第199話 朝一のサービスショット
さて翌日――
そろそろ夏休みも中盤あたりになって来たわけだが、今日も今日とて俺はゲームをやるぜ!
我ながら素直でいい子な俺は、好きな事をとことん突き詰めろ! との我が家の教育方針に忠実なのだ。
朝メシ食って準備して、UWにログイン。
出現ポイントは夏休み中の俺達の拠点、異世界サーマルの豪華水上コテージである。
更に詳しく言うと、海に面したデッキの中央付近だ。
そこに俺の姿が現れると、すぐ目の前にあきらがいた。
「おっーす、あきら」
「あ、蓮くんおはよー」
にこにこと可愛らしい笑顔はいつもと変わらないが――
その格好にはいつもと違うオーラがありまくりだった。
水着姿なのだ。みんなが集合するまで泳いで遊んでいたのだろう。
あきらのガチの水着姿は初めて見るかも知れない。
いつもソードダンサー衣装で露出度は高いが、やっぱりこのビキニ姿だと更に一段とすげぇ!
なんて素晴らしい光景なんだ。まだちょっと眠かったが、目が一気に覚めたな。
胸でかい。腰細い。全身白くて、ぷるぷるしてて、柔らかそうだ――
「おおぉぉ……! 朝一からサービスショット、キター! 今日はいい事ありそうな気がするぜ! 俺のためにありがとうございます!」
「べ、別に蓮くんの為じゃないし……! 泳いでただけなんだから――まぁ、喜んでもらえるのは嬉しいけどね? えへへっ」
「どうかしら……? どれが一番気に入ってもらえるかと言って、散々悩んでいらしたではありませんか。おかげであまり泳げませんでしたわ」
と、水面から顔を出した赤羽さんが言った。
ああ、赤羽さんももう来てたんだな。気づかなかった。
「希美さん! 余計な事は言わなくていいですっ!」
「はーい。ですわ。さぁ出かける前にもう少し泳いでおきますわ。せっかくですしね」
今日も『アーズワース海底遺跡群』の探索に繰り出す予定だ。
デスチャリオット先生に用があるのだ。これはもう絶対に行かねばならない。
上手くすれば、俺達をボコボコにしてくれたハーデスローズ攻略のカギになってくれるかも知れないのだ。
昨日もエミリーが帰った後ラスト一回に行こうとしたのだが、あきらに赤羽さんを召還して貰ってまで六人揃えて行ったものの、入った瞬間モンスターハウスが発動してスライムの大群に轢き殺されたのだった。
で、まあ今日は仕切り直しというわけだ。
「わたしも泳いどこうっと! ねえ蓮くんも泳ごうよ!」
「おうよ! 着替えて来るか!」
俺達が泳いだりジェットスキーで遊んだりしているうちに全員が揃い、『アーズワース海底遺跡群』へと出発した。
今日のパーティーメンバーは俺、あきら、前田さん、矢野さん、赤羽さんにシズクさんだ。昨日からはエミリーが抜けて赤羽さんが入ったわけだ。
ジョブ構成的には、紋章術師、ソードダンサー、学者、空賊、ソードダンサー、格闘家って感じだ。ダブルソードダンサーシステム再び。
エミリーの重騎士は範囲ヘイト獲得スキルの『名乗り』が雑魚との乱戦ですげー有効な上、そうやってかき集めた敵を自分で赤き災厄で吹っ飛ばすという事も出来たので、雑魚戦にもボス戦にも強く頼れる盾役だった。
俺は優遇ジョブには興味はないが、いてくれるとやはり安定感が違った。
ダブルソードダンサーになって、それがどうなるかだな。
まあ今日の予定のデスチャリオット先生ツアーでは、そこまでゴリゴリの効率を考えなくてもいいだろうが――
と、考えつつ俺達が『アーズワース海底遺跡群』の入り口にやって来ると――
「あれ? 今日人少ないな?」
「あ、ほんとだね――昨日よりも明らかに少ないよ」
「……どういう事ですし? みんなリアルに出かけてるのか?」
「いや――『レインボーガード』欲しさにここに集まってた奴等なんて、皆ゴリゴリのゲーマー共だぞ。そんな一斉にゲームをサボるとは思えねえな……多分、皆ハーデスローズ対策を練ってる所なんじゃねえかな。アイテム集めたり、タレント揃えたりしてさ。それに手を取られて、一時的に止まってるのかと」
「なるほど……しかしゲームをサボるって、よく考えたら凄い表現ですし」
「そ、そうねえ……何か間違っているわね。でも何だか、それが当たり前みたいにも聞こえるわ」
「君達の熱中ぶりと研究ぶりを見れば、スポーツの団体競技にも似ていると思えるがな」
と、シズクさんがコメントする。
「まあ実際、プロゲーマとなんて言う職業も認知され始めていますからね。エミリーさん達もそうなのでしょう? わたくし達の会社でも、プロゲーマのチームを作ろうか、なんて話もしておりますし」
「くっくっくっ――プロゲーマーのチームに攻略で勝つとか、すげー気持ちいいだろうなぁ。燃えて来るぜ、絶対勝ぁつ!」
そのためにも、まずはデスチャリオット先生に会おう!
俺達は『アーズワース海底遺跡群』の中へと侵入した。
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