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第197話 美しい友情の光景?

 俺が水上コテージの入り口の様子を見に行くと、そこには俺より少し上位の金髪のお兄ちゃんがいた。

 おお外人だ! いやしかし、こいつどこかで見た事があるような――?


「エクスキューズミー――……――エミリー…………プリーズ」


 何か言ってるが、エクスキューズミーとエミリーとプリーズしか聞き取れなかった!

 うーん、英語は苦手だ。特にリスニングが苦手だ! 典型的日本人ですね。

 勉強で読み書きは出来るようになるかも知れんが、喋れんという――

 エミリーは日本語喋ってくれるから、昔からそれに甘えて来た結果だなあ。


「ぷりーずすぴーくもあすろーりー!」


 迷いなく俺がそう答えると、向こうはやれやれと首を振ってから――


「すまない。エミリーがここにいると聞いているんだが――いるかい?」

「おおっ!? 日本語喋れるのかよ!」

「エミリーは親日家だからね。覚えさせられたのさ」

「あんたがルーカスか? どこかで見た事あると思ってたんだ。エミリーからの手紙に付いてた写真で見たんだよ」

「君が蓮だろ? エミリーから話は聞いてるよ、彼女が世話になってるそうだね。どうもありがとう」


 向こうから手を差し出され、俺達は握手をする。

 日米友好! いい事ですな。


「いやいや、こっちこそ。取り合えずエミリーは奥にいるから、入ってくれよ」


 という事で俺はルーカスを伴って水上コテージの中に戻った。

 エミリー達は先程と変わらず、リビングで座っていた。

 彼女を見つけると、ルーカスが声を上げる。


「エミリー!」

「あれ? ルーカス? どうかしたの?」

「迎えに来たよ。すぐに俺達の所に戻ってくれ」


 しかしこのアメリカ人二人が日本語で会話してるのは、俺達にも聞いて分かるようにしてくれてるんだよな。うーん親切だ。


「え~どうして? せっかく楽しく遊んでたのに!」


 エミリーは少々不満そうだった。


「遊びじゃなくなったからさ。学園は俺達に『アーズワース海底遺跡群』を一番にクリアする動画を撮って欲しいそうだよ。彼等はスポンサーだからな、プロとしてそのオーダーには応じる必要がある」


 うん、このルーカスもあっちのプロゲーマーなんだよな。

 エミリーと同じような立場だ。所属するプロゲーマーのチームも一緒らしい。

 それに――


「うーん……どうしても帰らなきゃダメ?」

「ああダメだ。B80Fのボスはとんでもない強さだって知ってるかい?」

「――ええさっき見て来たわ」

「あれをクリアするには、俺達が本気でやらなきゃムリさ。君の力がいるんだ」

「う~ん……そっかあ――しょうがないか……でも蓮達に悪いわね」

「大丈夫だろ。君がいてもいなくても結果は変わらないと思うよ? 紋章術師にソードダンサーに空賊に学者――そんなPTと一緒じゃあいくらエミリーが頑張ってもハーデスローズは倒せないよ。もっと真剣に突き詰めないとな」


 そう言うルーカスに、エミリーは子供を叱るような口調になる。


「ルーカスぅ? そんな事言ったら蓮達に失礼じゃないの。あたしを無礼者のお嫁さんにしないでちょうだい」


 うん。そうなんだよな。

 エミリーからの手紙で知ってたぞ俺は。

 アメリカって親の承諾があれば、16歳でも結婚できるからな。

 州によっちゃあ、もっと下でもOKな所もあるらしい。

 エミリーはそっちの世界じゃあアイドル的人気があるみたいなので、公には明らかにしていないそうだが――

 自分でそう発言するって事は、ここにいる面子には知られても構わないという事なんだろう。


「「「ええええぇぇぇぇっ!? お嫁さん!?」」」


 あきら、前田さん、矢野さんが吃驚して声を上げていた。

 シズクさんも驚きはしたのか目を見開いている。


「ええと、じゃあ――」

「エミりんって……」

「こう見えて――」

「「「結婚してるの!?」」」


 また三人ハモったな。


「うん。そうよ? アスリートは早く身を固めて競技に専念すべきだと思うし! プロゲーマーもアスリートだから!」


 と、エミリーは確信を持って断言していた。


「あ、でもまだ公表してないから、内緒にしててね?」


 こくこくこくこく。

 驚きで言葉が出てこない三人が、ただただ頷いていた。


「ほらルーカス、蓮たちに謝って。失礼な事言ってごめんって、じゃないと今日から一緒に寝てあげないから」

「あ、ああ――悪かった。言い過ぎたみたいだ。エミリーを取られたようで、少し嫉妬していたのかもしれない」


 ルーカスがそう言うと、エミリーは悪戯っぽい笑みでルーカスの腕を取っていた。


「あら? あたしちゃんとあなたの事愛してるつもりなのに、伝わってないのかしら?」

「いや、そういうわけじゃないさ――」

「じゃあどういうわけなのかな?」

「いや、うーん……すまない、俺の器が小さいんだよな」


 まあまあ、これ以上は夫婦の事なんでお任せして――と。


「まあまあ、全然いいぜ。むしろダメそうって思われてないとつまらんからな。ダメそうなやつが輝くのがいいんだよ! ジャイアントキリングだ!」

「あははっ。さすが蓮よね、そういうところ」

「エミリーが言っていた通りの変わり者みたいだな――だが謝りはするが、攻略は譲らないからな。こっちもプロゲーマーとして負けられないんだ」

「ああ。じゃないとつまらねーし! ガチで行こう、ガチで!」

「じゃあ仕方ないし、あたし帰るわね? 楽しかったわ、ありがとう蓮、みんな」


 エミリーはひらひらと手を振って、ルーカスと共に水上コテージを出て行こうとする。

 その背中に、あきらが声をかけていた。


「エミリーちゃん! 待って!」

「ん? どうしたの、あきら?」


 あきらはがばっと頭を下げる。


「あの――ごめんなさいっ! わたしエミリーちゃんに態度悪かったと思う……! だから――!」

「全然いいわよ? 次に組む時はもっと仲良くしてね? その方が楽しいから!」


 さっぱりとした明るい笑顔のエミリーだった。


「う、うん……! 楽しみにしてるね!」

「蓮をよろしくね? あきら。でも攻略は負けないから! 本気で勝つわ、あたしは!」

「わたしだって負けないから! 『レインボーガード』欲しいし!」


 あきらとエミリーは、お互いに笑顔を交わしていた。

 美しい友情の光景ってやつだな! たぶん!

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