第166話 高級リゾート招待券
「うおおおおおおっ!」
「4等! 4等! 4等! 4等! はい、あと一回だね!」
俺は早速追い込まれていた!
「ぐぬぬぬぬ――マズいな……!」
「三位狙いだったコケよな? 狙うとなかなか当たらんコケね~」
「こうなったら――ココールお前引いてくれ!」
「ええっ!? おいらがコケか? いいけど、外しても文句いうなコケよ?」
「ああ――頼むココール!」
思えば俺のアイテム運は春の新人戦の途中でリューが『オート採集』で『隼のアイアンソード』を持って来た時に尽きていたのだろう。
きっと俺のアイテム運はリキャストされないに違いない。
「分かったコケ~。じゃあ行くコケよ~」
ガラガラガラ――
ココールが取っ手をぐるぐる回して――
コトン。と排出されたのは金色の球だった。
「コケっ!? 如何にも3等じゃなさそうなのが出ちまったコケ~」
「おおおおおお~~~! 期間限定特別賞! 異世界サーマルの高級リゾート招待券だ!」
「高級リゾートコケか?」
「ああ、おめでとう! さぁこれだ! 今年の異世界サーマルへの門が現れてる間はずっと有効だよ! はいどうぞ!」
「ど、どうもだコケ~……」
「すげーなココール! お前もアイテム運持ってる系なんだな――!」
ラッキーボーイ? ラッキーバード? ラッキーチキン? まあそんな感じだ。
「でも三等は外したコケな~すまんコケ~」
「いやいや全然いいぜ。また『クジ引き券』確保して狙いに来るからさ。期間限定モノだしこれはこれで何か楽しそうじゃね?」
「コケ~そうコケな。異世界サーマルコケか~」
この異世界サーマルというのが、夏休み限定エリアの事である。
ゲーム内の世界観としては、一年のうちある一定の期間にだけ現れる次元の門で繋がった異世界という事になっている。
何故わざわざそういうものがあるかというと――
異世界サーマルは共用エリアなのだ。
何との共有かと言うと――別サーバーや、あるいは外部の別システムとの共用だ。
つまり世成学園の海外支部の生徒だとか、あるいは卒業生の皆さんだとか――
期間限定だしお高いが、料金を払えば一般の人も入れるんだよな確か。
UWの通常世界は学生用なのでそこは閉じているわけだ。
外部に開放するのは、異世界という形の共用エリアですよと。
そして生徒も行って遊んでいいよと。
行った事は無いが、どんな風になってるんだろうな――
「『クジ引き券』のクエストはまだ次やれるまで時間かかるし――せっかくだし今から行ってみるか! 異世界サーマル!」
「おぉぉぉ~! 行ってみたいコケ~!」
「きゅ~きゅ~♪」
ココールやも入れるよな?
夏休み前に仲田先生に期間限定エリアにリューを連れて行けるか聞いたら、大丈夫だと言っていた。
「異世界サーマルの入り口は飛空艇の発着港に現れてるよ。楽しんできなよ!」
クジのおっちゃんがニコニコしながら教えてくれた。
「よし行くぞココール! リュー!」
「コケ!」
「きゅ~!」
俺達は早速、教えて貰った異世界への門へと移動した。
現場に着くと異世界サーマルへの門はファンシーでメルヘンな感じで、如何にも夢の国への入り口だった。
結構な人数がその前に集まっていた。
ここで待ち合わせして、一緒に異世界に向かうという感じだろうか。
俺達には待ち合わせする相手はいないので、早速行ってみよう!
だが――そんな俺達に声をかけてくる奴がいた。
「あれ? おーい高代じゃねえか!」
「ん――? ああ片岡か、おっす」
「何お前、今日は青柳さんと一緒じゃねえの? 何か寂しそうだな?」
「別にたまにはこういう時もあるぞ。あきらは今日はお爺さんのお見舞いに行くんだとさ」
「そうか。そりゃ残念だったな、せっかくなら一緒に行きたかっただろうに、男だけとはな」
「お前も男だけじゃねーか。しかも一人でぼっちかよ」
俺にはリューとココールがいるから寂しくないぜ!
「ばっかお前、俺は遊びに行くんじゃねえよ!」
「うん?」
「いずれ希美様も異世界サーマルに遊びに行くだろ? 俺はその時にきっちりナビ出来るように今のうちに下調べしとく必要がある! これは義務だ! 従者は一日にして成らずだよ。分かるか!?」
「……言葉の意味は分からんが、とにかくすごい情熱ですね」
「おう、そういう事だよ!」
「……まあとりあえず――だ。俺達商店街のクジ引きで異世界サーマルの高級リゾート招待券を貰ったんだよ。どんなもんか見に行くんだが――お前も一緒に行くか?」
「お? いいのか? そりゃあ希美様のために見ておける所は見ときたいぜ!」
「まぁ別にいいぜ。この券見てたら何人でもお越しになれますって書いてるからな」
「そうか、じゃあ遠慮なく行かせてもらうぜ!」
「ま、男がさらに増えてより夢も希望も無くなったが我慢しろ」
「お前いっつも可愛い子に囲まれてハーレムしてるから、たまには男同士も新鮮でいいだろ?」
「……ああ、外部からはそういう感じに思われてるんだなぁ、俺って――」
「だな。俺の集めた情報によると、青柳さんも前田さんも矢野さんもみんな可愛いから、独り占めすんなって思われてるっぽいぞ?」
「気が合うからやってるだけなんだがなぁ。あきらなんか俺はじめ男と思ってたし――」
「まま。他人の目なんざ気にしても仕方ねえ、気にすんなよ。俺だって従者やってて変な目で見られるが、気にしねえし」
「いやお前はちょっと気にしろ」
「よし行こうぜ! 高代!」
こいつ無視しやがった!
とりあえず俺達は、異世界サーマルへの門をくぐったのだった――
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