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第172話 攻略本に載りたい

「いらっしゃいませ~♪ アーズワース海底遺跡群への突入用アイテム『転移石』のご購入希望の皆様~最後尾はこちらでーす! 順にお並び下さ~い。なお途中で在庫が切れる場合もございますので、その場合はご容赦くださ~い!」


 と、行列の整理をしているNPCのお姉さんが笑顔で呼びかけていた。

 こちらもケモミミだった。異世界サーマルのスタッフのNPCは皆こうなんだな。

 開発者の趣味か? まあ俺も嫌いではないが。


「『転移石』の販売価格は一つ5万ミラとなっております~♪ お得な十個セットは何と45万ミラでお求めいただけまーす♪ なお、突入可能な人数は1PT6名様まで。一度の突入での制限時間は30分となっておりまーす。」


 む……結構するな。まあ、中で取れるアイテムははいいものと交換できるわけだし、そのくらいの入場料は取られるか――

 まあ宝探しのためのチケットってとこか。タダで遊べる夢の国なんてないもんな。

 しかし結構かかるだけに、資金繰りも考えて攻略しないとだな。


「コケー。結構金がかかるコケなー。蓮、お金は大丈夫コケか?」

「うーむ。あんま無いけどな。まあ、50万ミラくらいはあるぜ」


 ギルドショップの経営は相変わらず順調ではあるので、そこそこの蓄えはあった。

 とはいえ最近ロマン砲仕様の紋章術師のランニングコストがどんどん増しているので、

50万ミラを溶かそうと思えば簡単に溶かせる。


「コケー。じゃあそれ使うと、殆ど無くなるコケかなー……奥義に使う素材を買えなくなるコケ」

「大丈夫だ素材のストック自体はそこそこあるし、十個セット買うぞ!」

「ええぇぇぇ? 後で困っても、おいら知らんコケよ~?」

「いいんだよ、ハイリスクハイリターンを狙おうぜ! うまく中でアイテムが取れりゃ、黒字もあり得るんだからな!」

「大丈夫コケかな~……」

「あ、蓮。あたしも半分出すわよ!」

「お!? いいのか?」

「もちろんよ! 一緒に楽しみましょ!」


 エミリーのレベルは79でジョブは重騎士だ。

 レベルも俺に近いし、純正盾役(タンク)のこの重騎士とは組んだことがないので、新鮮でもある。

 出来ればボンクラーズ寄りのジョブの方が燃えると言えば燃えるのだが、そこは仕方がないだろう。

 昔は俺と似たような事をやっていたエミリーが、優遇ジョブにの中に入る重騎士をやっているのはちょっと驚きだが――まあそれを言っても仕方がない。

 ジョブなど関係なく、エミリーと久しぶりに一緒にゲームできるのは楽しい事だ。


「だけど蓮って相変わらずね? 紋章術師って一番弱いって言われてるのに、しっかりそれ選んでるんだもの――昔はよく一緒に、わざと弱いキャラ使ってゲームしたわね。弱い奴が輝く事こそロマン! とか言って――」

「……今でも言ってるコケー。むしろ言わない日はないくらいコケ~」

「……お前昔からそーなんだなぁ」


 と、ココールと片岡から呆れたような目で見られた。


「あはははっ! そうなんだ、やっぱり蓮はいいわね~。で、今はどんな風に紋章術師を使ってるの?」

「ああそれは――ずばり一撃大ダメージ特化のロマン砲だ!」

「へぇ……! どれどれ? どんな風にやるの?」

「ああそれはな――」


 と、目を輝かせるエミリーに、俺はロマン砲仕様について色々と解説した。

 これから一緒に攻略に臨むわけだし、こっちのスタイルを知って貰うのに丁度いい。

 俺の場合、ジョブのテンプレート的な役割とまるで違う事をするからな。

 言っておかないと戸惑うだろう。


「なるほど――本当に一撃大ダメージ特化ね……! 清々しい位それしかないわ! そんなだと、ソロでちょっと素材狩りするのも苦労しそうよね――狩るには狩れても壊す武器代で大赤字になるし、そうしないようにすれば、雑魚モンスターにも負けるわ!」

「――何も言い返す事がないぜ。ついさっき、素材狩りでスライムが狩れずに逃亡した所だからな!」

「あはははは! そうよね、そうなるわよね……! でもジョブを変える気なんてないんでしょ? このままロマンに生きるのよね?」

「ああ! 俺が紋章術師を引退するとしたら、世間一般に紋章術師が見直されて、ボンクラーズじゃなくなった時だな! それまではロマンを追い求めるのみだな!」

「うんうん。蓮はそうじゃないと面白くないわよね!」

「おう! あ、そういや片岡」

「何だ?」

「お前のギルドで攻略本発行してるだろ? ロマン砲仕様の紋章術師の事は載らねーのかよ? 載せてくれたら、紋章術師の人気も出ると思うんだが……」

「いや俺にそんな権限ねえしなあ――だけど普段の使い勝手が悪すぎて、人気にはならんと思うが――? 別に俺もすげえとは思うが真似したくねえし」

「分かんねーだろ。取り合えず試してみようって奴は増えるだろうし、宣伝は重要だ」

「いやいや、いいトコだけ載せて騙したら詐欺だしな。それでこっちが文句言われるんだぞ? もっと手軽に使えるようにしてくれねーと、安心しておススメできねえよ。まあ一

応ギルドの上の方に言っといてはやるけど、期待はすんなよ」

「くっ……まあ頼むぜ。しかしまだまだ世間の評価は追いついてないって事か――」

「まあ、ここの攻略で大活躍すればそれが評判にもなるんじゃない?」

「そうか――そうだな、紋章術師の力を見せてやるぜ!」


 そんな風に盛り上がりつつ俺達は行列が進むのを待った。

 結構な時間がかかったが、無事『転移石』の十個セットを買えた。

 俺77、エミリー79、片岡78、ココールは103だったのでレベル合わせのために片岡に『レベルアジャスト』を使ってもらい、レベル77に統一した。

 さぁ夏休みの宿題こと『アーズワース海底遺跡群』の探索開始だ――!

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