第198話 隠れた神装備
という事でエミリーがルーカスの所のPTに帰ってしまったので、とりあえず今日の『アーズワース海底遺跡群』はとりあえずお開きという事になった。
まあ既に四回潜って残り一回だしな。ココールなり赤羽さんなり片岡なりが現れたらもう一回行ってもいいが――
とはいえ『上級転移石』は残り一つで『超級転移石』も残り一つ。
これを迂闊にぶち込んでも、ハーデスローズの攻略法をどうにかしないと、無駄になるしなあ――
ハーデスローズの攻略法を見出すには、もっと色んな戦い方を試してみて、探っていくしかない。
それには試行回数が欲しい所だが、『上級転移石』をぶち込まないとそこまで辿り着くのも厳しいんだよな。
となると、まずやるべきは『上級転移石』を探しつつも普通の『転移石』で10層ぶち抜いてハーデスローズと戦えるように、道中の攻略速度のスピードアップを測っていくしかないか――?
エミリーは道中でも安定して貢献してくれてたからなあ。
道中のスピードを上げるなら、あれだ。
俺のジョブを変えるのが一番早かったりしてな――フフフフ。
『エレメンタルサークル』ごときでは、道中のエミリーの重騎士の貢献度には全く及ばんからな。
だがジョブチェンジは絶対に拒否する! 俺はダメジョブマイスターなので、ダメジョブを使っていないと死ぬのだ!
何とかしてやる何とかしてやる何とかしてやる――
という思いを込めて、俺は検証に精を出していた。
最近ハマっている『エレメンタルサークル』の確立検証である。
まだまだ試行回数を増やさないと偶然に左右されるからな。
前田さんと矢野さんは、また水着に着替えてジェットスキーで水上コテージの周りを走り回っていた。
シズクさんはデッキチェアに横になってのんびりしている。
で、あきらはリビングで検証作業中の俺の所にやって来て、ソファーの隣に座っていた。
ただ、いつものようにニコニコしているわけではなく、ばつが悪そうにしていた。
「よし行くぞリュー! 『エレメンタルサークル』! 『エレメンタルサークル』! 『エレメンタルサークル』! 『エレメンタルサークル』! 『エレメンタルサークル』!」
「きゅ~。あおしろきいろみどりみずいろ~」
「うむ。氷光土風水っと……光出たな光」
黒と白の闇サークルと光サークルは発動率2~5%程度で他よりレアなので、出るとちょっと得した気分になれる。
「はあぁぁ~……」
とあきらが大きなため息をついていた。
「? どうしたんだよ? さっきから変だぞ」
「うん……あぁぁぁ~~わたし、変な勘違いしてあんな態度して――ほんとにごめんね?」
「いやあ、全然気にしてねえよ。という事で『エレメンタルサークル』『エレメンタルサークル』『エレメンタルサークル』『エレメンタルサークル』『エレメンタルサークル』」
「きゅきゅ~。むらさきあかみどりきいろみどり~」
「雷火風土風――」
「でも自分が恥ずかしいよぉ~。あんな感じになっちゃうんだ、わたしって感じで――って何やってるの蓮くん!? その怪しい装備何!?」
俺はデスチャリオットから支給された血冥のローブを着ていたのだった。
装備を色々変える事によるサークルの発動確率の変化を検証したいのだ。
血染めのスプラッタ感と怨霊エフェクトのホラー感が豪華ですね!
「いや、デスチャリオットってボスが、お兄様が裸なのを憐れんでコレくれたんだよ」
「はぁ? あははははっ! 何それーー? そんな事あるの!?」
あ、ウケてくれた。うんうん、あきらは笑顔なのが一番だよな。
「そうとしか思えなかったからなー。死に際に無理やりお兄様にコレ着せて散って行ったんだよ。意外といい奴だった――ってわけで『エレメンタルサークル』『エレメンタルサークル』『エレメンタルサークル』『エレメンタルサークル』『エレメンタルサークル』……」
「きゅ~。くろあおくろみどりくろ~」
「闇氷闇風闇――まま、あれだ。立場が逆なら俺も、おのれマイベストフレンドを、ぐぬぬ……! ってなってた気もするし、もう気にすんなよな? 夏休みを楽しもうぜ!」
「蓮くん――ありがと。あのね、わたしね――その……でも――」
何か言いたそうなあきら。心なしか頬がほんのり桜色だ。
もじもじする様子が見た事のない感じで、とても可愛らしかった。
そして、俺はそこでようやく気が付いた――めちゃくちゃ重要な事に!
「何いぃぃぃぃっ!? そ、それはあぁぁぁぁぁぁっ!?」
「え? な、なに……? あ、わたしの考えてる事分かっちゃった……? わ、分かりやす過ぎかな、わたし――」
「五分の三闇サークルが出てるじゃねーか! おいコレ偶然じゃ殆どありえーねーだろ! 五回中三回5%が発動するとか! よしもう一回だ! 『エレメンタルサークル』『エレメンタルサークル』『エレメンタルサークル』『エレメンタルサークル』『エレメンタルサークル』!」
「きゅ~。みずいろみどりあかむらさきくろ~」
「水風火雷闇! 『エレメンタルサークル』『エレメンタルサークル』『エレメンタルサークル』『エレメンタルサークル』『エレメンタルサークル』!」
「きゅきゅきゅ~。あかあおくろみどりくろ~」
「火氷闇風闇! キ、キターーーーーーー! これはキタぞ! 闇サークルの確率アップしてる!」
つまり血冥のローブに闇サークルの確立を引き上げる隠し効果があるという事!
というより、『エレメンタルサークル』の各属性の発動確率は、その時の装備属性によって変化する仕様だという事だな。
で、血冥のローブに関しては闇属性が引き上がると――
闇サークルには一時的なHPブースト効果がある。
そして俺の奥義のベースになる暗器アーツ『抜刀術』はHPが少ない程ダメージがアップする仕様。
そして最大HPが高い程、HP1時の威力も上がる。
つまり、HPブースト効果は奥義のダメージアップに繋がるという事! ロマン砲のロマンが増すのだ!
闇サークルが狙って出せるなら――更にロマンを増したロマン砲によって、ハーデスローズ攻略の可能性が出て来るかも――!
「っしゃあぁっ! なああきら、今から『アーズワース海底遺跡群』今日最後の一回行こうぜ! デスチャリオット先生に会いたいんだ!」
「…………」
しかしマイベストフレンドは、呆れたような怒ったような、とんでもなく冷めた視線を俺に向けて来た。
「……あれ? どうかしたか?」
「はあぁぁぁぁ~~……まあ蓮くんはこうだよね。そうだよね――」
「えーと? 何かごめんなさい……?」
「あ、ううん。いいんだよ、気にしなくて。じゃあ行こっか! 付き合うね!」
あきらは見慣れたにこにこ笑顔でそう言った。
ここで第4部(夏休み編・前半)終了となります。お疲れさまでした!
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続きはそう遠くないうちに。。と思っています。
再開しましたらまたお願いします。




