第168話 空から女の子が!
「コケーッ! 何人たりともおいらの前は泳がせないコケーッ!」
ココールが凄い勢いで水上コテージの周りを泳ぎ回っている。
「おーすげーなココール! はえええーーーっ!」
「きゅ~~! ちきんすごーい! はやーーい!」
デッキから見守る俺とリューはココールの見事な泳ぎに度肝を抜かれていた。
「こう見えてもコケ族は泳ぎが得意だからコケなー♪」
言ってまた水上コテージの周りを一周しに、俺達の視界から消えて行く。
「蓮も早く泳ごうコケ~!」
ココールの声だけが響いて来た。
俺達は水上コテージに到着すると、早速水遊びを始めていた。
片岡は希美様が遊ぶ時のためにこの島を調査するとか言って、遊ばずに探索に出かけたので、俺とココールとリューだけだが。
とりあえず片岡には、俺が欲しかった紋章術師の新魔法を見かけたら教えてくれと言っておいた。
異世界側で入手手段があるかも知れないからな。
「よっしゃ行くか! うおおおおーーーっ! 待てココール!」
俺も海に飛び込んだ! いやー、ゲームの中で泳げるとはな!
泳ぎは俺も苦手ではないし、追いついてやるぞ!
俺とココールは、暫く水上コテージの周りを泳ぎ回っていた。
しかしココールの泳ぎはとんでもなく早く、俺は追いつけなかった。
「ぜーっ。ぜーっ! ダメだとんでもねーなココールのやつ……!」
これはとても追いつけない――!
「れん~れん~! あれー!」
と、リューが俺に何かを指示した。
それはデッキの脇に係留されたジェットスキーだ。
ファンタジー風のアンティークな感じにアレンジされているが、あれってそうだよな。
これはあれだな――前田さんが喜びそうな……
とにかくこれに乗ってココールを追うぜ!
「よっしゃ待てココーーール!」
俺はジェットスキーを走らせてココールを追った。
「コケーッ!? そりゃ反則だコケーッ!?」
流石にジェットスキーの方が早い。俺はすぐにココールに追いついていた。
「よっしゃ追いついたぞココール! 乗れよ、これで走ろうぜ!」
「コケーッ! 面白そうだコケなー!」
ココールがジェットスキーの後ろによじ登っている時――
「キャーーーっ!? デンジャラーースッ! ランナウェイ、プリーーーズッ!」
いきなり女の子の叫び声が――!?
しかしその姿は見えない――どこだ――!?
「スカーーーーイッ! ランナウェーーーーイッ!」
スカイ!? 空!?
「「!?」」
空から女の子が!? あれかよ、ラ〇ュタか!?
ばっしゃああああぁぁぁぁーーーーんっ!
盛大な音と水飛沫が上がり、落ちてきた女の子は水中にダイブした。
「コケーッ!? な、何事だコケーー!?」
「おい大丈夫か!?」
俺は水に沈んでがぼがぼ言っているその女の子を助けて引き上げた。
肩くらいまでの金髪をした、俺と同じくらいの年頃の女の子だった。
「うぅぅぅ……ソーリィ――サンキューベリマッチ――」
「!? え、英語――!?」
ああそうか、異世界サーマルは共用エリアなんだよな。
うちの学校は日本が本体だが、海外にも提携している分校のような存在がある。
ここには、そっちの生徒達もアクセスして入る事が出来るのだ。
恐らく、この子は海外の分校の生徒なのだろう。
しかし最近はゲームのために成績もアップ傾向だが、俺は英語が苦手だ。
どうしたもんか、ちょっと困るな――
しかしその女の子は、にこっと笑顔で言う。
「あ、大丈夫。あたし、日本語得意だから」
おお、親日家だった――!
しかしあれだな、この子どこかで見たような気が――するようなしないような。
「そりゃ助かる……! で、何で落ちて来たんだよ?」
「決まってるわ。UWの仕様では、飛空艇とか高い所から落ちたら戦闘不能判定になるでしょ? でも実際どのくらいの高さから落ちたら戦闘不能になるのかなって、検証したかったの! ここだとグリフォンタクシーで簡単に空を飛ばせてもらえるから、チャンスだと思って! でも、騒がせてごめんなさい」
女の子はキラキラした目でそんな事を言った。
その無駄にも思える探求心――
さてはこの子は――俺と同じ検証厨ってやつだな!
これは仲間だぞ、仲間がいた!
「コケー……この子、蓮みたいなことを言う子だコケなー」
「蓮!? あ――蓮? 高代蓮なの!?」
「ん――? あれ何で俺の事知ってるんだ?」
「あたしよ、あたし! エミリーよ! エミリー・モレッツ! 分からない? 直接顔を合わせるのって、もう十年ぶりくらいだもんね?」
「ええぇっ!? おおおおおーーーー! エミリーかよ! 久しぶりだなあ!」
エミリーは、うちの親父と仲のいい海外のゲーム開発者の娘だ。
昔一時的に日本に住んでおり、その時は家が近所だった。
小学校の低学年の頃には、一緒の学校に行っていた。
毎日一緒にゲームやっては、RPGとかで敵のHPやら何やらを調べて、まとめたデータで自作の攻略本作ったり、制限プレイバトルと称しては、お互いにどっちがより厳しい縛り内容でゲームクリアできるか競争とか――色々やったなあ。
今でも時々手紙やメールではやりとりをするんだが――
エミリーは俺に合わせて、全部日本語でやり取りしてくれるんだよな。
それに甘え続けた俺は、アメリカ人の幼馴染がいるのに全く英語が出来んという――
「久しぶりねえ、蓮! いつかまた会いたかったけど、こんな所で会えるなんて!」
「おお! まさか上からエミリーが降って来るとは、流石に予想外だったぜ!」
「そうね、あたしもよ! 本当に嬉しいっ! これってけっこう運命的よね!?」
エミリーはそう言って、きつく俺に抱き着いて来た。
俺が覚えている、子供の頃のエミリーとはまるで違う感触である。
「お、おう……!」
俺は思わず緊張してしまうのだった。
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