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第167話 異世界サーマル

 門をくぐると視界がぐわんぐわんと歪み、それが元に戻ったかと思うと俺達は全く別の場所に立っていた。

 真っ青に澄んだ空に、キラキラ輝く太陽。

 足元はとんでもなくサラサラの白砂。爽やかな波の音が耳に入って来る。

 俺達は絵に描いたように綺麗な浜場に立っていた。

 コバルトブルーの海が目に鮮やかだ。

 振り向くとくぐって来た門はそのままあり、浜辺にドンと門が設置されているような感じになっている。


「おー! これが異世界サーマルかぁ! 南の島って感じだな~」


 海岸線を見る感じ、俺達がいるのはかなり大きな島のように見える。


「コケー! リゾートって感じだコケー!」

「お~。こりゃ希美様も喜んで下さるかねー!」

「どうだろうな。赤羽さんはこういうとこ行き慣れてそうだけどな」

「そうかも知れねえな。なら希美様が喜ぶ何かをここで探すぜ!」

「お前はいつも同じ事ばっかだなー」

「お前だって魔改造だジャイアントキリングだしか言わねえだろ」


 と言い合っている俺達に、声をかけてくるNPCがいた。


「いらっしゃいませ~! 異世界サーマルへようこそ!」

「皆さん、ごゆっくり楽しんでらしてくださいね~!」

「はい、パンフレットをどうぞ~!」


 ケモミミをしたNPCの女の子達が、俺達に寄って来てパンフレットを渡してくる。

 ここのリゾート施設のスタッフって感じか?

 俺はそのうちの一人の、ウサミミのお姉さんに聞いてみる。


「あ、すんません」

「は~い! どうなさいましたか?」

「これ――招待券貰ったんですけど、どこに持って行けばいいっすかね?」


 俺はクジで貰った高級リゾート招待券を見せる。


「あっ! これは――VIP用の招待券ですね! 少々お待ちください! お客様をVIPルームにごあんなーい! 二名と一羽と一匹様でーす♪」


 と、お姉さんがスマホみたいなのを取り出して、連絡していた。


「おいらは一羽にカウントされてるコケな――」

「使い分ける意味は無さそうだけどな……」


 と言っているうちにすぐに、空から俺達に影が迫って来た。


 ギュオオォォォォン!


 大きな翼を持つ魔物が四体、大きく鳴きながら俺達の目の前に着陸してきた。

 これはあれか――グリフォンって感じか?


「はいグリフォンタクシー到着~♪ どうぞお乗りになってください、お部屋にご案内いたしますねー!」


 お姉さんがさっと一体のグリフォンに跨る。

 ちゃんと鞍が取り付けられていて、座りやすいようになっていた。

 俺達もそれぞれ乗って、リューは俺が抱っこした。

 そしてグリフォンが飛び上がると、俺達がいた場所の全景が目に入って来た。


「おーでっかい島だったんだなー!」


 島の両辺を真っ白な砂浜が覆っており、中心部には観覧車やらジェットコースターを備える遊園地的なものが。でっかいプールやウォータースライダーも見える。また、綺麗な緑に覆われた森も見えた。絵に描いたような南国のリゾート地という感じだ。


「はい! この島は様々な世界の方が集う巨大なリゾート施設です! 美しい海もありますし、遊園地もありますし、グリフォンのレースや、海底遺跡のダンジョン探索、その他色々お楽しみただけます! こちらとの門が繋がっている間、どうぞごゆっくりお楽しみくださいね! VIPルームは今シーズン中有効ですから」

「ほー! シーズン中有効って事は、この夏休み中はずっと使えるって事かな――」

「はい! メタ的な事を言いますとそうなりますね!」


 言うんだな。メタ的な事――まあ分かり易くて助かるが。


「はい! あれがVIPルームとなりまーす♪」


 とお姉さんが指差したのは――眼下に見えて来た水上コテージだった。

 コバルトブルーの海の上に家が浮いているように見る。

 絵に描いたような高級リゾートという感じだ。

 そして立地もさることながら、コテージ自体が相当にデカい。

 平屋だが俺達のギルドハウスの数倍の面積がありそうだ。

 海に面したデッキにビーチチェアがいくつも並べられているのが見える。


「おおー! 広いな!」

「でっかいコケ~!」

「これだったら一クラスくらい泊まれそうだな!」


 テンションの上がる俺達を、グリフォン達はコテージの入り口に降ろした。


「中にどうぞ。入ってみて下さいね~♪」

「よっしゃ行くぜ!」

「コケー! おいらも行くコケ~!」

「希美様のために調べまくるぜ!」


 俺達は喜び勇んで水上コテージへと突入する。


「うおおお広いなーーー! しかも家具も全部高そうだな」


 リアルに泊まったら一泊いくらするんだレベルだな。

 百万とか二百万とかしそうだぞこれは――!


「コケー! 蓮、蓮! こっちにいっぱい服があるコケよ~!」


 ウォークインクローゼットに入って行ったココールが声を上げていた。

 中にはリゾート地っぽいアロハシャツやら水着やらガウンやら何故か浴衣やら、色々なものが揃っていた。


「おー! 何だこれ!? すげー一杯種類があるな!」

「こちらお好きにお使い下さって結構ですので~。ただし元の世界にお持ち帰りは出来ませんのでお気を付け下さいね。こちらは男性用で、あちらは女性用です」


 と、もう一つあるウォークインクローゼットを指差す。


「へぇ――」


 つまりあっちには女の子用の水着やら浴衣やらが満載されていると――

 ちょっと見てみたいが、何か見辛い気もするな……悪い事をしてるような気がする。


「よっしゃ現地調査!」


 片岡が何の躊躇いもなく女の子用のウォークインクローゼットに踏み込んで行った。


「うわ! お前よく行くな――!」

「今のうちしか見れねえぞ! 調べとかねえと! お前も来いよ」

「ったく――」


 仕方なく俺も付いていくと、中は非常に華やかなものだった。

 水着やら浴衣やら、女の子用のものは非常に見応えがあるというか――

 あきらが着たら似合うだろうなーと思った。

 向こう何日かゲームできないみたいだが、早くここに連れてきてあげたいな。

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