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第188話 デスチャリオット

 それからB7F、B8F、B9Fと特に問題なくクリア!

 で、B10F。前と同じノリならここクリアすればセーブがあるか?

 5層刻みでセーブポイントがある説だな。

 で、このB10Fだが今までの階層とは少し様相が違う。

 フロアの材質は今までの通りの石っぽいものだが、今度は全体が円柱状の巨大な広間だった。

 俺達がいる場所は壁にぐるりと囲まれて、その上部には無人の観客席が無数に並んでいる。

 雪乃先輩の所の闘技場――のような感じだ。ただし無人で何の活気も無く、妙な物寂しさに包まれている。


 ピンポーン。

 ゲート解放条件、ボスモンスターを倒せ!


 おお!? それは聞いた事ない指令だな……!

 そして、俺達の向こう正面――の奥の壁にある鉄格子が重い音を立てて開いて行く。

 奥からかなり巨大な、いかにもボスサイズのモンスターのシルエットが見えた。

 ギャリギャリギャリ――と、何か金属が軋む音が大きく響く。

 その姿がはっきり見えてくると、何の音か分かった。

 モンスターの下半身と化している、禍々しいトゲの生えた戦車の車輪だ。それが回ると軋んだ音を立てるのである。


 デスチャリオット レベル105 王冠アイコン(レアモンスター)


 簡単に言うと、上半身は黒ローブにホラー映画のスク〇ーム的なお化けフェイス。

 それが巨大な鎌を携えているのだが、腕と腕はトゲ付きのチェーンで結ばれていた。

 ローブは何か呪詛のような血文字が書かれており、更にその周りに怨霊がたむろしているような恐ろしげなエフェクトを発していた。

 そして下半身が金属トゲトゲスパイク付きの車だった。

 ローブの裾から車輪と、車体を牽いているであろう首の長い竜の頭が二つ覗いている。

 竜の口には炎がチロチロしていて、いかにも火を噴きそうだ。

 中々凄い見た目をしてるなーこいつ。

 黒ローブで隠されて見えないのだが、上半身と下半身の接合部分はどうなってるんだ?

 実は中でセグウェイ的なものに乗っているスタイルだったら笑うが。

 是非ともローブの中に潜り込んでみたいものだが――まあ、やっても真っ暗で何も見えない系かもな。


「なかなかロックな感じのボスね! 気に入ったわ!」


 エミリーが目を輝かせていた。

 うんうん昔から少々ゲテモノ趣味はあったよな、エミリーは。

 ジェイ〇ン的なのが主役のアクションゲームとか大好きだったもんな。


「ロック……って言うかちょっとキモイですし、あたしは苦手~」

「そうね――どうせなら可愛い方がいいもの」


 矢野さんと前田さんは女の子らしい反応と言うか、まあそうだろうなと。


「だが待って欲しい――重要なのは見た目ではなく中身だよ。恐れる事はない」


 と、もっともらしい事を言う人がいるが――どの口が言っているのか。

 この人の見た目は中身の人格を疑うレベルだし、見た目の時点で恐ろしいのでまるっきり説得力がない。

 誰か突っ込んでやってくれ! 俺は嫌だ! 触りたくないからな!


「その見た目でそれを言っても、説得力が皆無なのだが――今の君の姿を赤羽竜三が見たら泣くぞ、竜太郎君よ」


 心底呆れ返った目をしたシズクさんがそうツッコんだ。


「フッ……だが待って欲しい! どうかご内密に! これはあくまでゲームの中の話でありまして、現実の姿とはかけ離れており、単なる余興でございますので! どうかご内密に!」


 何かちょっと焦ってるのか? この人も。

 親か何かのリアル知り合いかと思って、ヤバいと感じたんだろうか。

 こんな事やってたら遅かれ早かれいずれバレると思うが――どうなんだ?


「シズクさん、赤羽竜三って人は誰なんですか?」

「この者の祖父でな。代議士などをやっている」

「……まあ見たら泣いてもおかしくないでしょうね」

「ああ全くだ」


 俺とシズクさんは頷き合った。


「みんな! あいつ、こっちに来てるわよ!」


 ギャリギャリギャリ――!


 車輪を軋ませて突っ込んで来たヤツに、エミリーは『名乗り』を叩き込んでターゲットをキープ!

 さすがエミリーは反応が早いな。


「よし矢野さんシズクさんはさっきのミミックの時と同じ感じで! 前田さんはさすがに後方でサポート頼む!」

「オッケーですし!」

「いいだろう――!」

「わかったわ!」


 で、まあお兄様に特に言う事はない。

 この人はボスだろうが雑魚だろうがやる事一緒だろうし――

 何をしているかと言うと、まあソードダンサーなので回復役ではあるのだが……

 本人が昔、自分はバリバリのリベラリストでベジタリアンなので殺生は好まないとか言っていたが、本当にそれを貫こうとするので、敵には一切攻撃しないのだ。

 ソードダンサーのソードの部分を完全に捨てているが、本人がいいならいいんだろう。


 回復魔法を『皆伝の証<回復魔法>』のタレントで使えるようにし、ダンスと魔法の両方での回復行為を可能としている。

 そしてタレントの『タクティカルマジック』で、MPを消費すればAP(アーツポイント)が貯まるようにしつつ、『タクティカルアーツ』で逆にAP(アーツポイント)を消費すればMPが溜まるようにもしている。

 更に『闘神の息吹』でAP(アーツポイント)が自然回復、『魔神の息吹』でMPが自然回復。

 最後に手にしたファンシーな魔女っ娘ステッキのような代物は、攻撃力は皆無だが持っているだけで『タクティカルマジック』及び『タクティカルアーツ』の変換効率を高めてくれる。まあ殴ろうとしても、ソードダンサーは杖の適性は無いのでスカスカになる。

 つまりタレント枠は『皆伝の証<回復魔法>』、『タクティカルマジック』、『タクティカルアーツ』、『闘神の息吹』、『魔神の息吹』になる。


 すなわち、回復超特化である。

 何処に行ってもやる事は適宜回復を飛ばす事のみ。

 だから指示もいらないというわけだ。

 それをいいことに、俺達の視界の中で見えるように見えるように変なポーズ取って魔法唱えたり、意味もなく敵の周りでダンスし始めたりするのがうざったいのだが、まあそれ以外は回復行動のみ行うNPC的なので、面倒が無くていいと言えばいい。


「だが待って欲しい! 魔物よ、わが舞いをその目に焼き付けるがよい!」


 その言葉通りエミリーの後ろ、デスチャリオットに見えるように陣取り、変なポーズを決めていた。

 うーん。キモイが回復は的確にやってくれるのでまあ放っておこう。

 さぁデスチャリオットを倒すべし!

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