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第183話 直結厨!?

 そして、翌日――


「ふあぁぁぁ……」


 キラキラしたパーティー会場の中で、わたしは欠伸をしていた。

 昨日は結構夜更かしをしてしまったから、早朝から移動してのパーティ出席は結構眠たい。

 日は政財界の人達が、まだ社会に出る前の子弟を連れて集まるという趣旨のパーティーだから、わたしも出ないわけには行かない。

 これも前々から言われていた家のお仕事みたいなものだ。

 一緒に来るはずだったお爺ちゃんは怪我で入院になってしまったので、今日はわたしがその代わりもしておかないといけない。


「そんな大きな欠伸をなさっては、はしたないですわよ、あきらさん」

「あ、希美さん。ごめんなさい、気を付けます」


 今日から四日間似たような社交界のパーティーというやつに出なければいけないけれど――

 今回は全部希美さんも一緒だから、まだ多少は気が楽だ。


「これでも飲んで、目をお覚ましになるとよろしいですわ」


 希美さんがアイスコーヒーの入ったグラスをくれた。

 わたしはそれに口を付けたけれど――苦かった。

 ちょっと顔をしかめてしまう。


「どうなさいましたの? お疲れですか?」

「い、いいえ。大丈夫です――」


 怪我したお爺ちゃんのお見舞いに行って忙しかった夜に、ちょっとのつもりが結構長くゲームをやってしまったせいだ。

 浴衣を着て縁日の屋台に行って皆でいろんなゲームをはしごをしたのは楽しかったけれど――

 その前の段階の事が気になっていた。


「……」


 蓮くんたちは、今日は昨日の最後に『超級転移石』を譲ってくれようとしたシズクさんと『アーズワース海底遺跡群』に行く予定だそうだ。

 きっとあのエミリーちゃんも一緒に――

 ココールくんが当ててくれた水上コテージで一緒にいた二人は仲が良さそうだった。

 幼馴染だからそういうものかも知れないけど――やっぱりモヤモヤする。

 あの後すぐエミリーちゃんは帰って、琴美ちゃんや優奈ちゃんが来てみんなでお祭りに行ったから、ニコニコしていられたけど――

 あのまま三人だったらわたし、どんな顔をしていたんだろう。自分でもちょっと分からない。

 正直――幼馴染属性持ちの新キャラなんて聞いてない、ずるい。

 蓮くんってゲームバカだから、あんまり彼女とかそういうのに興味示さないのかと思ってたけど――

 もしかしたらそれはわたしの勘違いで、単にエミリーちゃんの事が好きだっただけなのかも……とか。

 そんな考えが浮かんで来る。


「……!」


 わたしは頭をぶんぶんと振って、イヤな考えを頭から追い出す。

 だけどまたすぐ――同じ光景が頭に浮かんでくる。

 また頭を振って――でもすぐに復活して――ああもう!

 今わたし、物凄く気が焦っているんだと思う。

 こんな所でこんなことしてていいのかって、凄く思っている。

 何をどうすればいいのかは分からないけど――何とかしなきゃって思えて仕方がない。


 そんな時――突然首筋に冷たいものがぺたりと触れた。

 希美さんが持っていた飲み物のグラスを、わたしの首筋に触れさせたのだ。

 氷入りなので、凄く冷たくて驚いてしまった。


「ひゃっ!?」

「何があったのか、仰いなさい。こ……これでもわたくしはあなたのゆ――友人ですのよ?」

「は、はぁ……? ええと、でも――結構イヤな話というか、どうになるものでも――」

「いいから早くなさい! 相談には乗って差し上げます!」


 と、強く促されてわたしは口を割ってしまう。

 わたし自身、どう処理していいか分からなかったから――

 本当は聞いて欲しかったのかも知れない。


「……なるほど幼馴染ですか――高代君にそんなお相手がいましたのね。意外ですわ」

「ええ。何かどうしても、気になっちゃって――今日もわたしがいない所であんな風に仲良くしてるんだと思うと、ちょっとイヤかもって――」

「それは自然な事でしょうね。誰だって自分の好きな人が他人に取られたと思えば、嫌な気持ちになりますわ」

「だけど蓮くんたちは楽しんでゲームやってるだけなのに――こういう気持ちを持ち込んじゃダメって、分ってはいるんですけど……」

「あら? 何を言ってますの? あなたは元々そういう人でしょう? いわゆる恋愛直結厨と呼ばれるスタイルですわね」

「ええぇぇぇっ!? ち、違いますよお! わたしはそんなんじゃ……!」

「ですが、高代君の事を世成学園に誘ったのはあなたでしょう? あなたの事を男性と思い込んでいる高代君に本当のあなたを知って貰いたくて、そうしたのではなくて?」

「そ、それもちょっとはありますけどぉ――でも純粋に蓮くんともっとゲームしたかったっていうか……人生を楽しく生きたかっただけで、そんなやましい気持ちじゃあ――」

「あなたがそう思っていただけでしょう? ですが、実際エミリーさんが現れた事により、自分で思っていたよりやましい気持ちが強かったのが露呈したのですわ」

「……!?」

「だって単に楽しくゲームがしたいだけなら、高代君に恋人がいようがゲームフレンドとして楽しめますわよね?」

「……うううぅぅそうかも――」

「お認めなさいな。あなたは直結厨です。何かを変えるには、まずは自分を知ることが大事だと思いますわ」

「は、はい……」


 そうか――わたし、そうなんだ……確かに客観的に見たらそうかも――?

 うううう――いざ具体的に言葉を当てはめられると凄い恥ずかしいよ……!


「まあとりあえずの対策として、高代君とエミリーさんがおかしな事にならないように手は打って差し上げますわ」

「で、出来るんですかそんな事?」

「ええ大丈夫です。ですから安心なさっていいですわ」


 希美さんは妙に自信満々だった。


「あ、ありがとうございます……?」

「ですが、根本的な対応ではありませんわ。根本的な対応はあなたにしかできません」

「わたし? どうするんですか?」

「そんなの、決まっていますわ。あなたと高代君がお付き合いなさればよろしいのです。直結厨なら直結厨らしく告白なさいませ。応援しますわ」

「ええええええっ!? で、でもわたしの場合は家とかややこしいから……! 蓮くんに迷惑かけちゃうし――」

「そんなもの、関係ありませんわ。自分の気持ちを貫くのが一番大切な事です。わたくしは世成学園でそれを学びました。我慢は体に毒ですのよ?」

「で、でも実際蓮くんがどう思ってるか分からないし――!」

「では高代君がエミリーさんとお付き合いされても良いと?」

「そ、それはイヤですけど……で、でもわたし、まだ今まで通りで良かったのに……!」

「もはや状況がそれを許さないという事ですわ。押すか引くか、二つに一つですわね。よく考えなさいませ」

「……」


 希美さんの言葉に、わたしは何も返せなかった。

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