第153話 ココール覚醒
「コケーッ! 装着完了コケ!」
このインフェルノアーマーは、元々仲間モンスターの体を覆う『装着憑依』という特殊技を使って来る。
ココールはそれを使用させたわけだ。
命令して発動させるにはココール自身のAPが必要だが、それはこれまでの戦いで溜まっていたわけだ。
仲間モンスターがAPを得るとその一部がココールにも加算される仕組みになっているのだ。
だから『装着憑依』をするためのAPをフロストイーグルに稼いでもらったというわけだ。
初めから本命は『装着憑依』だったのである。
『装着憑依』だと、ダメージは全て外側のインフェルノアーマーに行くため撃破されるまではココールは無傷でいられる。
最大HPも防御力も低いココールにはうってつけの効果である。
「なるほど鎧を着てしまえば……! いいですわね!」
「ああ――!」
「なるほどな。鎧の魔物を纏ってしまうか――面白い!」
クジャータさんが体勢を立て直し、再び槍を繰り出す。
フルアーマーココールも、同じく槍を取り出して迎撃。
これは、ココールが所持していた装備アイテムである。
クジャータさんの槍と、フルアーマーココールの槍が交錯する!
クジャータの攻撃。インフェルノアーマーに72のダメージ。
インフェルノアーマーの攻撃。クジャータに91のダメージ。
一発のダメージは、こちらが勝っているようだった。
というより防御力的にこっちの方が大分固いからダメージ勝ちしたのか?
どちらにせよ、いいことだ!
ちなみにログ上は、フルアーマーココールはインフェルノアーマー扱いである。
ここが、この合体のミソである。
本来のココールは『ノミの心臓』持ちで絶対相手にダメージを与えられないはずだ。
しかし、フルアーマーココールはあくまでシステム上インフェルノアーマーだ。
『装着憑依』中はステータス的にもインフェルノアーマーだし、『ノミの心臓』の効果も適応されない。
このステータスがインフェルノアーマーになる効果を、雑魚モンスターと同等レベルにパワーダウンしてしまったと取るか、インフェルノアーマーさん程のお方のステータスに劇的パワーアップしたと取るかは、合体した者次第だろうが――
ココールの場合、絶対的に後者である。
弱点でしかなかったココール本体を隠ぺいしつつ戦える上、『ノミの心臓』の効果も回避できるのだから。
「ならば――ファイアボール!」
離れた位置から魔法を放つクジャータさん。
ああそうか、魔法戦士って説明を見た気がする! 初めのドラフトの時に!
飛べなくなったココールは、アサルトアンカーの上に陣取って迎撃をするしかない。
離れて魔法を撃たれれば、悪い足場に気を付けて避ける他はない。
そして、体勢が乱れた所にクジャータさんが再び突撃!
クジャータの攻撃。インフェルノアーマーに76のダメージ。
今度は相打ちに出来なかったか――!
一方的に攻撃を喰らっていてはまずいが――
「まずいですわ! 一方的になって来ましたわ!」
クジャータさんの残りHP7割、フルアーマーココールは2割という所か。
元々、フルアーマーココールには足場の不利がある。
更にクジャータさんは鳥人種の英雄ともいうべき歴戦の戦士。
戦闘経験の差というやつも大きいかも知れない。
ココールはまだ余り戦い慣れていないからな。
「いや――それでいいんだよ……!」
「ですが――いえ、いいんですのよね。確かによく頑張りましたわ、わたくしココールを見直しましたわ」
「いや、そうじゃなくてさ」
「どういうことですの?」
「まだ勝ち目はあるぜ――!」
そして多分俺がココールでも、ここまで同じ展開にしたと思う。
ここから狙える逆転の手が――ココールにはある。
少なくとも俺の見た限りでは、だ。
ココールがそれに気づいているか――気づいててくれよ!
「ここまでよくやった――さぁ沈め! 『雷電回天衝』おぉぉッ!」
クジャータさんがトドメの奥義を繰り出す――!
致命の一撃が、ココールに迫って――!
「パージだコケ!」
何とココールはこの土壇場で『装着憑依』を解除してしまった!
「ええぇっ!?」
赤羽さんが声を上げる。
フルアーマーココールで受ければまだインフェルノアーマーがやられるだけで済むのだが、本体で受けてしまったらほぼ確実に一撃死で5ポイントを失う。
赤羽さんの反応も当然だろう。
だが俺は、手を叩いていた。
「よぉしっ! いいぞっ!」
これをやって欲しかったからだ、ココール分かってるな!
ならば次は当然――!
「『装着憑依』だコケ!」
そうそれ!
ただし、合体相手はココールではない、目の前のクジャータさんだ!
ガシャンガシャン! ガチャン! ガキイィィィィン!
かっこいい金属音! 今度はクジャータさんがフルアーマー化した!
「ぬああああぁぁぁっ!?」
そしてすぐさま悲鳴を上げる。ガクンと体勢を崩してふらつく。
それを見て赤羽さんは事態を把握したようだ。
「あ――! そうですのね……! 向こうに鎧を装着させれば――!」
「そう……! 『装着憑依』後はインフェルノアーマーだからな!」
クジャータさんが持っていた飛行能力は消えるのだ――!
重くて飛べなくなったと考えればいいかも知れない。
いずれにせよ、ココールの『ノミの心臓』が消せたのだからクジャータさんの飛行能力も消せるだろうという推測だ。ゲーム的にそういう仕様だろうと。
そして――このロケーションで飛行能力を奪われれば――!
「うおおおぉぉぉぉぉっ!?」
悲鳴を上げて、フルアーマークジャータさんが落下して行く。
あの人普通に飛べるから、墜落するなんて初めてだろうな。
さぞかし怖い思いをしているに違いない。
クジャータさんの姿が眼下に消えていくと、ピロンとログが表示される。
敵NPCを撃破しました。悪魔の仕業の戦功ポイント+5。
悪魔の仕業の合計戦功ポイントは19です。現在10/48位です。
この場所ならではの戦術だったな。
ココールが臨機応変にやってくれて非常に良かった!
もう十分お前は一人前だよ、ココール!
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