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第194話 ハーデスローズ

「へぇ――大きいわね。どんな攻撃をしてくるのか楽しみじゃない! 行くわね!」


 勇ましいエミリーが真っ先にハーデスローズに突っ込んで行く。

 盾役(タンク)の本能というか、敵がいたらまず真っ先に自分がターゲットを取りに行くのがいい盾役(タンク)である。


「様子見に一発衝撃波入れるね!」

「オッケー!」


 あきらの言葉に走りながらエミリーが頷く。

 直後、エミリーの『名乗り』が発動。

 一拍置いて、あきらの放ったスカイフォールの衝撃波が着弾。


 あきらの攻撃。ハーデスローズに102のダメージ!


 うん、ダメージは普通に入るようだ。

 そしてエミリーの『名乗り』が入っているので、ターゲットはエミリーになっている。

 はずなのだが――


 ギュエエエ!


 ハーデスローズはダメージを貰うと大げさに身をくねらせ、バラの花の中央から何か丸いものを周囲に飛ばした。


 ハーデスローズは種子を飛ばした!

 ブラックローズが生み出された!

 ブラックローズが生み出された!

 ブラックローズが生み出された!

 ブラックローズが生み出された!

 ブラックローズが生み出された!

 ブラックローズが生み出された!


 うぉ何か出た!?

 巨大なハーデスローズ本体を小さくしたような、黒いバラが生まれた。

 それが茎の部分を足のようにモゾモゾ動かして――一斉にあきらに迫った!


「え!? こっち!?」


 あきらが驚く。確かにタゲはエミリーに行ったはずだ。俺にも意外だった。

 そして群がって来たブラックローズ軍団は、一斉に花から黒い霧を吹き出した。


 ブラックローズのブラックミストが発動。あきらに333のダメージ!

 ブラックローズのブラックミストが発動。あきらに333のダメージ!

 ブラックローズのブラックミストが発動。あきらに333のダメージ!

 ブラックローズのブラックミストが発動。あきらに333のダメージ!

 ブラックローズのブラックミストが発動。あきらに333のダメージ!

 ブラックローズのブラックミストが発動。あきらに333のダメージ!

 あきらは力尽きた……


 ブラックローズ大量発生からの一斉ブラックミスト噴射で、あきらが撃沈した!


「うげっ!? マジか!?」

「しくしく――みんなぁ――ごめーん……!」


 浴衣姿のままぱったりと倒れるあきら。

 こいつはまずいぜ――! いきなりマイベストフレンドが退場したぞ!


「どうなってるですし! タゲはエミりんが取ってたのに!」

「きっとカウンターだわ!」


 エミリーがそう分析する。

 つまり、ハーデスローズが自分のターゲットの相手に能動的に仕掛ける攻撃ではなく、仕掛けられた攻撃に対して反撃を飛ばしたに過ぎないという事だ。

 ヤツのターゲットをエミリーが持っているのは間違いない。

 なのに敵のターゲットがあきらだったという事は、あきらのスカイフォールの衝撃波に対するカウンターがブラックローズ大変召喚だったという事。

 カウンターでそんな技を使って来るとは、これはいい初見殺しだ――!

 現に引っかかって為す術なしだったからな――

 エミリーが『名乗り』を使った直後でなければ、あきらに群がるブラックローズのターゲットを持って行けたのだが……あのタイミングは『名乗り』の再使用時間(リキャスト)待ち状態で手が出せなかったのだ。

 やはりどうも、あきらとエミリーの行動は上手く噛み合ってくれない。

 それがこんな所でも出たか――!


「とりあえず、本体には触れずにこいつらを倒しましょ!」

「ああそうしよう!」


 本体に手を出したら、またカウンターで種子を飛ばしてブラックローズ大量発生になってしまうからな。

 まずは安全確保して、カウンターの条件を見極めないと――

 スカイフォールの衝撃波は魔法属性だから、魔法攻撃でああなるのか?

 ならばまずは、物理攻撃でカウンターが来るか調べてみたい。


 ここでエミリーが再び『名乗り』を使用。

 ブラックローズ六体のターゲットを取った。

 そしてエミリーに盾役(タンク)を任せつつ、ブラックローズを一体一体処理して行く。強さ的には『アーズワース海底遺跡群』の一般ザコモンスターと同じくらいか。


 ただし、出現と同時にブラックミストを吐いて来るのが厄介だな。

 あの集中攻撃を貰うと、HPが高いジョブでないとあきらのように即死してしまう。

 エミリーの重騎士や、馬鹿みたいにVIT(耐久)極振りのロマン砲なら耐えきれるのだが――

 ブラックミスト自体は恐らく魔法属性の攻撃なので、魔法耐性を上げればもっとダメージは減らせそうには見える。

 いずれにせよカウンター種子飛ばしからのブラックミスト大量放射が待っている状況では、エミリーの『名乗り』が使用可能な状態でないと攻撃を加えるのは危険だ。

 俺もHPだけなら素で耐えきれそうなものだが、奥義と同時にほぼHPは空になっているので、やはりエミリーにブラックローズのタゲを取って貰わないとすぐ死ぬだろう。


「蓮! 次は物理攻撃を試す!?」


 ブラックローズに攻撃を加えつつ、エミリーが言う。

 さすがエミリーは俺と似たようなことを考えているな。


「ああそうしよう!」

「蓮の奥義を撃っておく!? 奥義ならカウンターなしとかあるかも!」

「了解! それで行く!」


 打ち合わせつつ、俺達はブラックローズの数を減らしていく。

 俺も『エレメンタルサークル』からの追加攻撃を使って削りに参加する。

 今回のサークルの色は黄色。土属性だった。


 そうやって削っている間、ハーデスローズは何もしてこなかった。

 残りのブラックローズは一体。

 これは――カウンターで種子飛ばしだけをする機械って感じか?

 カウンターオンリーのボスもたまにRPGにはいるよな。


 なんて思っていると――


 ハーデスローズは種子を飛ばした!

 ブラックローズが生み出された!

 ブラックローズが生み出された!

 ブラックローズが生み出された!

 ブラックローズが生み出された!

 ブラックローズが生み出された!

 ブラックローズが生み出された!


 ちょ――!? 攻撃してないのに種子を吐くなよ!

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