第154話 ドリル無双
「や、やったコケか……!? おいらが勝ったのかコケ……?」
ココールが唖然と呟いている。
「あのクジャータさんにおいらが勝てるなんて……あのダメダメだったおいらが――!」
自分がやった事が、まだ信じられないと言う様子である。
そんなココールの背中を、俺はバシッと叩く。
「よっしゃナイスココール! な、言ったろ!? お前は出来るって!」
俺的にも鼻が高いぜ!
今確かに、ココールはクジャータさんにジャイアントキリングをぶちかましたわけだからな!
あの英雄候補ドラフトの時は考えられなかった事が起きたのだ。
やっぱ弱者の戦術が強者を倒すところを見るのは気持ちがいい!
これがロマンってやつですな! かなり満足だぞ俺は!
「蓮がヒントをくれたおかげコケ~! 確かにこの場所でしかできない邪道技だったコケなー」
「それでいいんだよ。勝負ってのはやったもん勝ちだ! それにその場の状況を利用して立ち回るのは邪道でも何でも無い。プレイヤースキルだ! 何はともあれお前はクジャータさんに勝った、ちゃんとやれるんだよ。だから自信持てよ!」
「コケー! ありがとうだコケ―! おいら蓮達に指名して貰えてよかったコケ~!」
「お互い様だぜ、俺もココールはワシが育てたって言えるからな――さぁ続いてガンガンポイント稼ごうぜ!」
「おうだコケ~!」
「けどココールは抑え気味にな、ポンポンモンスター使うと、弾切れが怖いからな」
「分かったコケよ~!」
山吹色のお菓子で雇っておいたモンスター6体のうちもう2体が消えた。
できればこの先の決勝まで4体は維持しておきたいわな。
特にデッドリー・キングは確実に温存しておきたい。
決勝で呼んで度肝を抜いてやるぜ!
「ですが、どうやって移動するのです? フロストイーグルは倒されてしまいましたけれど……もう一体おりますの?」
「いや、いないけど?」
「……そういやそうだったコケーーーっ!」
「えぇ!? ではどうしますの?」
「飛び降りればリングアウトでピーチサンダー号に帰れるぞ」
「それはそうですが、せっかく稼いだポイントがパーですわよ!?」
「いいんだよ俺達三人で-7ポイントだろ。ここで稼いだ分と比べりゃ黒字だろ」
俺が8、ココールが5ポイント稼いでいるから合計で13だ。
-7喰らっても6も黒字、十分だろう。
「ですが少々勿体ないですわねえ……」
「いいんだよ、ここにはポイントより大事なものがあったって事で!」
ココールが身に着けた自信はプライスレス!
「まあ、それもそうですわね……よろしいですわ、では飛び降りて戻りましょうか」
「ああその前に向こうにちょっと止まって貰っといた方がいいよな。ニトロ中に再配置されていきなり吹っ飛ばされて場外とかあり得るし」
「そりゃとんでもない事だコケ~」
「ちょっとメッセージ送って、返信待ちしよう」
と、俺がシステムからあきらにメッセージを投げようとしていると――
ゴオオオゥッ!
俺達の側を、火球がかすめた。
む――魔法攻撃か!
「こちらを狙っていますわね――!」
赤羽さんの言う通りで、アンカーの中央あたりにいる俺達に対し、左舷右舷両方の飛空艇から魔法や弓矢が飛んで来始めたのだ。
さっき倒した敵プレイヤーが再配置されて、再び俺達に攻撃してきたのである。
今度は下手にアンカーの上に立って俺の『朱雀一閃』で一掃されないように、アンカーの外からの遠距離攻撃で攻めてきたのだ。
まあ当然の対策だわな――
創意工夫で相手を一度やっつけたら対策を取られ、今度はそれを上回るためまた創意工夫を繰り返す。延々と続く化かし合い。対人戦ってそういう事だろう。
野球とかサッカーとか、その他のスポーツでも一緒だよな。
「よし――せっかくだ、1ポイントでも多く稼いでから死に戻りするか!」
「いいですわね!」
「コケ~!」
と、俺達は左舷側に特攻を仕掛けようとしたが――
ギャリイィィィ! ガチャン、ガシャーーーン!
重くけたたましい金属音!
アサルトアンカーが、左舷の船に撃ち込まれたのだ。
そしてアンカーを放った何者かの船は、即座に物凄い加速をして、左舷の船に突っ込んで行く!
その船体は目に痛いくらいの全身ピンク。
船首には金ピカのいかついドリルが装着されている――
うん、俺達のピーチサンダー号! 客観的に見るとすげー異彩を放ってるな!
ピーチサンダー号はドリルで左舷の船の船体を抉りながら、超速で通り過ぎて行く。
ニトロだからな。そりゃ凄いスピードだ。
しかし、繋がったアンカーのおかげである程度の所でピタッと止まる。
通り過ぎようとする勢いは、アンカーに引っ張られて遠心力となるが、逆にそれを利用してぐるんと一気に反転すると船首のドリルを再びターゲットに向ける。
回頭は成功したが、まだ推進力はターゲットから離れるベクトルだ。
だが、そこで――
ドウゥゥゥゥン!
再びニトロ点火!
外向きのベクトルをニトロの加速で無理やり打ち消しキャンセル、また突っ込む!
再び大きく抉れる左舷の船の船体。
ピーチサンダー号は再び旋回&ニトロで突撃をかける!
「すげーな前田さん……! なんちゅう動きだあれ――!」
ニトロに次ぐニトロで硬直キャンセルしつつゴールデンドリルの突撃連打。
想像した以上の恐ろしい変態機動だ――!
そして連続四発目のドリルアタックが決まった時、ターゲットの飛空艇は完全に破壊され、煙を吹きながら落下して行った。
「おお――飛空艇ごと沈めたな! すげー!」
あの中に片岡もいたよな……? 哀れ!
敵プレイヤーを撃破しました。悪魔の仕業の戦功ポイント+1。
敵プレイヤーを撃破しました。悪魔の仕業の戦功ポイント+1。
敵プレイヤーを撃破しました。悪魔の仕業の戦功ポイント+1。
敵プレイヤーを撃破しました。悪魔の仕業の戦功ポイント+1。
敵プレイヤーを撃破しました。悪魔の仕業の戦功ポイント+1。
悪魔の仕業の合計戦功ポイントは24です。現在7/48位です。
「やりますわね――!」
「琴美、凄いコケ~!」
だが問題もある。
左舷の船が沈んで無くなったため、アンカーも支えを失った。
俺達は右舷から垂れ下がるアンカーに辛うじてしがみ付いていたのだ。
だが――敵船を沈めたピーチサンダー号が、俺達に近づいてきた!
「おーい、蓮くーーん、希美さーーん、ココールくーーーん!」
甲板で、制服姿に戻ったあきらが手を振っている。
気が付いて迎えに来てくれたらしい。
「おーーーーい! ここここーーーー! 助かったぜ!」
ポイント消費せずに帰れるな、ラッキー!
合流した俺達は、その後も順調にポイントを稼いで行った。
途中またほむら先輩達と出くわしたので、今度こそ協力プレイで戦ったりもしつつ。
夢中になってやっていたら、結構すぐに制限時間が来た感じだった。
そして――ポイント的には全体2位!
見事、最終決戦に駒を進めることになった!
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