは心の故郷とも言えるからな。
たまには田舎に帰らないとだ。
最近俺が顔を見せないものだから、アイランドバニー師匠も寂しがっているだろう。
というわけで、俺達は異世界サーマルから通常エリアに戻り、トリニスティ島第一層に向かった。
今日も今日とて、アイランドバニーがぬぼーっとした感じでぴょんぴょんしてますなあ。
「いやー、いつ来てもここは変わらねえなあ。安心感すら感じるよなぁ、心の故郷って感じだな!」
言いながら俺は、速攻でアイランドバニーに石ころを投げつけて敵対行動を取った。
アイランドバニーはアイランドバニー同士でリンク――つまり味方が襲われていたら加勢してくるので、俺の前にわらわらと集まってくる感じになった。
「そうだねー。その故郷に帰るなりいきなり石投げつけるんだから、とんでもなく失礼だよね、よく考えたら」
「失礼って言うか、リアルにいたら普通に逮捕レベルだよなあ」
と、朗らかに応じながら俺はデスチャリオット装備に着替えて、『エレメンタルサークル』を発動させた。
大範囲で発動し、MPをがっつり減らしておく。いつもの奥義の前フリである。
「奥義『朱雀一閃』っ!」
ボエェボエェボエェボエェボエェボエェボエェ!
俺の奥義に巻き込まれて一斉に倒れるアイランドバニー師匠達。
今日も今日とてご苦労様です!
ちなみにダメージは1000を少し超えた程度に落ち着いている。
なぜかと言うと『ファイナルストライク』をしていないからだ。
今日は最大威力を見に来たわけじゃないからな。
なのでわざわざ武器破壊する必要もない。
注目すべきは、奥義発動時の追加効果のログだった。
蓮のHPが60回復した。
蓮のHPが60回復した。
蓮のHPが60回復した。
蓮のHPが60回復した。
蓮のHPが60回復した。
蓮のHPが60回復した。
蓮のHPが60回復した。
うん、巻き込んだ分だけHP回復してますね。
まあ予想通り――だな。
「『ファイナルストライク』してない分ダメージ減ってるけど、特に変わった所はないよね? 当たった敵の数の分HP回復してるしね」
「そうだな。まあこれが基本というか、デフォルトの感じだな」
「何か試せることがあるの?」
「ああ。これでどうなるかだな……」
俺はシステムウィンドウを呼び出し、タレントの『スキルチェーン』のエディット画面を開く。
ここでスキルやアーツを3つまで登録して一つの奥義を作り出すわけだ。
今『朱雀一閃』のために登録されている内容は――
1:『ターンオーバー』
2:『爆炎タックル』
3:『抜刀術』
である。
「ここをこうして――」
俺は『ターンオーバー』と『爆炎タックル』の順番を入れ替える。
1:『爆炎タックル』
2:『ターンオーバー』
3:『抜刀術』
になった。
「これでよし……!」
「え? それ意味あるの!? わたしの奥義とかだと、どっちでも一緒だったよ」
「そこは多分、関係するやつとしないやつがあるんだと思うんだよな」
「どうしてそう思うの?」
「そりゃあれだ、『朱雀一閃』を作った時にさ、順番入れ替えたらダメージが減ったんだよ。多分『ターンオーバー』でHPMP入れ替えて減らす前に『爆炎タックル』が入っちまうと、『爆炎タックル』分はHP満タンで打つことになって、ダメージが減衰したんだと思う」
元々『爆炎タックル』自体にはHPが減れば減るほどダメージアップという性能は無いんだが、その『抜刀術』が持つ特性が『スキルチェーン』で奥義化することにより、『爆炎タックル』にもかかるようになったのだろう。
この『スキルチェーン』の奥義合成ロジックは中々複雑怪奇で、もっと検証をしてみたいところだ。
ともあれ今回注目するのは――
1:『爆炎タックル』
2:『ターンオーバー』
3:『抜刀術』
にした時に、『爆炎タックル』はHP減らずに撃ってるのではないかという事である。
「よっしゃもう一回撃つぞ! 奥義『朱雀一閃』っ!」
ボエェボエェボエェボエェボエェボエェボエェ!
そして次に出た追加効果のログはこうだ。
蓮のHPが60回復した。
蓮のHPが60回復した。
蓮のHPが60回復した。
蓮のHPが60回復した。
蓮のHPが60回復した。
蓮のHP上限が33増えた。
蓮のHPが60回復した。
蓮のHP上限が60増えた。
蓮のHPが60回復した。
蓮のHP上限が60増えた。
お! やっぱりちょっと現象が違うな!
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