第152話 フルアーマーココール
「よし行けココール! お前の力を見せてやれ!」
ここはココールの成功体験ってヤツのために、ココールがクジャータさんとタイマン張るのを見守ることにしよう。
「む、無茶だコケ、蓮! おいらじゃとても――」
「いいや、やれる! お前も成長してるんだ、思いっきり試してみろよ! 家族も見てるんだろ? いい所を見せてやれ!」
「け、けど蓮――じ、自信ないコケ~……!」
「勝負は単なるステータス比べじゃねぇんだ。弱かろうが頭使って考えて、結果的に相手を上回ることもできる! 少なくともこの状況なら、打てる手があるはずだぜ! お前なら分かるはずだ――!」
「こ、この状況コケか……?」
ココールの頭は決して悪くない。
商才あるからな、商才あるヤツの頭の回転が鈍いわけがない。
だから確かにステータス的には不利だが、打ってみるべき手も考えつくはずだ。
まあ、いきなりデッドリー・キングという邪道もあるが――もしここで浪費したとしても、文句は言うまい。
ここで自信をつけるのは、ココールにとって必要な事だろうからな。
「赤羽さん、降りるぞ!」
俺は赤羽さんを促して、フロストイーグルの背からアサルトアンカーの上に降りた。
「クジャータさん、俺達は見てるぜ! 思う存分やってくれ!」
「おうっ! ココール、お前が彼らの下で得たものを見せてみろっ!」
クジャータさんが翼を強くはためかせ、ココール向かって空を駆ける。
「コケーッ!?」
ココールはフロストイーグルの手綱を操り、その槍の一撃を回避した。
うん、なかなか機敏な動き。鳥同士だから意思が通じやすいのか?
「逃さんっ!」
空中での追いかけごっこが始まる。
クジャータさんは突っ込んで槍の一撃を見舞おうとする。
ココールはそれをかわして間を取って、フロストイーグルの吐く氷ブレスで攻撃をしようとする。
機動性はクジャータさんの方が上か!?
だが、ココールも十分応戦できている。
俺はその様子を、腕組みしてジッと見守っていた。
頑張れココール! ここで必ずしも勝つ必要はない。ポイントなら俺達が稼ぐ。
ただ、自信をつけてくれ! お前はやれる!
自信ってヤツを俺がつけさせてやることはできないからな。
お前自身がやるんだ!
「らしくありませんわね? 先程はスノウが一対一を望んでいたのを敬遠しましたのに」
「それはそれだぜ。時と場合によるからな。今はこれが必要なんだと思う」
「……邪魔をする者がいましたら、わたくし達で止めましょう」
「ああ」
そう言ってくれるあたり、赤羽さんも納得してくれているようではある。
そして、ココールとクジャータさんの空中戦が決定打のないまま進み――
「――見切った!」
クジャータさんは不意にそう叫ぶと、フロストイーグルの吐く氷ブレスを避けずに、真っ向から突っ込んだ!
ブレスのダメージを無視し、そのままフロストイーグルに対して槍を放つ。
「奥義! 『雷電回天衝』ッッッ!」
まっすぐに突き出した槍を軸に錐揉み回転しながら、高速で突撃!
そして槍は青白い稲妻を纏っていた。
まるで、真横に稲妻が一閃するような、強烈な一撃だった。
高速回転しながら槍で突っ込むなんて動きは、飛べるクジャータさんならではだな。
疾走する稲妻と化したクジャータさんが、フロストイーグルの胴を撃つ。
キュオオオオッーー!
フロストイーグルが叫び声を上げる。
「いけませんわ! フロストイーグルが!」
HPバーが一気に削られていた。
ココールはまだ無事だが――フロストイーグルなしでは飛べない!
「ふ! こいつは氷のブレスを吐く瞬間、動きが止まる! そこを突かせてもらった!」
「なるほど、肉を切らせて骨を断つだな――!」
撃破されたフロストイーグルが透明に点滅し、消滅して行く。
結果ココールが空に放り出される。
「コ、コケーーーッ!?」
飛べない翼をばたばた。
ちょっとだけ空中での軌道修正に成功し、ココールは何とかアサルトアンカーにしがみついた。
「いいぞ! 粘れ!」
「だが隙だらけだ! 落とさせてもらう!」
落ちないのに必死なココールにクジャータさんの槍が迫る!
このままでは落とされる! だが、まだ――!
ドガアァッ!
「ぬううぅぅっ!?」
ココールを突き落とす寸前でクジャータさんが大きな鉄の拳に打たれ、吹っ飛んだ!
「よし! いいぞ!」
ココールが次のモンスターを呼んだのだ。
中身ががらんどうの大柄な全身甲冑、いわゆるリビング・アーマー系のモンスターだ。
全身オレンジ色の派手な色をした、インフェルノアーマーというレベル79のモンスターである。これでココールの残り傭兵モンスターは四体だな。
だがここでデッドリー・キングに頼らないあたりは、ちゃんと冷静に考えられている証拠だろう。パニックになれば、頼りたくなってしまうものだろうから。
「引っ張り上げてくれコケー!」
ココールの指示に従い、インフェルノアーマーはココールの体をアサルトアンカーの上に引っ張り上げた。
デッドリー・キングには及ばないかもしれないが、このインフェルノアーマーはかなりココールと相性がいい。俺的にはオススメのモンスターである。
それはなぜかと言うと――
「よし今だ! 合体だコケー!」
こくこく、と中身のない無いインフェルノアーマーが頷いて――
ボンっとバラバラに分解して滞空する!
そして――
ガシャンガシャン! ガチャン! ガキイィィィィン!
かっこいい金属音を立てて、各パーツがココールの体を覆って行く!
元々の体型が全然違うが、そこは空気を呼んで変形までするのである。
そして、ココールの丸っこいコケ族ボディが、完全なフルアーマーに包まれた!
フルアーマーココールの完成である!
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