表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

193/256

第192話 あきらとエミリー

 早朝の水上コテージで――

 俺とエミリーは、難易度の上昇した『アーズワース海底遺跡群』のB51F以降の攻略について検討していた。


「うーん――今の所、出現するゲート解放条件について法則性は見られねーなぁ……」


 どの層でどの指令が出たかは完全に記録してあるのだが、そこに法則性は今の所見られなかった。

 『空の裂け目』でゴールデンバニーを乱獲した時みたいな、分かりやすいフラグが見えれば楽だったのだが――

 ちなみにゴールデンバニー乱獲方法は設定ミスだったらしく、後で修正されていた。

 まあ使いたいだけ使わせてもらったので、別に構わないが。


「そうねえ。多分、B51F以降は通常の『転移石』じゃなくて『上級転移石』や『超級転移石』で進むのが王道なんでしょうね。そのためにわざわざ『転移石』が複数種類あるのね」

「まぁそうなんだろうな――『上級転移石』は『転移石』の倍でタイムリミットが一時間になるから、進むべき階層も倍の10層になる感じかな」

「恐らくそんな所よね。『上級転移石』の入手先は限られているから、各パーティーの進行速度は鈍くなるわね、きっと」

「ああ。屋台のミニゲームか、『アーズワース海底遺跡群』でとったアイテムとの交換だよな」

「ええ。屋台のミニゲームはハイスコアを出さなきゃならないし、貰える個数も一ゲームあたり一人一つ限定でしょ? 入手のハードルは結構高いわ。しかも一日に一個しか取れないし」

「けど、無いよりあった方が全然いいわな。俺とエミリーは全屋台で『上級転移石』は取ろうぜ。一日一個ずつな」

「そうね。まああたしと蓮ならやれるでしょ!」

「おう! で、それはそれとして、後の入手先はダンジョンに潜って交換アイテムと引き換えか――」

「『上級転移石』の交換アイテムを探すために『転移石』でダンジョンに潜るって事が増えそうね」

「実際、屋台でハイスコア出せない攻略班はそうするしかないよなー。意外と重要な意味を持つよなあ、屋台」

「そうね。『上級転移石』を取るためにダンジョンに潜るなんてタイムロスだもの。別口の供給ですべて賄えればそれが早いわ」

「問題はダンジョンが何層まであるかだよな……」

「そうよねー。そこは分からないから取れた分だけ『上級転移石』を突っ込むしかないんじゃない?」

「……それか、ただの『転移石』で10層ぶち抜けるくらい攻略スピードを上げるかだよなー」

「今のあたし達の構成と装備じゃあ、良くても7~8層が限度じゃないかしら? かなりゲート解放条件に恵まれたとしてもね」

「今日からあきらが帰って来てくれるから、もうちょっと火力は上げられるはずだ。なんせあの人攻撃しねーからな」


 博愛主義者でベジタリアンだから、敵に攻撃しないらしい。

 どうやってレベル上げたんだというのが謎だが、まあ誰かのPTに寄生して経験値を頂いたんだろうな。

 あの人を寄生させてくれるPTがいる事が驚きだが……


「……まあそれが竜太郎のプレイスタイルだものね。何のロールプレイかは知らないけど、そういう楽しみ方もまたゲームだわ」

「んー何のロールプレイだろうな……はははは」


 露出狂のロールプレイに決まっているのだが、そんな事をわざわざエミリーに言うのも憚られるのでお茶を濁しておいた。


「あたしにはできないから、あの自由さにはちょっと憧れるわね。勿論あの格好を真似したいわけじゃないけど」

「あープロとして金貰ってる以上、それなりに結果がいるって事だよな?」

「うん、そうよね。トッププレイヤーの一角にはなっておかないとまずいわよね。あたし自身の名誉のためにもね」

「それはそれで大変そうだなぁ」

「何でもそうだろうけど、プロとして仕事にしてしまうと、それなりの大変さはあると思うわよ? だけど自分で選んだことだし、充実もしてるわ。この異世界サーマルはバカンスだから、羽根を伸ばさせて貰ってるけどね」


 と、エミリーはぐっと腕を上に持ち上げて背伸びをする。

 それからこてんと、俺に背を預けてもたれかかってくる。


「蓮も一緒のチームでプロゲーマーやってくれたら頼もしいんだけどなー。本気で考えておいてね。あたしチームに蓮を紹介できるから」

「いやムリだ。俺英語出来ねえし」

「大丈夫よ。ウチは日本語出来るし――」


 などと他愛もない会話をしているところに――


「おはよ~う♪」


 猫なで声と共に、制服姿のあきらが俺達のいるソファーの対面に座った。

 声と笑顔に反して荒っぽく腰掛けたため、ぼすっ! と大きな音がしていた。

 よく沈むソファーだなー……わーい……


「お、おう。おはようあきら」

「あら、おはようあきら! 久しぶりね!」

「うん、久しぶりだね。今日はよろしくね? 楽しみにしてたの」


 ゴゴゴゴゴゴゴ……!


 あ、やべえぇまた闇のオーラが見える!

 しかしエミリーは闇のオーラの無効化スキルを持っているので、平然としていた。


「あのね、あきら。あたしと蓮に嫉妬する必要なんてないわよ? あたし達幼馴染だからこうなだけなんだから。それに――」

「何言ってるのかな? わたしそんなこと思ってないよ? 平気だから気にしないで?」


 にこにこ笑顔なのだが、頑として聞く耳は持たないという姿勢。

 ……うーむしかし、エミリーとあきらの相性が良くなさそうなのは、俺としてはちょっと悲しいものがあるなあ。

 これから『アーズワース海底遺跡群』に攻略に行くんだが大丈夫かこれは……?

面白い(面白そう)と感じて頂けたら、↓↓の『評価欄』から評価をしていただけると、とても嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ