第140話 艦隊戦開始
「遅いですわよ、あきらさん。もう集合ですわよ?」
「あれ、希美さん? どうしたんですか?」
「いや、色々あって赤羽さんはウチのギルドのチームで参加してくれるそうな」
「あ、そうなんだ――」
「いやでも、そう決めたはいいが参加認められるのかな? 言いに行った方が――」
そこに、仲田先生のアナウンスが。
『え~只今真実の姿所属の赤羽希美さんが悪魔の仕業のチームで戦いたいと申請がありましたが問題はありません! システムメニューの最終バトルロイヤルのルールにもありますが、各プレイヤーは、バトルロイヤル開始時に乗り込んでいる飛空艇のギルドのチームに配属されます! では、バトルロイヤル開始まで残り十分です――! 各プレイヤーは飛空艇に乗り込んで待機して下さい』
む。お兄様が先生に言いに行ってくれたのか?
アレな感じだが気は利くんだなあ、あのお兄様は。
「なるほど――じゃあ、飛空艇に乗って待機しよ! 有馬さんは観客席に行って見ていて下さいね?」
「かしこまりました、お嬢様」
と、あきらと一緒に来ていた男の人が恭しく応じた。
家の人は家の人でも、お兄さんとかじゃないみたいだな。家で働いてる人か?
しかしお嬢様、か――やっぱあきらって凄いいいとこの子なんだよなあ。
俺みたいなのと毎日遊びまくってていいのだろうか――
「あきら、この人は?」
「有馬さんだよ。お爺さんの代から、三代続いてわたしの家で働いてくれてるの」
「お嬢様のご学友の方々ですね? いつもお嬢様がお世話になっております。本日もよろしくお願いいたします」
「あ、どうも――こちらこそお世話になってます」
俺達に向かっても、温和な笑みで丁寧にお辞儀して来る。
うむ――逆に何か居心地悪いな!
「うちは今日はみんな忙しくて来れないから、有馬さんが代わりにって」
「なるほど――」
「お嬢様、ですが構わないのですか? そちらは赤羽家のご息女の希美様では――?」
「たまたまですわよ。ゲームの中でくらい、現実の事は忘れて楽しんでもよろしいのではなくて?」
「無論、私はお嬢様がよろしければそれで構いませんが――」
「はい。構いません。有馬さん、心配いりませんから」
「かしこまりました。それでは私は観客席へ参りますので――ご健闘をお祈り申し上げます。ご主人様より、お嬢様のご活躍をしかと見届けるよう仰せつかっておりますから」
「ありがとうございます、有馬さん。ゲームには余り興味がないかも知れませんけど、できれば楽しんで下さいね」
「ええ。楽しみにさせて頂きます」
そして、有馬さんは丁寧に一礼すると観客席へと向かって行った。
「んじゃ俺達も行くわ。また後でなー」
「手心は加えぬぞ。全力でやらせてもらう」
「希美様! 今日は敵チームにいますが、ご命令とあればいつでも裏切りますんで、何なりと命令して下さい」
「いや、だから堂々と私の前で内通を宣言するなと――とりあえず行くぞ片岡殿」
片岡とクジャータさんも去っていき、俺達のギルドのチームだけが残った。
そうすると、あきらがふうと息をついた。
「……見ての通りだよ、家族は来てないけど代わりに有馬さんが見に来てるから、何かあったらお父さんたちに伝わっちゃう――気をつけて戦わないと」
「やっぱソードダンサー装備を見られたらマズいと?」
「うん、絶対マズいね……」
「そっか――今思うとソードダンサー勧めた俺が悪かったなあ、こういう風になるとは思ってなかったぜ。ごめんな、性能的な事しか考えてなくてさ」
「え? 蓮くんが謝らなくていいよお、結局選んだのわたしだし、ソードダンサーの性能自体は気に入ってるよ? 今日だけはこれで乗り切っちゃお!」
と、ミミックファンをばっと広げて見せる。
「これのおかげでやり過ごせるよ。みんなありがとうね」
まあこれで何とかなるか――そのために用意したんだもんな。
「面倒な話ですわねえ。ゲームの中の姿などに、そう目くじらを立てるものではありませんでしょうに。そちらは堅苦しいですわね」
「はぁ……希美さんの場合は竜太郎さんがいますから、目立たないでしょうけど――」
「いや、あきら。あの人今日は普通の格好してたぞ」
「ええぇぇっ!? じゃあびっくりしたでしょ、蓮くんもみんなも」
「ああ――メッチャしたな」
「ほんとですし! あのド変態があんなイケメンだとは――!」
「そうね。本当にね」
「でもそれならまだいいよ。わたしなんか先に中身知ってる上であれだからね? 一瞬わたしの方が目がおかしくなったんじゃないかって思ったもん」
「まぁ中身知った上であれだと確かに目を疑うわな……」
「あ! でも竜太郎さんが普通の格好で来るならセルフィはどうなるの? 一人だけ鉄仮面で可哀そうじゃない?」
「ああ、あの人に知らんぷりされて怒って帰ったぞ」
「ですし。実家に帰らせていただきますって」
「それで、NPCがいないと戦えないから不戦敗になったの」
「うわぁ~だから希美さんがこっちにいるんだ! セルフィがちょっと可哀そうだね」
「ええ――ですからわたくし達は負けるわけには行きませんわ。志半ばで散ったセルフィの分も勝たねばなりません――!」
「いや散ったと言うか何と言うか――とりあえずセルフィの分を俺達に背負わされるのは拒否したいんだが――」
「そうコケ~おたくのおかしな兄ちゃんのせいコケ~」
うむ、ココールよド正論だ。
『繰り返します。バトルロイヤル開始まで残り三分です――! 各プレイヤーは飛空艇に乗り込んで待機して下さい!』
仲田先生のアナウンスが響く。
「みんな、早く乗りましょう! さぁ腕が鳴るわ――! うふふふふ……!」
前田さんが瞳を輝かせて俺達を手招きした。
俺達はピーチサンダー号に乗り込み、そして――
『それでは――ギルド対抗ミッション最終バトルロイヤル艦隊戦! レデイィィ――ゴオォォーッ!』
さぁ艦隊戦がはじまるぞ!
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