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第174話 炎の化石

 ログに片岡が踏んだトラップの効果が表示される。


 静寂の呪法結界が発動! この階層では全ての魔法が封じられます。


「うわちゃ~! こんなのまであるのかよ!?」

「くっ――! 蓮たちは逃げて!」


 エミリーはガードを固めながらスライム達を別の部屋に誘導しようとするのだが――

 鈍足フィールドで引き離せないとなると、敵の攻撃をもろに受けてしまう。

 いくら何でも多勢に無勢。ゴリゴリHPを削られてやがて倒れる。


「あうっ! ご、ごめんね蓮――! こんなの聞いてなかったわ!」


 続いて片岡も倒れる。


「うげええぇぇぇっ!? こ、こうなったら盗むだけ盗んどくか!」


 片岡は、最後の力を振り絞ってアイテムを盗むのを試みていた。

 そして俺もサークルでMP捨てが出来ないので、上手くHP調整が出来ない――

 何とかガードを固めるが、流石に敵が多すぎて背中からも殴られる。

 満員電車で周りを人に囲まれて、ぎゅうぎゅうにされているような状態なのだ。

 奥義を撃とうにも『ターンオーバー』を組み込んでいるから、発動した瞬間に満タンのMPがHPになってしまい、敵を一撃で沈めるだけの火力にならない。


「ぐぬぬぬぬぬ――!」


 HP半分のイエローゾーン突破。三割以下のレッドゾーン突破。

 残り一割――だが――

 特に見せ場もなく俺も死んだ!


「ちくしょー……どうしようもなかったぜ――」


 何て事故だ、初回で即死とはな……俺は床とキスしながら唸る。


「まあ高代よ、何もなかったわけじゃねえぜ? 戦利品はあるさ」

「……?」

「まま、取りあえず戻ろうぜ――」

「ああ」

「分かったわ」

「コケー……」


 というわけで俺達は死に戻りの処理をしたが――

 復活ポイントは例の水上コテージだった。

 異世界サーマルにいる間は、ここがベースになるらしい。


「やれやれ酷い目に遭ったぜ……」

「ほんと初見殺しもいいとこだわ。メッセージを見る限りじゃ、そう頻繁には起きないみたいだけど――」

「いきなりそんなもの引き当てるなんて、運がいいやら悪いやらコケ~」

「まあまあ。さっきも言ったが、一応戦利品はあったぜ」


 と、片岡だけは満足気だった。


「ああ言ってたな? 何がだよ?」

「これだぜ。最後に盗んだら取れたわ」


 と、片岡は俺に赤い化石のようなアイテムを手渡して来た。


 蓮は『炎の化石』を真一から受け取った!


「ん!? おおこれ俺の新魔法の交換アイテムじゃねーか!」

「おう。まあお前にやるよ、あれで取れるなら結構他にも取れるだろうしな」

「おお悪いな、ありがとよ!」

「やるぅ! 意外に有能なのね、君って! 蓮のためにありがとう!」


 エミリーが自分の事のように喜んでくれた。


「いや、最後トラップ踏んでなきゃまだ粘れたかも知れねえからなあ……ミスった詫びって事にしといてくれ」

「よし、じゃあ気を取り直してもう一回行くか! 『炎の化石』も交換したいしな!」

「オッケー。じゃあ行きましょ! リベンジよ、このままじゃ引き下がれないもの!」

「コケ~! 行くコケ~!」


 と言うわけで俺達は再び『アーズワース海底遺跡群』の入り口に戻る事にした。

 着くとすぐに、景品の引き換えカウンターで『炎の化石』と紋章術師の新魔法『エレメンタルサークル』を引き替えてゲット! 使用して早速覚えた。


「っしゃあ! どれどれどんな効果だ……」


 エレメンタルサークル(消費MP30~∞ 再使用時間 0/10秒)

 <効果> 足を踏み入れた味方の攻撃に精霊の加護を与える紋章陣を設置

      紋章術師専用


 お? 足を踏み入れた味方に――と書かれているという事は、これは味方の強化効果なのか!? おおおー! ついに紋章術師にも強化系の魔法が来たか!

 これはあれだな、いわゆるテコ入れというやつですな。

 相変わらず世間ではボンクラーズの王扱いされてるのを救済してくれるのか。

 俺もこれまでそこそこ紋章術師で結果を残してると思うが――

 片岡も言っていたが、まだまだ使い勝手が悪過ぎるのか紋章術師のジョブ人口は増えて行っていない。

 銭投げにも程がある攻撃スタイルだし、戦法が周りに依存し過ぎると言うか――

 ソードダンサーが一緒に居てくれないと真の力が発揮できないからな。

 ソロだと素材狩りのスライムにも逃走するレベルだし。

 この『エレメンタルサークル』で使い勝手が良くなってくれるといいな!


「足を踏み入れた味方に精霊の加護を与える――か。具体的にどんな効果なのかしら」


 俺が開いたシステムメニューを覗き込みつつ、エミリーが言う。


「何にせよ使ってみないと始まらん、さっそく検証を兼ねてもう一回突入しようぜ!」

「そうね、行きましょ!」


 エミリーが俺の腕に抱き着いて引っ張る。

 振る舞いがアメリカンで無駄に距離が近いから、無駄にドキッとしてしまうな……

 ジョブが重騎士だけにバトルエリアだとガチガチのアーマー装備だが、普段はソードダンサー装備ほどでは無いが多少肌の露出が多い服だ。

 腕に抱き着かれると胸の感触が気になる――無駄にリアルだからな、このゲームは。


「あれえ? さっき来たばっかりだったのにまた来たんだ。早かったね♪」


 入口のアニメ声のライオンヘッドが、わざわざ言わなくてもいい事を言って来る。

 うるせーな言わせんなよ、速攻で死んだんだよ。


「ちょっと事故っただけだ! 次はやってやるからな!」

「うんうん頑張ってね♪ では、お客様をごあんなーい♪」


 さて再び目の前がぐわんと歪んで行き――

 また、正方形の石のブロックで作られた遺跡のようだが、今度は大きな広間のような場所に出た。


 ピンポーン。

 ゲート解放条件。全ての敵を倒せ!


 そうメッセージが流れる。

 当然だが先程の様にいきなりモンスター大発生というわけではない。

 遠目に何体かは見えるが――

 ここの敵を殲滅すれば、次の層へのゲートが開くわけだ。


「よしよしこういうのだよ! 早速倒していこうぜ!」


 倒しつつ実戦で『エレメンタルサークル』の性能も検証するぞ!

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