第135話 デッドリーキング、ゲットだぜ!
デッドリー・キングの大技『赤き災厄』の構えに合わせ、俺達は一斉にそれぞれの対処を行う。
その様子が、ばばっとログウィンドウに表示される。
優奈のスプリントが発動。優奈は俊足状態になった!
あきらのホークストライクが発動。
希美のハードスラッシュが発動。
蓮のファイナルストライクが発動。
前田さんはスキルの力による高速ダッシュで赤き災厄の範囲外に退避。
あきらと赤羽さんはくるりと後ろを向くと、それぞれ前方に高く飛び上がる系のアーツを発動。
アーツの動きをヤツの奥義の回避技として使うのだ。
俺だけファイナルストライク発動で回避の動作ではないが、ちゃんと次がある。
「よっしゃ行くぞ――! 奥義!」
俺は仕込杖を抜刀し、空高く放り投げた。
直後にそれを追って高くジャンプ!
杖アーツの『ウィンドミル』に比べても二倍くらい高い跳躍。
これはそういう動きの奥義なのだ。
ターンオーバー⇒人間木の葉落とし⇒抜刀術の合成奥義!
人間木の葉落としのモーションが、高く飛び上がりその落下の勢いで敵にダイビングボディプレスを喰らわせるという荒業なのである。
当て身系のアーツなので当然HPは消費する。
その消費を見越して、今回はMPを人間木の葉落としの消費HP分余らせておいた。
赤き災厄が来るのはヤツHPが半分以下になった時というのが分かっていたので、事前に調整できた。いわゆる経験が生きたってやつだ。
アホほどの跳躍だがこれはゲーム。何でもアリだ!
自分の体の感覚がありながらこんな非現実な機動ができるのは、すげー楽しい。
このゲームでしか楽しめない感覚ですな!
ズゴオオオオォォォォッ!
赤き災厄が発動。眼下の風景が赤く染まる。
空に舞う俺とあきらと赤羽さん。ダッシュで距離を取った矢野さん。
みんながそれぞれ退避した一瞬後に、吹き上がる赤い炎が俺達が元いた場所を焼き払ったのだ。
――よし回避成功だな!
そして――!
ジャンプした俺は、先に放り投げた仕込杖の中身の剣に追いついた。
剣の柄の上に乗って、ドッキング!
すると、剣と俺の体が青白いオーラに包まれる。
それはドラゴンの頭の形のをしている――すなわち、青竜だ。
「『下り青竜』っ! 行けええぇぇぇーーっ!」
青竜のオーラに包まれた俺と剣は、デッドリー・キングに向かって急速落下を始める!
いやちょっと落下速度が速すぎで怖いんですが!?
ズガシャアアアァァァァッ!
天から降って来た青竜が、真っすぐにデッドリーキングの脳天を撃った。
落ちてきた隕石がまともに直撃した感じである。リアルなら超低確率の大事故だ。
『人間木の葉落とし』のダイビングボディプレスと『抜刀術』の剣の抜打ちを合わせると、先に剣を空中に投げて飛び上がり、空中で柄に乗ってそのまま剣先から敵にダイブ! となるらしい。
うん、なるほど分からん! ダイビングソードプレスか?
しかし俺は好きだ! かっこいいし、今のように敵の攻撃を回避しながら繰り出せるという利点もある。
落ちてくる時に、きっちり腕組みでポーズを決めておくとよりカッコいいだろう。
今はまだ慣れていないので出来なかったが、出来るように練習だなこれは。
そして肝心のダメージの程は――
蓮の下り青竜が発動! デッドリー・キングに5735のダメージ!
うん、いいダメージだ!
回避動作も兼ねつつ『デッドエンド』を超えるダメージを叩き出してくる。
『人間木の葉落とし』用のAPが100必要だが、その分の見返りは十分だろう。
「ほいっ! アフターフォロー! 相変わらずとんでもない火力ですし!」
優奈のギルティスティールが発動。優奈は蓮のヘイトを全て盗んだ!
矢野さんがすかさず俺のヘイトを抜いてくれる。
これだけバンバン俺と矢野さんがスキルを撃ちまくれるのは、あきらと赤羽さんのダブルソードダンサーが『剣の舞い』を撒きまくってくれるおかげだ。
中の人問題はあるものの、やっぱりソードダンサーは有能だよな。
バトルにおける戦術の柔軟性を高めてくれるのだ。
それが二人いればなおの事だ。
「凄かったけどちょっと顔ひきつってたよ、蓮くん! もっとビシッと腕組みポーズでも決めて落ちてきて欲しかったかなー?」
と、デッドリー・キングに変身したままのあきらに突っ込まれる。
うーん、ホネホネキングに言われても可愛くないな!
「俺もそうしたかったけどな――!」
「仲がいいのは結構ですが、まだ敵は倒れていませんわよ!」
赤羽さんの言う通りだ。
「ああ分かってる! このまま行くぞ!」
俺達は『赤き災厄』に注意しつつデッドリー・キングを削り続ける。
途中何度か『赤き災厄』が来たが、先程と同じ対処でやり過ごした。
そして何度目かの――
「奥義――『下り青竜』っっっっ!」
ズガシャアアアァァァァッ!
蓮の下り青竜が発動! デッドリー・キングに5735のダメージ!
ようし、今度はちゃんとポーズも決めたぞ!
そしてそのダメージが、デッドリー・キングのHPバーを殆ど削り取った。
とうとう、デッドリー・キングはその場に膝を着く。
「グゥ――ヨカロウ……シカト見届ケタ。我ノ力ヲ貸ソウ――」
そう言うと体が点滅し始め、すうっと消えていく。
そして――
ココールのゴールデンイエロー・スウィーツが成功。
ココールはデッドリー・キングが招集可能になった!
よっしゃ成功! これでココールの戦力は大幅アップだ!
しかし一つ問題もある。
経験値も金も全然貰えないんですが!?
「そっか、仲間にしたから倒してない判定で経験値も金もドロップアイテムもなしか」
経験値もお宝も結構期待できたんじゃなかろうか。
せっかくのレアモンスター撃破なのに何も貰えないとはな――!
いやしかし、それを捨ててでも尖った性能を求めるのがロマン! これでいいんだ!
というわけで――デッドリー・キング、ゲットだぜ!




