第146話 対人厨の嗜み
「これが――!?」
先輩のお気に入りの奥義か!?
確かにエフェクトは派手だが、軌道はさっきのトマホーク系と同じでは――?
避けようと思えば避けられる――だが、ここは俺はあえてガードに出る。
意図的にガード削りを受けてAPを溜めようという事だ。
今日は『パリィリング』は持っていないので、完全ガードしてしまうとAPが溜まらない。
だからこれまでも、あえて未だに俺の手持ちではガード性能最強の狂信者の杖は使わずにガード削りを受けていたのだ。
1でいいからダメージを貰っておけば、攻撃を喰らったという判定でAPが少し溜まる。
これはダメージに関わりなく一発あたりで貰えるので、理想は1ダメージを大量に貰う事になる。これまでは、まあまあいい感じだろう。
横目で見た所、本来の持ち主の矢野さんは『パリィリング』をつけて敵に攻撃をガードしている。『皆伝の証<盾>』のタレント持ちで盾装備できるから、矢野さんは『パリィリング』との相性が俺以上にいいのだ。
「よし――ガード!」
俺はダマスカスステッキベースの仕込杖で、輝くトマホークをガードする。
雪乃のインフィニティリバースが発動。蓮はガード。17のダメージ。
よしよし――! しかし……だ。
雪乃のインフィニティリバースが発動。蓮はガード。17のダメージ。
雪乃のインフィニティリバースが発動。蓮はガード。17のダメージ。
雪乃のインフィニティリバースが発動。蓮はガード。17のダメージ。
雪乃のインフィニティリバースが発動。蓮はガード。17のダメージ。
雪乃のインフィニティリバースが発動。蓮はガード。17のダメージ。
おお!? こいつ一発当たったら戻るとかじゃないのか!?
俺の仕込杖で組み止められつつも、ギャリギャリ回転を続けるのだ!
雪乃のインフィニティリバースが発動。蓮はガード。17のダメージ。
雪乃のインフィニティリバースが発動。蓮はガード。17のダメージ。
雪乃のインフィニティリバースが発動。蓮はガード。17のダメージ。
雪乃のインフィニティリバースが発動。蓮はガード。17のダメージ。
雪乃のインフィニティリバースが発動。蓮はガード。17のダメージ。
雪乃のインフィニティリバースが発動。蓮はガード。17のダメージ。
雪乃のインフィニティリバースが発動。蓮はガード。17のダメージ。
雪乃のインフィニティリバースが発動。蓮はガード。17のダメージ。
雪乃のインフィニティリバースが発動。蓮はガード。17のダメージ。
雪乃のインフィニティリバースが発動。蓮はガード。17のダメージ。
ギャリギャリギャリギャリギャリイィィィ!
いや、うんAPは大量に溜まってるけどさ!
未だに止まらない――!
考えている間にも視界がガード削りのログで埋め尽くされるんだが!
おい怖いぞこれ! マジで死ぬまで止まらんのか!?
ちょっとHPがヤバくなってきた! 残り1000ちょいになった!
元は2000超えてるから、もう50%くらいだ!
「うおおおおっ!? こいつ、ちょっと待てってば!」
流石に俺も斧を押し返しつつ、横に飛んで避けざるを得なくなった。
すると斧はぐるりと旋回し、再び俺の方に戻ってくるのである。
「誘導弾!?」
速度自体は、そこまで早くはない、避けようと思えば避けられる。
だが、ヤツは諦めない。俺が避けてもまた軌道を修正して向かってくる。
「どうだ蓮、面白いだろう!? そいつは何度でも折り返してお前を追うぞ! つまりは無限――インフィニティと言うわけだ!」
「なるほど――! 確かに面白い奥義っすね!」
流石に効果時間なり何なり、何らかの消滅条件はあるだろうが――
今すぐにそれを分かれと言っても……!
雪乃先輩の本体を撃破するくらいしかないか――!?
「そして――私もただ黙って見ているわけではないぞっ!」
更に雪乃先輩が動き出す!
『インフィニティリバース』を避けて飛んだ俺の着地を、正確に狙ってくる。
「こいつを受けてみるがいい!」
右のエメラルドグリーンの斧が繰り出される。
これまで出してこなかった右の斧での攻撃!
だがガードは間に合う!
ガキィン! と斧と仕込杖がぶつかり――
「っ!?」
俺は圧倒的な圧力で、後方に弾き飛ばされていた。
何だ!? あの斧に触れたら弾かれる!
「こいつはボレアスという斧でな――! 強ノックバック効果付きのレア装備だ!」
「なるほ……うおぉぉぉっ!?」
声を上げてしまったのは、ノックバックで弾き飛ばされた俺の身体がちょうど戻って来た『インフィニティリバース』に当たったからだ。
先輩はこれを計算して俺を吹っ飛ばしたのだ――流石対人戦マニアは強い!
雪乃のインフィニティリバースが発動。蓮はガード。117のダメージ。
雪乃のインフィニティリバースが発動。蓮はガード。117のダメージ。
雪乃のインフィニティリバースが発動。蓮はガード。117のダメージ。
雪乃のインフィニティリバースが発動。蓮はガード。117のダメージ。
背中を抉られ直撃のダメージが!
「だあああぁぁぁっ!」
何とか横に転がって避ける。しかし目の前には再び雪乃先輩が!
「もらったぞ、蓮!」
またガードさせられた!
またしても強ノックバックで吹き飛ばされ――
元々甲板の端に詰められていた俺の身体は、リングアウトして思いっきり空中に投げ出された!
「一撃ごとに相手を吹き飛ばしてしまうのは一長一短だが――こういう場所なら最大限に活きる! バトルフィールドに合わせて最適装備を選ぶのも、対人厨の嗜みだな!」
狙い通りだったのだろう。雪乃先輩は満足げだった。
「だあああああぁぁぁっ!? また――!?」
二機目のリングアウト負けとか――!?
いや、まだだ――!
「『ウィンドミル』!」
昇〇拳的に高く飛び上がる動きの杖アーツだ。
足場のない空中で発動しても飛び上がれてしまうのが、何ともゲーム的だができるものは仕方なし!
高く飛び上がった俺は、甲板から延びるアサルトアンカーの鎖にギリギリでしがみつく事に成功した!
「きゅ~! れん~! たしゅけるたしゅける~!」
リューが飛んできて、必死に俺の背中を咥えて引っ張り上げようとしてくれる。
その甲斐もあって、何とか鎖の上に登ることができた。
「よし……何とか生き残ったぜ――!」
土俵際でギリギリ踏みとどまったって感じですな!
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