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第142話 場外アウト

 やっちまった――!

 同盟する約束してたのに、初手でフレンドリーファイアかよ!

 先輩達の船、思いっきり穴あいて二つに折れそうなんだが……!?

 うわあぁぁぁー。ほむら先輩怒ってるなー……


「ちょっと表に出なさーーーいっ! 同盟だって言ったでしょ!?」


 俺は甲板に出て謝ることにする。


「すんませんすんませんすんません! 気づかなくて、つい……! 同盟を破ろうとかそういう気は一切無いんで! マジで不幸な事故で、すいませんでしたあぁぁぁっ!」

「ホントね!? 次やったらホントにブチ切れるわよ!」

「もうしませんもうしません、ごめんなさいごめんなさい!」


 ペコペコと何度も頭を下げる。

 あきら達も甲板に出て来て、全員で謝っておいた。


「ご、ごめんなさい高代くん、私が悪いのに――」


 と、ハンドルを離して冷静になったらしい前田さんが、ばつが悪そうにしていた。


「俺も行けって言ったし分からなかったからな。まま、次から気を付けようぜ」


 前に一度ほむら先輩の飛空艇は見ていたはずなのだが、こう数が多いと見過ごすよな。

 開幕でテンション上がってたし、いきなりニトロで超加速してたので、見逃しやすかったというのもある。


「ありがとう。もう失敗しないから」

「コケ~。蓮は優しいコケな~」

「いやいや、俺もやりたいようにやり過ぎて迷惑かける事が結構あるからな。持ちつ持たれつってやつだ」


 それに一応ギルドマスターだしな。


「じゃあ先輩、すいませんでした! ここから協力プレイでお願いします!」

「分かったわよ。そっちも頑張りなさいよ――!」


 よしじゃあ、もう一回操舵室に戻って――


 と思った俺達の耳に轟音が響いた。


 ドウゥン! ドウゥン! ドガアアァァァッ!


 遠距離からの砲撃だった。それが甲板に着弾し、炎と爆風をまき散らしたのだ。

 爆風で体が持っていかれ、俺達は操舵室の外壁に叩きつけられる。


 蓮は310のダメージを受けた!

 あきらは310のダメージを受けた!

 琴美は310のダメージを受けた!

 優奈は310のダメージを受けた!

 希美は310のダメージを受けた!

 ココールは310のダメージを受けた!


 全員にダメージのログが見える。


「いってて――! みんな大丈夫――」

「コケエエェェーーーーー!?」


 言い終える前にココールの悲鳴。

 ココールは運悪く壁に当たって止まらず、船外まで吹っ飛ばされそうになっていたのだ。

 これは、落ちる――!?


「ココールくん!」


 近くに飛ばされていたあきらが、助けようと手を伸ばす。

 何とかココールの羽を掴むことが出来たのだが、重いのかバランスを崩して一緒に落ちそうになる。


「れ、蓮くん早く助けてーー!」

「おうよ! ナイスだあきら!」


 俺はあきらに駆け寄って、後ろから体を抱えて引っ張る。

 すげー密着してるし、めっちゃ柔らかいけどセクハラじゃないからな! 不可抗力だ!

 だが俺には役得を楽しむ余裕は与えられず――


 ドガアアァァァッ!


 再び近くに大砲が着弾!


 蓮は310のダメージを受けた!

 あきらは310のダメージを受けた!

 ココールは310のダメージを受けた!


 巻き込まれたのは俺達三人だけだったが、今度こそ衝撃で三人とも船外に吹っ飛ばされた。


「だあああぁぁぁっ!?」

「きゃああぁぁぁっ!?」

「コケーーーーーー!」


 為す術なく、俺達はパラシュート無しのスカイダイビング状態に!

 ひえぇぇぇ! 風圧とかヤバい! この落下感もヤバい! 背筋がゾクゾクする!

 遊園地のフリーフォールなんぞ目じゃないくらいの恐怖感!

 ゲームなのにこの体感のリアルさはすごい!


「ひええぇぇぇーーー!」


 流石に俺は怖くて悲鳴を上げていた。


「うわああぁぁぁ! 空が綺麗ー! 大迫力だよおおぉぉぉっ!」


 しかし喜んでいるマイベストフレンドが! よく平気だなおい!


「疑似スカイダイビングだね! 楽しいかもー! リアルだと興味あっても絶対止められちゃうし!」

「ゲームでもリアルでも俺は興味ありませんがあぁぁぁ――!」

「もうどうしようもないし、楽しんだ方がいいじゃん! これも絶景だね、スクショ取れるかな~!?」


 と空中でカメラ撮影を試みようとする。

 流石絶景マニアはどんな時でも絶景に対して貪欲だな!

 しかしそれはそうとして、あきらと話して俺の中に閃いたことが一つ。

 もうどうしようもない――ってわけでもなかったりするかも知れないんだ、これが!


「おいココール! あれ呼ぼうぜ! フロストイーグル!」


 ココールのゴールデンイエロー・スウィーツで呼び出せるようにしておいたモンスターだ。

 レベル77の通常モンスターで、デッドリーキングに比べれば弱いがこいつは飛べるのである。

 しかもプレイヤーを背に乗せる事も可能。

 こんな事もあろうかと飛べるモンスターを仲間にしておいた。

 いきなりだが、ここは役に立ってもらおう――!

 しかし……!


「父ちゃん、母ちゃん――先立つ不孝をお許しくださいコケー……」


 ココールの体が点滅していた!


「!? おい、ココール? ココーーーーーールっ!」


 よく見ると、さっき見えたダメージログには続きがあったのだ。


 ココールは310のダメージを受けた! ココールは力尽きた……


 砲撃のダメージで死んでるうぅぅぅぅ! HPの低さが仇になったか……!

 ココールの姿が消滅。それからピロンとシステム通知音。


 悪魔の仕業(デモンズ・クラフト)のココール・サンダースが撃破されました。戦功ポイント-5。

 悪魔の仕業(デモンズ・クラフト)の合計戦功ポイントは-5です。現在48/48位です。


 わぁい最下位かよ! ご丁寧にログウィンドウの文字だけでなく、視界の端に順位もバンとでかく表示されている。

 こう、レースゲームの現在の順位表示的な奴だ。

 まぁ便利だが48/48を見せられるとちょっと焦るな。

 いやそれよりも――


「あーもうどうしようもねえなこれは!」

「あはははっ! もうどうにでもなーれ! まあここから巻き返していけばいいよ!」


 ホント、あきらさんは楽しそうだ。よくこんな恐怖体験を楽しめるな!

 そして、程無く俺の視界は真っ暗になった。

 で――


 悪魔の仕業(デモンズ・クラフト)の高代蓮が撃破されました。戦功ポイント-1。

 悪魔の仕業(デモンズ・クラフト)の青柳あきらが撃破されました。戦功ポイント-1。

 悪魔の仕業(デモンズ・クラフト)の合計戦功ポイントは-7です。現在48/48位です。


 うん、場外アウト! こりゃどうしようもなかった!

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