第151話 大量点
「おっ! 片岡じゃねーか! お前こんな所にいたのかよ」
「まあなー。下っ端だから居残り役だけどな。先輩達はあっちで楽しそうにやってるぜ」
と、右舷の飛空艇を指差す。
あっちは交戦中で、甲板に多くのプレイヤーが出て、迫ってくる敵ギルドに砲撃や魔法や銃や弓などの遠距離攻撃を浴びせている。
完全に船を空にするわけにもいかないので、一人だけ空いた左舷側の飛空艇に残っていたようだ。
そういう雑用は、下っ端の片岡に回ってくるわけだ。
こいつのギルドである知識の泉は規模が大きいから、そういう序列になってるんだな。
「で、お前何しに来たんだよ? 一応敵が来たら合図する事になってるんだが――」
「あら片岡君、わたくしを敵だとおっしゃるのですか?」
赤羽さんが片岡を冷たい目で見る。
こうやってマウント取ってる時は、すげー完璧なお嬢様っぽいのになあ。
「そんなわけないじゃないっすか! 何なりとお命じ下さい希美様っ! ポイントが必要だったら、俺を攻撃して外に落として下さい! 相手を落としても1ポイント入りますからね!」
こいつホントにブレないな。常にHimechanに貢ぐことしか考えてない。
今度はポイントを貢ごうってか。
「……どういたします?」
そしてそれを普通に受け入れそうなこの娘も問題あると思うぞ。
「いやそれはダメだろ! それじゃ八百長になっちまうし!」
「そうですの? わたくしの人望が産んだポイントという事で、ある意味正当な評価ではありませんの?」
「いやいや人望って言うよりかHimechan力って言うか――いやどっちでもいいけど、とにかくダメだからな! それより片岡、合図を出せば向こうにいる奴等が戻って来るんだよな?」
「だろうな。敵が来た合図だからな。向こう側の敵も少なくなって来たし、全員向こうに集まってる必要は無いからな」
「よしじゃあ、合図出してくれ!」
「いいんですの? 囲まれてしまいますわよ? そうなっても飛んで逃げれば済むかも知れませんが、ポイントが稼げませんわ」
「そうなる前にポイント大量ゲットしてるし大丈夫だ。任せてくれ!」
「そう仰るのであれば――」
「よし片岡、やってくれ!」
「分かった! やるぜ!」
と片岡が飛空艇の操舵室に引っ込んで行き――
やがて大きな音と主に、煙玉が打ちあがって空で弾けた。
それを合図に、右舷に集まっていたプレイヤー達が一斉にこちらに注目した。
そしてそのうちの半数くらいが、右舷と左舷を繋ぐアサルトアンカーを伝ってこちらに来ようと走り出す。
「よっしゃチャンス! 『ファイナルストライク』! 『ディアジルサークル!』」
奥義を放つ下準備の儀式だ。もはや様式美ですなあ!
準備完了! そして俺もアサルトアンカーの上を右舷側に進んで行く!
「ココール! 赤羽さんを乗せて、飛んで付いて来てくれ!」
ココール達にはそう指示を飛ばしておく。
そして俺が、アサルトアンカーの中間位まで進んだ時、向こう岸からは7~8人のプレイヤーがアンカーの上を進んで来ていた。
ヒャア! 一撃でぶっ飛ばせる的が一列に並んでるぜ!
そうなると、これだ!
俺は腰を落とし半身を捻った『抜刀術』の構えを取る。
そして体が、真っ赤な炎に包まれる。その炎の形は火の鳥――朱雀を象っていた。
「奥義! 『朱雀一閃』っっっ!」
そのまま真っすぐ突進!
「「「「うわあああぁぁぁっ!」」」」
「「「「ぐあああーーーーっ!?」」」」
火の鳥がアンカー上を疾走し、同時に一斉に上がる悲鳴。
俺の放った『朱雀一閃』は、アンカーの上にいた敵プレイヤー達を一撃で薙ぎ払っていた。
この一直線のアンカーの上では逃げ場も無いからな!
前に大きく移動しつつ移動時に攻撃判定もある『朱雀一閃』には、うってつけのシチュエーションだったな!
このために片岡にあえて人を集めて貰ったのだ。
やっぱ連環の計は三国志でもこのゲームでも不遇属性なんだな!
敵プレイヤーを撃破しました。悪魔の仕業の戦功ポイント+1。
敵プレイヤーを撃破しました。悪魔の仕業の戦功ポイント+1。
敵プレイヤーを撃破しました。悪魔の仕業の戦功ポイント+1。
敵プレイヤーを撃破しました。悪魔の仕業の戦功ポイント+1。
敵プレイヤーを撃破しました。悪魔の仕業の戦功ポイント+1。
敵プレイヤーを撃破しました。悪魔の仕業の戦功ポイント+1。
敵プレイヤーを撃破しました。悪魔の仕業の戦功ポイント+1。
敵プレイヤーを撃破しました。悪魔の仕業の戦功ポイント+1。
悪魔の仕業の合計戦功ポイントは9です。現在17/48位です。
「よっしゃあ! 大量点ゲットだぜ!」
「なるほど、大勢巻き込むためにあえて呼んだのですね――! このアンカーの上では逃げ場もありませんし……!」
「まあ、上に飛べば逃げれるっちゃ逃げれるけど、初見は中々反応できないだろ? ガードしてHP的に生き残ったとしても、押されて落ちるしな」
「確かに、あの奥義にはこの地形がベストマッチでしたわ」
「蓮凄いコケ~! 一気に順位が上がってきたコケ~!」
「ああ、この調子で他にも巻き込めそうな奴等を探そうぜ!」
一回見られると対策されそうだから、初見の奴等を探してぶち込むとよく当たってくれるだろう。
この辺りなら、大量に敵もいるしな。ガンガン狩って行くぜ!
「よっしゃ次行くぞ次!」
俺は近寄って来たフロストイーグルの背に飛び乗る。
そこに、身に覚えのないログが流れた。
敵プレイヤーを撃破しました。悪魔の仕業の戦功ポイント+1。
敵プレイヤーを撃破しました。悪魔の仕業の戦功ポイント+1。
敵プレイヤーを撃破しました。悪魔の仕業の戦功ポイント+1。
敵プレイヤーを撃破しました。悪魔の仕業の戦功ポイント+1。
敵プレイヤーを撃破しました。悪魔の仕業の戦功ポイント+1。
悪魔の仕業の合計戦功ポイントは14です。現在13/48位です。
「おお!? これはあきら達が敵撃破してくれたんだな! 例の戦法がうまく行ったのか――!」
「そのようですわね――!」
「凄いコケ! こりゃあホントに4位以内行けるかもコケ!」
喜びの声を上げるココール。
「それはどうかな――!?」
声! 上からだ!
「む――!?」
そうだよな。片岡のギルドには飛べるNPCがいるもんな――!
「く、クジャータさんコケか……!」
「よっ! クジャータさんじゃねーか!」
「やってくれたものだ。だが相手にとって不足はない。借りを返させて貰うとしよう!」
「ふっ。ちょうどいいじゃねーか鳥人種のトップがお出ましとは――ココールがあんたを倒して、下克上を決めさせてもらうぜ!」
俺はクジャータさんに、ビシッと指を突き付けた。
「コケエエェェッ!? 蓮、何言ってんだコケーーーッ!?」
「ほう……! それは楽しみにさせて頂こう――!」
クジャータさんは不敵な笑みを浮かべ、得物の槍を構えるのだった。
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