第２０１話　ここだ、ここで脱ぐんだ！

　挨拶代わりの極大ダメージを喰らわせると、当然デスチャリオット先生は俺の方を向いて攻撃を仕掛けようとする。

　奥義を撃った直後の俺は瀕死。一発喰らったら死ぬのだが――

　そこはもう他のみんなを信用して堂々と足を止め、俺はアイテムウィンドウを開いて次の『仕込杖』の合成にかかる。

「みんな後よろしく！」

　戦闘中合成は普通出来ないが、タレントの『流れ作業』をセットしていれば可能だ。

「ほいっ。『ギルティスティール』！」

　優奈のギルティスティールが発動。優奈は蓮のヘイトを全て盗んだ！

　矢野さんが俺が奥義で稼いだヘイトを全部持って行ってくれる。

　デスチャリオット先生がくるりと矢野さんの方を向く。

「「『剣の舞い』！」」

　あきらと赤羽さんが同時に『剣の舞い』を発動する。

　あきらの剣の舞いが発動。蓮の全てのスキルが再使用可能になった！

　希美の剣の舞いが発動。優奈の全てのスキルが再使用可能になった！

「回復も！」

　琴美のエクス・ヒールが発動。蓮はＨＰが３４５回復した。

　前田さんも絶妙なタイミングで回復をくれる。ありがてぇありがてぇ。

　うーんしかし、『剣の舞い』はやっぱあきら達のがいいよなぁ。

　前にデスチャリオット先生と戦った時は、ソードダンサーがお兄様だったからなあ。

　それに比べてあきらは可愛いし赤羽さんは綺麗だし、素晴らしいな。

　――なんて思いつつ、次の『仕込杖』を合成。

　奥義発動の前フリのサークル魔法と『ファイナルストライク』を発動。

「もう一丁行くぞ！　『朱雀一閃』っ！」

　ズゴオオオオオオォォォ！

　蓮の朱雀一閃が発動！　デスチャリオットに５９０４のダメージ！

　そしてそれを合図に、あきら達が一斉に動いてくれる。

　優奈のギルティスティールが発動。優奈は蓮のヘイトを全て盗んだ！

　あきらの剣の舞いが発動。蓮の全てのスキルが再使用可能になった！

　希美の剣の舞いが発動。優奈の全てのスキルが再使用可能になった！

　琴美のエクス・ヒールが発動。蓮はＨＰが３４５回復した。

　先程の繰り返しですね！

　さぁてもう一発奥義を当てれば、デスチャリオット先生を倒せるぞ！

　俺はまた『仕込杖』を合成し、奥義の前フリまでを済ませた。

　後は奥義を撃つだけだが――今回はここで一捻りが必要だ。

　何をどう捻るかと言うと、お兄様の真似と言うか……

　そう。ここだ、ここで脱ぐんだ！

「装備変更(セットチェンジ)、セットＤ！」

　アクセサリの『イクウィップリング』で可能になる『着替え』を実行だ。

　ちなみに『イクウィップリング』のスペックは――

　イクウィップリング

　　種類：アクセサリ　装備可能レベル：１０

　　特殊性能：装備変更を音声によるショートカットで行う事が出来る

　　　　　　　タレント『クイックチェンジ』と同一の効果

　要は装備の力でタレントの『クイックチェンジ』を使っているという事になる。

　こういう、タレント効果を持つアクセサリは結構あって、実質アクセサリの枠を使ってタレントを一つ増やすと考えていい。

　今回の着替えにより、俺の装備はこんな感じに変更された。

　メインウェポン　仕込杖（ＯＥＸ）

　サブウェポン　　なし

　レンジウェポン　吹き矢（ＯＥＸ）

　矢弾　　　　　　眠りの矢

　頭　なし

　胴　ダマスカスローブ

　腕　なし

　脚　なし

　足　なし

　アクセサリ１　イクウィップリング

　アクセサリ２　ラッシングリング

　そう、頭腕脚足の部位を脱いだのだ！

　この間俺達はデスチャリオット先生から『血冥のローブ』を頂いたわけだが、俺達の他にそんなものを貰ったという話は聞かない。

　念のためアイテム厨のほむら先輩や情報屋ギルドにいる片岡にも聞いてみたのだが、やはり初耳だと言っていた。

　そうなると気になるのは、俺達と他のＰＴと何が違うのかという事だ。

　まぁ真っ先に上がるのはあのお方の――お兄様の存在だ。

　お兄様に暗黒憑依とかいう技が発動して『血冥のローブ』が無理やり装備枠に割り込んだっぽいしな。

　で、お兄様が普通の奴等と何が違うかと言うと、要は裸だって事だ。

　俺思うに、デスチャリオット先生が倒された瞬間、誰かが裸状態だったら暗黒憑依が発動するのではないかと。

　普通ボス相手に戦うのに裸で行くわけないからな。

　デスチャリオット先生が、強制的に装備を脱がせる技を使ってくるわけでもない。

　つまるところ、あの瞬間裸でいるような馬鹿は基本的にあの人だけなのだ。

　それがデスチャリオット先生に隠された仕様を一発で引き当てた、と。

　そういう事なら、他に誰も『血冥のローブ』について知らないのも頷ける。

　で、俺が検証したいのは、まずその推論が正しいのかという事だ。

　そして、矢野さんにも行ったが他の装備も取れないかという事。

　先程の着替えで、胴装備だけはダマスカスローブで埋めている。

　胴装備の枠の空きが誰も無かったら、別部位の装備を暗黒憑依でくれるんじゃなかろうかという計算だった。

　『血冥のローブ』はスペック的にはとんでもない問題児である。

　血冥のローブ

　種類：鎧　装備可能レベル：５０　防御力：７７

　装備可能ジョブ：ＡＬＬ

　特殊性能：全ステータス－１００　移動速度ダウン

　こんなだからな――普通に考えていらない、使わない。

　だが、俺の検証結果により『血冥のローブ』を装備していると『エレメンタルサークル』で闇属性のサークルが出る確率が上がるのだ。

　恐らく他の部位装備があれば、それにも闇サークルの発動率アップが付いていそうである。だから他部位も取れるものなら取ってみたい！　というわけだ。

「さぁ先生お願いします！　ラスト『朱雀一閃』ーーーーっ！」

　俺はお祈りしてから、トドメの奥義を発動した！