第157話 デッドリー・キング降臨
最後の戦いの火ぶたが切られ、リング状の四人がそれぞれに戦闘態勢を取る。
最初は様子見――にはならなかった。
ココールが真っ先に動いたからだ。
「コケ!」
速攻でアイテムを取り出して、使用する!
ココールはティーソナの秘薬を使用した。
ココールのAPが100増えた!
うむ、初手ドーピングだ! いいね!
ティーソナの秘薬(OEX)
種類:消費アイテム
:使用者のAPを100増加させる
スキル『鯨波』と同一の効果
ちなみに効果はこれだ。
仲間モンスターの特殊技を使わせるためには、ココールのAPが必要だが、残念ながら素のココールは攻撃を敵に当てられないため、APを得るためには攻撃を被弾して溜めなければならない。
しかしココールのHPは低い。
下手すればAPが溜まる前にやられる。
そこを開幕でAPを得るためにこのアイテムに頼った。
だが、アイテムの属性はOEX。
Oが一つしか持てない。EXが他人に渡せない、だ。
つまり自らドロップするやつを倒して取りに行くしかない。
ええ、行きましたよ! ゴールデンバニーの情報リークで他の狩場が空いたんでね。
今日の大会中の補充はできないため、ここまで温存する必要があったのだ。
「インフェルノアーマー! 来てくれコケー!」
と、ココールがコールする。
ドン! オレンジ鎧のインフェルノアーマーが再び登場!
ただし先程のクジャータさんを道連れリングアウトにした彼とは別個体だ。
ココールのゴールデンイエロー・スウィーツのモンスターストック数は6だが、そのうち3がインフェルノーマーだった。ココールと相性いいからな、こいつは。
それからフロストイーグルに切り札デッドリー・キング、最後は回復も手伝えるようにと、回復魔法が使えるバニー系統モンスターであるクレリックバニーを雇っておいた。
ココール的にはゴールデンバニーにぼこぼこにされながらレベル上げをしたせいか、バニー系統のモンスターは苦手らしく、見てるだけで体が痛い気がしてきたコケーと言っていたが。
「『装着憑依』だコケ!」
ガシャンガシャン! ガチャン! ガキイィィィィン!
これだけ見たら完全に聖〇士がクロス装着するシーンだなぁ。
まあオレンジのド派手な色だし、中の人がニワトリだけどな!
「皆まとめてかかってくるコケ!」
ココールが他の三人のちょうど中央に進み出る。
その狙いは俺にも分かる。相手を一か所に集めるためだ。
それでいいぞ、ココール!
大胆なココールの行動を見たアルフレッド君がギュッと表情を引き締める。
「ココール。成長したんだね――前の君とは大違いだよ。だけど僕も!」
アルフレッド君が剣を抜く。おおいつの間にか二刀流になってるし!
「はああぁっ!」
アルフレッド君の剣が真っ白な光のオーラに覆われる。
おお? 光の魔法剣か?
流石成長率No1、初め弱くても大器晩成で最後は最強ってか。
なんて言うか、勇者っぽいよなーアルフレッド君は。
勇者属性、主人公属性ってか。
――そんな優遇キャラに負けんなよ! ココール!
「こっちがホンモノのココールね! キミに恨みはないけど、キミの所のギルドマスターは気に食わないからね! 真っ先に倒してやるから!」
うん。不意打ちで5ポイント頂いてしまったからな。
その事をミコットに恨みを買ってしまっているようだ。
すまんココール頑張って!
「ええと――じゃあ私も――」
と、ブルーノさんも武器を構える。ホントどこにでもいそうな普通のおじさんだ。
持っているのは、両端に殴打用の鉄球と棘が付いたバトルスタッフ系の両手杖だな。
ほむら先輩の所とは同盟組んでるわけだが、最後はもう英雄候補NPCに任せて恨みっこなしという事で、好きに戦ってもらう事にしている。
アルフレッド君、ミコット、ブルーノさんが三人でココールに攻撃を仕掛ける。
間合いが接近する。三対一の接近戦が始まった。
アルフレッドの攻撃。インフェルノアーマーに66のダメージ。
ミコットの攻撃。インフェルノアーマーに97のダメージ。
ブルーノの攻撃。インフェルノアーマーに21のダメージ。
インフェルノアーマーの攻撃。アルフレッドに71のダメージ。
明らかにフルアーマーココールが押されて行くログの流れ。
しかしブルーノさんだけちょっとダメージ落ちるな。
まあそれ程注目のNPCでも無かったしな。
レベル的にはココールが100、ミコット78、アルフレッド君75、ブルーノさん73でそこまで大幅な差じゃないんだが……
やはり才能の差か――ココールはミコットもアルフレッド君もエリートだからなあ。
ココールは才能の壁を魔改造でクリアしたけどな!
これでも上がって来れたのは、ほむら先輩達の魔道士軍団が艦隊戦向きだったのが大きい。俺達とも協力したしな。
インフェルノアーマーの攻撃。ブルーノに187のダメージ。
「ぐはぁ……! つ、強い――!」
ブルーノさんだけフルアーマーココールにやられそうな勢いだぞ!
どうせならエリート二人より生き残って、ココール対ブルーノの頂上決戦にして欲しいんだがな――! 粘れブルーノさん!
しかしその前に――
「行くよココール! 奥義『スターゲートストラッシュ』!」
「ボクもだよ! 奥義『グランドブレイカー』!」
エリート二人の奥義が、フルアーマーココールを直撃する!
そしてインフェルノアーマーが倒され、点滅しながら消え去っていく。
中からココールの本体が現れる。
「「もらった!」」
そのココール本体に襲い掛かるアルフレッド君とミコット。
ブルーノさんも近くにいる。
――ベストな位置取りだ! APも問題ない!
「デッドリー・キング! 出て来てくれコケ~!」
「オオオオオオォォォォーーーー!」
出たぞ切り札! 苦労して仲間にしたデッドリー・キングさんだ!
今日もいかつい体格に金ピカの鎧に、カッと真っ赤に輝く瞳がカッコいいぜ!
「「「!?」」」
アルフレッド君達が警戒感を露わにするがもう遅い!
「今だ速攻だコケ!」
ココールの声を受け、デッドリー・キングが剣を地面にぐっさりと突き立てる。
「刮目セヨ! 『赤き災厄』!」
ズゴオオオオォォォォッ!
地面に突き立てた剣を中心に猛烈な炎が吹き上がった。
それは放射線状に広がって行き、他三人を巻き込んだ。
攻めにかかっていた所をカウンターで発動され、反応できなかっただろう。
デッドリー・キングの赤き災厄が発動。
アルフレッドに2525のダメージ。デッドリー・キングはアルフレッドを倒した。
ミコットに2525のダメージ。デッドリー・キングはミコットを倒した。
ブルーノに2525のダメージ。デッドリー・キングはブルーノを倒した。
うむ! 流石切り札、期待通りの活躍だな!
『おおぉっと! ここで大逆転だああぁぁぁっ! 一撃で他三人を倒したあああぁっ!』
フハハハハハ! 見たか、このために切り札を温存しといたんだよ!
「よっしゃああぁぁぁ! 計算通り!」
「やったね蓮くん!」
俺とあきらはハイタッチを交わしていた。
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