第15話 レベルアップボーナスを割り振ろう
「まあ俺がやってもキモいだけだしな。それより何か戦利品出てるぞ」
「あ、ほんとだね。何々」
「おっ。『アイアンインゴット』だ! しかも六つも!」
「素材かあ。何か装備が欲しかったなあ」
残念がるあきらに反して、俺のテンションは上がっていた。
「いやいや、これはいいかも知れん。必ず落とすのかなー」
「さあ?」
「よし、ボスが再出現するの待って、もう一回倒してみようぜ!」
「えぇ? 上に行かないのぉ?」
「もし必ずインゴット六個貰えるなら、絶好の稼ぎポイントだぞ? この先『仕込杖』の中身が『ブロンズソード』のままなのもしんどいし、『アイアンソード』に中身更新しときたいんだよ。大量にインゴット集めるべしなわけで。それに固定経験値も二体分で結構おいしいから、レベル上げ的にも効率いい。ここで一気に22に上げようぜ」
ソードダンサーが『剣の舞い』を覚える22までは、どこかで効率のいいポイント見つけてレベルを上げてしまいたかった。
そこまであげてこそ、俺とあきらのコンビネーションが真価を発揮できる。
ここは武器のバージョンアップのためのインゴット集めもできて、一石二鳥かもだ。
「そりゃボスの再出現がめちゃくちゃ長かったり、インゴットの配給が渋かったりしたら考え直すけどさ、少なくともここは確かめてみないと! さあ検証しなさいって俺のゲーマーとしての感がビンビン言ってるんだよ!」
「うわ~でたー。蓮くんの検証癖だー」
「な、とりあえず一回再出現待って、倒してみようぜ? な?」
「うん分かった。いいよ。じゃあちょっと休憩だねー」
あきらは近くに転がってた岩の上にちょこんと座る。
俺は現在時刻を確認すると、岩の近くの地面に足でメモしておいた。
何分リポップかを測ろうってこと。
「あ、あきら。この『アイアンインゴット』貰っていい?」
「うんどーぞ」
「あざっす!」
システムメニューを呼び出し、タレントの設定で『流れ作業』を外す。
それから合成メニューを呼び出し『アイアンインゴット』四つで『アイアンソード』の合成を開始。『流れ作業』を設定していると合成スキルがアップしないからだ。
毎回外すのはちょっと面倒だけど、仕方がない。
簡易鍛冶ツールセットが起動。
まず『アイアンインゴット』を炉で溶かし、それから形成。
トンカチでカンカン叩いて剣の形に整えていく。
この辺手動操作で、職人気分が味わえる。
あまりにもミスったら合成失敗になって素材が消えてしまう。
逆に上手くやれば、通常より性能のいいHQ品になる。
カンカンカン。カンカンカン。と音が続いて――
ふっと俺の目の前にあきらの顔が割り込んでくる。
しかもすんごい変顔だった。
「ぶっ!? うはははは、おい止めろって――あっ、手元が狂った!」
バリーンって音がして、インゴットが粉々に砕け散った。
合成失敗……
「あのー……あきらさん?」
「あははははっ。だってえ。ヒマなんだもん」
まあこういう悪戯好きなことは前から知ってたから、別に腹は立たない。
「んー再出現はまだかねー」
「まだ一分だねえ」
「おお、そうだ今のうちに……」
俺は自分のステータスをウィンドウ表示した。
そこからLUB、レベルアップボーナスの割り振り画面を起動する。
レベルアップでボーナスが貯まり、そのポイントを任意のステータスに割り振れる。
いわゆるステ振りだけど、俺はまだ貯めるだけで何も振っていなかった。
今のLUBは64ポイント。ステータスは――
STR 30
VIT 33
DEX 35
AGI 41
INT 72
MND 60
CHR 49
後衛職らしくINTとMNDに寄っている。身体能力はとてもとても低い。
「何か振るの? わたしもまだ振ってないんだよねー」
「さっき一発で仕留めそこなったからな。何とかならんもんかと。ちなみにあきらのステって今どんな感じ?」
「わたし? こんな感じだよ」
俺はあきらが開いたウィンドウのステータスに注目する。
STR 52
VIT 44
DEX 61
AGI 63
INT 37
MND 42
CHR 74
DEX、AGI、CHRが高い感じ。
DEXは前衛で武器使うジョブには必須のものだし、AGIは足の速さとか回避判定に効いてくるからこれもあったほうがいい。
CHRはダンスの回復力がCHR依存。可愛いは正義って事か。
STRは並みレベルで、ステ傾向としては攻撃力はそこまで高くない。
VITは前衛にしては低い方で、攻められると結構ガード削りを受けてしまう、と。
CHRが頭一つ抜けてること以外は、軽戦士系のステ傾向かな。
さて、俺のLUB64ポイントをどう振るかについて。
ま、一択だな。
というわけで俺はVITに64ポイントを全部つぎ込もうと操作を――
「ちょ……!? 待って待って! ええぇ? それでいいの?」
あきらがびっくりして止めてきた。




