第138話 謎のイケメン
「うちのココールが世話になっとりますコケ」
と、ココールの親父さんが俺達に頭を下げた。
コケ族の商人なんだよな確か、ココールは商人の息子だと言っていたし。
「この子、ご迷惑ではありませんでしたか? 戦いにはあまり向かない子ですから――」
と、お母さんが言う。
「いやいやそんな事ないですよ! レベルも滅茶苦茶上がってますし、十分優勝狙えますよ! 見ててください!」
「本当ですコケか? ココールお前、レベルはいくつになったコケ?」
「うん父ちゃん。一応レベルは100になったコケ~」
「コケーっ!? 100だとコケ!? とんでもない成長だコケ――!」
「まあ……そんなに!?」
「「「「にいちゃん、凄いピヨーっ!」」」」
ココールの家族全員がココールをキラキラした目で見つめている。
「だ、大丈夫かコケな~蓮……おいらレベルだけしか上がってないコケが……?」
「大丈夫だ、スキルの仕込はしただろ。いけるって、堂々としてろよ」
「わ、分かったコケ~」
と、そこにNPCの鳥人種の集団が通りかかった。
今日はクジャータさんはいないみたいだが、ココールを苛めていた奴らだ。
「む……お、ココールかよ」
「あ……」
ちょっと俺の背中に隠れるココール。やっぱり苦手のようだ。
まあそりゃそうか。ココールのためにも、ここは一発かましておかないとな。
「よう、あんたら! 調子はどうだ?」
「……ああん? 知った事かよ、敵に情報をくれてやる気はねえぜ」
「そうだそうだ。前は生意気言ってくれたが、今日はブッ潰してやるからな」
「おい分かったか! 弱虫ココールよぉ! 多少レベルが上がろうが、敵じゃねえ!」
いきり立つ鳥人種達。
こいつら俺達を狙ってきそうだな。
「ううぅ~……なんか目の敵にされてるコケよ~」
「大丈夫だココール! 一発かましてやろうぜ、いいか――」
と、耳打ち。
「えぇ!? 大丈夫かコケな~……」
「大丈夫だ行くぞ、おいあんたら!」
と、俺は鳥人種達にビシッと指を突き付ける。
「見ろよこのココールを――とうとうレベル100まで行ったぞ! これには追いつけねえだろ!? あんたらに勝ち目はねえぞ!」
まあレベル的に俺達もココールに追いつけてないけどな。
今回のバトルロイヤルのレベル制限は各ギルドのNPCのレベルまでだから、俺達もレベル100まで許されるんだが、そもそものレベルが71だからな……
そこはちょっともったいないが、レベル70あれば、他ギルドのレベルには遜色ない。
「な、なんだと……!」
「弱虫ココールのくせに生意気な――!」
「クックックックッ――コケ」
ココールが含み笑いを漏らしながら俺の陰から出る。
そして自信満々に自分で自分を指してみせる。
「おいらはもう昔のおいらじゃないコケ。蓮たちと出会って変わったコケ」
「なにぃ……!?」
「そう――おいらはただのココールではない……スーパーココールだコケ」
「……ココールの奴が!」
「なんて自信に満ちた顔をしてやがる――!」
「「「「に、にいちゃん、かっこいいピヨーっ!」」」」
よし、いいぞ! あいつらビビってるぞ!
警戒感を煽って、バトルロイヤルで集中攻撃を受けなくする作戦だ。
ココールは確かにレベル100まで上がっているが、その中身はハリボテ。
ゴールデンイエロー・スウィーツの仕込は出来ているが、ココール本体を集中攻撃されたらヤバイ。
そこがバレないように、ココール本体が強くなっているというポーズを取るべし。
下手に手を出したらただでは済まないと思わせなければならない。
その上で、艦隊戦の中ではココールの性能を見切られないように、指一本触れさせないようにして乗り切るべし。
そのための戦いはもう始まっているのだ。心理的駆け引きと言うやつですな。
「フッ……それは楽しみだ。このバトルロイヤルでは胸を貸してもらうとしよう」
む、クジャータさんが現れた。レベルは――75か。
つまりクジャータさんのところのギルドの連中はレベル75制限か。
まあそれなら俺達のレベルでも十分戦えるな。
「うわ、お前らのところのNPC、レベル100かよ。すげえな!」
クジャータさんと一緒に片岡も来ていた。
そう、クジャータさんのギルドは片岡の知識の泉なんだよな。
「おう片岡。お前今日は赤羽さんの従者じゃねーのかよ?」
「ふっ。チームは違えど全力で希美様の有利に働くように動くつもりだぜ? 各ギルドの人数は決まってるんだから、他のチームに従者が紛れ込んでる方がむしろ役に立つぜ」
まあ、各ギルドの参加人数はNPC含め六人までとなっている。
途中の入れ替えは自由らしいが、同時にバトルに参加できるのはNPCを除けば五人まで。自ギルドの五人に従者が他ギルドに一人いれば、まあ確かに有利か。
「いやしかし片岡殿、堂々と内通を宣言するのはどうかと思うのだが……?」
うむ、クジャータさんの言う通り。まあ他人事だから放っておこう。
「まあまあ、希美様を助けつつ、俺達も上位に残るようにすればいいんだろ。大丈夫だって。とりあえず希美様に挨拶に来たんだけどよ、今日は来てるか?」
「いや? でも確か停泊場所は隣の隣だったぜ」
と、タイムリーに俺たちに話しかけてくるNPCがいた。
「だが待って欲しい――どうも、おはようございます!」
あ、セルフィだ。今日も怪しい鉄仮面は相変わらずだ。
腕組みしてビシッとポーズしてるのがホントに不気味だ。
「お、おう……」
あー絡みたくないな……親に見られたら恥ずかしいんだが――
見ていたココールの弟のぴよぴよ達も、変なのが来たピヨーと脅えている。
「あら皆さん。ごきげんよう」
そこに通りかかる赤羽さん。
周りには家のガードマンか何かなのだろうか、黒服が警護についていた。
ああ、保護者参観システムでSPも連れてこれるのか……
すぐ後ろには、威厳を感じさせる正装の夫妻が。
こちらが赤羽さん家の親御さんか? やっぱ何かオーラがあるな。
赤羽さんは普通にソードダンサー装備で移動しているが、別に何も言われないんだな。
そして彼女の隣に、物凄いイケメンの背の高い男が一人――
この人も保護者参観システムでログインした家族か?
いやしかし、その謎のイケメンの頭上にはプレイヤーのネームが見えた。
赤羽竜太郎(3-A)
レベル208 ソードダンサー ギルドマスター(真実の姿)
「「「はあぁっ!?」」」
俺達は思わず声を上げていた。




