第205話 ガチなのでお金を頂きます
「高代君……!? 何その装備!? あたし、そんなの知らないんだけど!? それは、あれよね? 『アーズワース海底遺跡群』の途中のボス」
「はい、そうっすよ。デスチャリオットです。あいつから取れるんですけど、多分持ってるのは、まだ俺達だけだと思います」
「……確かに、そんなものが取れるなんて初耳だわ。デスチャリオットって確か浅い階層のボスでしょ? そこならみんな通ってるのに、今まで発見報告なんてなかったわ」
「ですね。今のところ希少価値はあるんじゃないかと。興味あります?」
「売ってくれるの!?」
身を乗り出してくるほむら先輩。流石はアイテム厨ギルドのボスだぜ。新アイテムには目がないんだよな。
しかしそんなほむら先輩を、雪乃先輩が呆れた目で見ていた。
「お前そんなものが欲しいのか? 言っておくが、性能はとんでもないゴミだぞ?」
「ふん、性能だけがアイテムの価値じゃないのよ! 心の貧しいやつね!」
「はぁ!? お前は物の良し悪しも判断せずに、ただ何でも欲しがるだけの能無しだろうが。恥を知れ」
「あんたに言われたくないわ、脳筋!」
「黙れアイテム厨!」
睨み合いが始まる。
今回はチーム組んでやってるのに、一瞬でチームが崩壊しそうになるなあ。
相変わらず同じゲームを楽しんでいるのに、ポリシーが合わないらしい。
「まあ一応、俺の検証した所では隠し性能的なものもあるんですけど――」
「うん? 蓮、どんな性能だ?」
「紋章術師の『エレメンタルサークル』で、闇属性の発動率が上がります。上昇率は1部位で20%くらいです」
「それは、あれだな? 追加攻撃が通常攻撃に付く魔法だったな……ただし発動する属性はランダムでな」
「ですです」
流石雪乃先輩はバトルに関する事は詳しいな。
「よく知ってますね?」
「ああ。無論、対人戦の戦闘バランスに影響を及ぼしかねん要素だからな。ウチのギルドの検証班に性能を確かめさせた。追加効果の発動時に、毎回攻撃する者のMPを消費するんだろう? 確か」
「そうっすね」
「下手に使えば、逆にPTメンバーの邪魔になりかねん魔法だよな――」
まあ雪乃先輩の言う通りではある。
打撃の度にMPを食うってアレだ、ドラ○エ的に言うところの理○の杖なわけだが――
強制的にそれ発動させられたわうざいわな。
自分はMP取っておきたいのに! ってなる。
光属性サークルはMP吸収効果があるので、光属性に100%絞れればまだ許されるが――
残念ながらデスチャリオット装備で絞れるのはHP吸収の闇サークルの方だ。
「まあ、基本そうですよね。開発側の意図としては、ソロでちょっと戦えるようになる的なもんかと」
「だな……蓮には残念だろうがな」
「いや、闇サークル面白そうなんで、全然いいっすよ。まだまだ検証の余地ありです」
「そうか。まあ、また何か面白いものを見せてくれるのを楽しみにしていよう」
「そうれはそうと、話が途中だったわよ。で、それを売ってくれるの?」
「んー……。装備一つと『ハヤブサの極光石』一つの交換とか――」
『ハヤブサの極光石』はあれだ、前にほむら先輩が俺にくれた二回攻撃用の武器を作る素材だ。あれでデッドエンドVを撃ったのはいい思い出だったな。
あれ高いんだよなあ。
結局あれ以来、自分の手で『ハヤブサの極光石』を組み込んで使う事は無かったが、今回は恐らく必要になる。
だが自分で金を出して買うには、ちょっと先立つものが足りないのだ。
ここはお金持ちのほむら先輩の財布に頼るぜ――!
単なる『レインボーガード』争奪戦なら、別に日頃の感謝を込めてタダで譲ってもいいんだが、あきらがこの先気兼ねなくこのゲームをやるには、ソードダンサー装備の見た目問題を何とかしなきゃだからな。
元々ソードダンサーを勧めたのは俺だし、もしあきらが家の人に装備のせいで怒られて退学とかさせられたら、俺のせいだ。
ここはガチで『レインボーガード』を取りに行くぜ――!
勝ちにこだわりつつ、魔改造とジャイアントキリングも忘れずにって感じで!
なので、ほむら先輩には申し訳ないが容赦なく対価は頂こうと思う。
『ハヤブサの極光石』を調達するための金策で手を止めたくないからな。
「じゃあ全部で五個? 吹っ掛けて来るわねえ、まだ他に誰も持っていない先物っていうのは確かなんだろうけど――」
ほむら先輩が思案顔になる。
確かに、単なるコレクターアイテムとしては流石に高いわな。
なので、俺は提案を変える。実はこっちが本命だ。
先に厳しい条件を出しておいて、本命に誘導しようって事だ。
「んじゃ、これの取り方を教えますよ。情報提供料って事で、『ハヤブサの極光石』一個でいいっすよ。コツさえ分かればすぐ取れるんで」
逆に、知らなきゃ殆ど気づかんだろうが――
怪我の功名と言いますか、何と言いますか……ありがとうお兄様。
ともあれ俺が選んで欲しいのはこっちだ。
もう一回取りに行く手間をこっちは省きたいし、逆にほむら先輩達にこれを取りに行って貰って、その分先の進行をストップして貰いたいわけだ。
ある種の足止め工作でもあるわけだ。
「……オッケー。それでいいわ。じゃあはい、『ハヤブサの極光石』よ」
ほむら先輩はサクッと『ハヤブサの極光石』を取り出して渡してくる。
やっぱ金持ってるよなあ先輩は。まだまだ何個でもありそうだぞ。
「まいどありです!」
これでハーデスローズ撃破にまた一歩近づいた――はずだ!
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