第149話 別行動
「どうするコケか、蓮?」
本当のココールが俺に尋ねてくる。
ピーチサンダー号に待機している間、怪我がないようで何より。
「そうだな――」
雪乃先輩達は離脱するほむら先輩達を追いかけて行き、他に雪乃先輩達がアサルトアンカーで捕まえていた飛空艇も合体魔法でアンカーが吹き飛んだため、散開している。
今この瞬間、俺達に攻撃してくる他ギルドはいなかった。
操舵室から正面右手に飛空艇が集団になっているのが見える。
多くのギルドを巻き込んだ乱戦だな。
砲撃や魔法が乱れ飛んでいるのが見えた。
左手の方は飛空艇の数がまばらだ。様子見のギルドが多いのだろう。
さて乱戦に飛び込むか、密集が少ない所を狙って行くか――
「すまんコケ~、みんな。おいら留守番しかできんコケから、役に立てんコケ~。でも応援してるコケ! ポイントが増えてよかったコケ!」
「……」
うーん、待機させてるだけだと可哀想か?
ゴールデンイエロー・スウィーツで雇っておいたモンスターはこのバトルでは補充が効かないからな。何せ仲間に出来るモンスターがこのフィールドにいない。
リロード不能の弾が6発だけあるという状態のココールなので、弾は撃たせたくないのが本音だが――
このままずっと隠しておくばかりなのは、戦略的に見れば合理的ではあるが、ココールのメンタル的には辛いかも知れない。
これで自信を失ったせいで最後の最後で力が発揮できなかったりすれば、それはそれで戦略的な失敗になるわけだ。
論理的最適解が、最終的な最適解にならない場合もある。
人間ってヤツは理屈だけでは測れないのだ。
まあココールはNPCだけどな! でもそんなふうに見えるぞ。
俺的にココールをNPCだからと区別するつもりもない。
とりあえず、ココールには自信が必要だと俺は思う。
銭投げで雇ったモンスターを使うスタイルで本体は弱いが、立ち回り次第でちゃんと戦える。クジャータさんだって倒そうと思えば倒せるはずだ。
だが自信と言うやつは、人が言ったからといって急につくわけではないだろう。
成功体験が必要だな、成功体験が。
成功体験こそが自信を生むって、偉い人が言ってたぞ!
ゲームだったかリアルだったか忘れたが!
「よし、じゃあ右方向! 乱戦のど真ん中に突っ込むぞ!」
「だいじょぶですし? 大量点ゲットできるかもしれないけど、逆に大量点ゲットされる可能性もありますし」
「四位以内に入ろうと思ったら、大量点ゲットしねーと始まらんからな。敵は多けりゃ多い方がいい!」
「同感ですわね。ちまちまとやっていたのでは、勝っても負けても結局決勝には届きませんもの」
「よしっ! じゃあゴーゴー! コケ!」
これはココールのままのあきらだ。
「コケ! あきら、おいらの喋り方のマネ、上手だコケ~!」
「うんうん、実はこっそり練習しといたコケ!」
やっぱ練習してたんだな。
「分かったわ! じゃあ右に行くわね!」
がっちょん!
前田さんがニトロのレバーを引く。
今気が付いたが、アサルトアンカーの発射スイッチも舵輪の出っ張りがレバーになっているようだ。ニトロが赤のレバーでアサルトアンカーが青だな。
超加速で乱戦の空域に突っ込みながら、前田さんは言う。
「高代くん、私早速アサルトアンカーを試してみたいんだけど――」
「ん? 白兵戦したいのか?」
「いいえ。ニトロとゴールデンドリルと併用するの。敵の飛空艇にアンカーを撃ち込んだ状態で、まずニトロからのドリルの突撃を入れるでしょ?」
「ああ」
「で、すぐに回頭してまたニトロを発動して突撃するの。次もまた、すぐに回頭してニトロで突撃。滅茶苦茶な動きだけど、アンカーが繋がっていれば相手とそんなに距離が離れる事は無いし、方向転換もしやすいから、できると思うの」
「つまり飛空艇ごと相手の撃墜を狙うと?」
「ええ。それが出来れば一番いいでしょう?」
キラン! と前田さんの目が輝いている。うん、過激だ!
何かロボットアニメみたいな変態起動による連続突撃攻撃をイメージするぞ!
呆れるほどに有効な戦術的な何かって感じで……
ああしかし、やりたくてうずうずしてるって顔をしてらっしゃる。
試すのはいいんだが、ニトロ&ドリルの突撃殺法はこっちにもダメージが来るからな。
俺達はいいとして、ココールは二、三連打されたら天に召されるだろう。
変態起動やってる最中に回復は挟めないし、回復を挟むために動きを止めてしまったら効果は半減だろう。
敵を倒せてポイントを稼げても、ココールがバックドラフト死してたら意味がない。
ただ、前田さんの考えた呆れるほどに有効な突撃殺法は試してみたくはある。
上手くいけば、大量点が期待できる。
となると――うむ、これしかないな!
「よし――じゃあ一時的に二手に分かれるか! 俺とココールと赤羽さんは飛空艇から出て、前田さん達は今言った手を試す、で!」
まず前田さん戦術をやるにはココールが飛空艇の中にいてはまずいので、出てもらう。
出ると言っても単に出てリングアウトでは話にならないが、ココールはゴールデンイエロー・スウィーツでフロストイーグルを呼べる。
それを呼んでもらって、飛べる遊撃隊として別行動する。
なので能力的にもココールが必須だ。
で、フロストイーグルは三人まで乗せて飛べるので、俺も行く。
ちょっと奥義で暴れてこようかと!
俺との相性的には、もう一人はソードダンサーが欲しいのであきらか赤羽さん。
ココールの姿をしていることによる囮効果を考えると、あきらはココールと一緒にいない方がより敵の目を引き付けられる。というわけで赤羽さんをチョイスだ。
「いいなココール! 俺達は遊撃隊だ! フロストイーグルに乗って暴れに行くぞ!」
「分かったコケ~!」
「赤羽さんも頼むぜ!」
「ええ、よろしくてよ!」
赤羽さんは自信たっぷりに頷くのだった。
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