第181話 上級転移石
レースゲームの屋台もさっきのガンシューティングの屋台と同じく大盛況で、かなりの人数が集まっていた。
こちらは普通にゲーセンにあるようなレースゲームの筐体が並んでいる。
だが普通のものよりスクリーンが大型で、かなり迫力がある感じだ。
画面を見る感じ、障害物の多い街中で走る系のゲームのようだ。
「さぁ本日の設定はクリアタイム3分以内で『転移石』、2分半以内で『上級転移石』をプレゼントだよ!」
ここも屋台のおっちゃんNPCが威勢よく声を上げている。
うん。やはりここでも『転移石』が貰えるんだな。
「じゃあ私がやるわね!」
「あ、待った前田さん。俺が偵察用として先にやるぜ。それ見て覚えて『上級転移石』を狙ってくれ!」
俺が先にやって一回見せれば、前田さんなら『上級転移石』を取れるはず。
「なるほど。ええわかったわ」
「よし、おっちゃん! 俺がやる! やらせてくれ!」
「んー? 兄ちゃんは今日はもう『転移石』取ってるからプレゼントはやれんが、それでもいいかい?」
「ん……? そういう事かよ、全ゲームで『転移石』は一日一個か」
俺はさっきガンシューティングで取ったからな。
ゲームが別になればくれると思っていたが、そうじゃないって事か。
まあ、前田さんに見せるためだし問題は無いだろう。
「分かった、じゃあやらせてくれ!」
「あいよ!」
と言うわけでゲームスタート!
俺は日本のオフィス街のようなエリアを爆走!
飛び出してくる別の車やら、上から降って来る看板とか窓ガラスのような落下物を避けつつ、ゴールに向かって行き――
「おっ! クリアタイムは2分50秒だね! 『転移石』はもうあげられないけど、いいタイムだぜ!」
と、おっちゃんが俺を褒めてくれた。
「おー蓮くん、どのゲームでも『転移石』取れるねー。これだと」
「『上級転移石』を取りたいけどな、まあ今日の所は前田さんが取ってくれるはず!」
「……ええ任せて! あなたの犠牲は無駄にしないわ!」
「いやそれ死んだ奴に言うセリフですし。死んでないですし」
「ふふっ。ちょっと言ってみたかっただけよ!」
やっぱりこういう系になると普段よりテンションが上がるなー前田さん。
普段は言わないような冗談まで言うしな。
「じゃあおじさん、次は私がやります!」
「はいはい。頑張ってね~! ではスタート!」
そして前田さんのゲームがスタートして――
「……! ステージが違うわね……!」
「うわ変わりやがったか!」
今度は京都っぽい寺社仏閣の並ぶ街を爆走するエリアだった。
ひらひらと舞い散る桜が綺麗なのだが――それが視界をある程度遮るため、コースの難易度を上げていた。
「えぇ!? ここさっきより難しそうじゃない!?」
「あー! 運悪いですし!」
ぶーぶーと文句を言うあきらと矢野さんだった。
「大丈夫よ――飛空艇のニトロほどのスピードは無いから、簡単についていけるわ! それに、初見の面の方が燃えるし!」
「だったら俺の偵察意味ない……って言うかうめぇ!?」
「おおおおおおーーー!? すごい!」
「何かとんでもない動きしてるですし!」
明らかにケタ違いの速さで走り終えた前田さんのタイムは――
「1分55秒! に、2分を切った子は今までで初めてだよ――! おめでとう! 『上級転移石』をどうぞ!」
「ありがとうございます!」
「ナイスナイス! さすが前田さんだな!」
「さすが琴美ちゃんだねー!」
「いいぞことみー! ナイスですし!」
ギャラリーからもぱちぱちと拍手が起こっていた。
『上級転移石』を受け取った前田さんも、えっへんと鼻が高そうである。
「だけど注意してくれよ、『上級転移石』を一度受け取るとそのゲームでは次から『上級転移石』は貰えなくなる。次からは今のタイムでも普通の『転移石』だからな」
むう……! 前田さんに『上級転移石』量産してもらおうと思ったのだが!
となると『上級転移石』は貴重だから大事に使わないとな――
いざって時に投入しないとだ。
まあ前田さんには、毎日確定で『転移石』を取って貰えればいいか――
この腕なら、まあ『転移石』を取り逃すことは無いだろう。
ともあれ、レースゲームには無事勝利したので――
「よし、次はわたしの番だから! 格ゲーいこうよ格ゲー!」
と言うわけで俺達はあきらのお目当ての屋台を探して――
少し歩いて、それっぽいゲームの屋台に辿り着いた。
「これは――格ゲーと言えば格ゲーか……?」
大きなモニターが一つあり、赤コーナーと青コーナーを模した左右にプレイヤーの操作台がある。操作台と言うにはコントローラーらしきものが無いのだが、これはこの台の上に乗ったプレイヤーの動きをトレースするらしく、その上に乗って攻撃動作を取る事で、モニター上のロボットがパンチやキックを繰り出したりする。
画面は3Dロボ格闘風のゲームの画面だが、これは操作がリアルファイト寄りだよな。
一言で片づけるならモ〇ルトレースシステム的な何かだ――!
大がかりなゲームなので、対戦台はひとつだけ。そこでプレイヤー同士が戦っている最中で、ギャラリーはそれを歓声を上げて楽しんでいた。
「おおおお~! これはロボ格闘だね! 面白そう!」
「やるのか? これモーショントレース式みたいだから、あきらがやりたい格ゲーとはちょっと違うんじゃ――?」
「でもわたし、こう見えもリアル護身術とか習わされてるからね? 結構自信あるよ!」
と、あきらはやる気満々の様子だった。
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