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第204話 アイテム厨の性

「ええい、クッソ動き辛いな! まぁとにかく帰ろうぜ、そこらを練り歩きながらな!」

「うんうん、いきなり現れたデスチャリオットと、びっくりする通行人の図をしっかりスクショしとくからね!」

「まぁ好きにするがいい。じゃあ行くぞ全速力!」


 と、俺は全速力で動き出そうと体をグイッと前のめりにするのだが――


 ギャリギャリギャリ――!

 ぎゃああぁぁぁん!


 車輪もドラゴンも元気よく動くのだが――それは見掛け倒しだった。

 遅いのだ、スピードが。

 人がゆっくり歩くくらいのスピードしか出ない。

 おじいちゃんやおばあちゃんが乗ってる電動車椅子より遅いかも知れない。

 全然チャリオット感が無いんですけど!

 チャリオットって言ったら、もっと勢いよく爆走して人を撥ね飛ばすくらいの勢いが出ないとダメだろう。戦争で敵を蹴散らすための戦車なんだからな。


「ぬぅ……! スピードは出ないんだなこれ」

「そうだね、遅いね――」

「ま、まぁ全部に移動速度ダウンついてるしなぁ」


 あんまり早いと使え過ぎて困るって事か?

 爆走できるなら、装備をたくさん集めてデスチャリオットレースとか面白そうだったんだがな。

 公道をマリオカートで走ってる動画とかのデスチャリオット版的な絵が撮れると思ったんだが、こう遅いとなぁ。


「これ普通に歩いたほうが早いんじゃねーか?」


 俺は一旦、普通に立ち上がって歩いてみる事にした。

 だが――歩こうとしても全然体が動かない!


「うごごごごご……!? 何だこれ!?」


 ゆっくり、ゆっくり、スロー再生くらいの速度でしか歩けない。

 とんでもなく動き辛いぞ、これ!


「そ、そうかこれも移動速度ダウンだしな……!」


 普通に歩くのに比べれば、まだデスチャリオット式ムービングの方が全然早いのだ。

 こんなもの着させられて、しかもステータスも大幅ダウンだし、デスチャリオット先生の中の人は装備を取ったらめちゃめちゃ強いんだろうな。


「やっぱりさっきのじゃないとダメっぽいね」

「だなぁ。まあいいや、ゆっくり帰ろうぜ!」


 というわけで、再び車輪で動き出す俺。

 一日五回までの『アーズワース海底遺跡群』探索はもう終わっているし、別にゆっくりでも構わないだろう。

 あえて島の中心部の人の多い辺りを通って、でかい車輪の立てるギャリギャリ音だけは大きく立てつつ、その割にのろのろと進んで行く。

 やはり相当な注目を浴びて、何だあれはと指差してくるプレイヤーが多い。

 うんうん、注目を浴びているな。

 見た目は相当なインパクトだしな。誰か高く買ってくれるなら売ってもいいよ! 俺達はまた取れるし。

 有料で取り方の情報提供だけしてもいいが。


「あはは。注目浴びてるねー、蓮くん」

「ああ。ギルドショップの商品の宣伝にもなるからな。これでいいんだ」

「……ふう。こういう注目のされ方は、お兄様とご一緒する時だけで構いませんのに」


 と、後ろの方で赤羽さんがため息を吐いていた。

 赤羽さんも苦労してるんだなー。


「とは言え、今回のこれはあの人がああじゃないと気付かなかったからなあ、それだけは感謝してるぜ。それだけは」


 と、俺は赤羽さんを振り返り、グッとサムアップして見せる。

 今の俺の見た目は小さなデスチャリオットである。

 それがこんなことしたら、さぞかしシュールだろうな。


「それはどうも――どうでもいいですが、その見た目で話し掛けないで下さい。友人と思われたら恥ずかしいので」


 と、嫌そうな答えが返って来る。

 そこに――


「やあ、あきら! それにお前――蓮か? 何だその恰好は!?」


 と、通りかかった雪乃先輩が、少々引き気味で俺達に声をかけて来た。

 今から『アーズワース海底遺跡群』に行く所だったのかな?


「雪乃さん! こんにちはっ」


 あきらがにこにこ笑顔を雪乃先輩に向ける。


「あ、こんちはっす雪乃先輩! どうっすかこれ、決まってるでしょ?」

「……ふむ、それは『アーズワース海底遺跡群』の途中にいたボスだよな?」

「そうです、デスチャリオット! あいつになりきれるんですよ、これ」

「見た事も無い装備だが――? それは対人戦に使えるものなのか?」


 対人戦厨の雪乃先輩からしたら、まず第一の興味はそこだろうな。

 というか、この人はそれしか興味がない。


「いや、全然。とんでもないマイナス補正付いてますね。性能見ます?」

「ほう……? ああ。頼む」


 と言うわけで俺はウィンドウを開いて雪乃先輩に見せた。

 それを見て、雪乃先輩は顔をしかめる。


「何だこれは――! 完全なコスプレ用装備だな! いらん!」

「けど、レアですよ。きっとこれ以外誰も取ってないんで――というわけでほむら先輩って今日はいないんですか?」

「いや、すぐ来るが――お、来たぞ」

「ゆ、雪乃……! 何してんの!? その変なの何!?」

「あ、ちわっすほむら先輩!」


 おお、来たぞアイテム厨が――!

 ほむら先輩なら興味を持ってくれるに違いない。

 全てのアイテムを収集するのが夢だからな、ほむら先輩は。

 それがいいものであろうとなかろうと、未所持のものは収集する。

 それがアイテム厨の性ってやつだ。

 現物もしくは情報を高く買ってくれないかな――?

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