第133話 俺達の戦いはこれからだ!
『ディアジルサークル』の鈍足フィールドを展開した俺達は、最下層から地上への道を走って行く。
途中通常モンスターのデッドリー・ジェネラルやらエンシェント・ドールやらも俺達を見つけてかかって来るが、やはり鈍足フィールドのおかげで簡単に避けて進むことができる。
一度脇を抜けてしまえば、サークルの効果が切れない限りあいつらは追いつかないしな。
しかも今回の俺は、あの時よりレベルが大幅にアップしMP量も十分。
ターンオーバーでHPMP入れ替えてMP補給せずとも、地上まで十分にMPは持つ。
もしMPが減ってターンオーバーしたのなら、その瞬間現HPMPが入れ替わるためHPは大幅に減る事になる。
するとこの大古墳エリアの壁に埋まっている生命感知型のクリムゾン・マミーが一斉に起きてかかって来る。
生命感知とはある程度HPの減ったプレイヤーを検知して襲って来る感知方法だ。
このアウミシュール大古墳は、生命感知に引っかかる=大量のマミーに襲われて死ぬというギミックが観光名所なのである。
「『ディアジルサークル』!」
効果が切れる前に、サークルを上書き。
一瞬足を止める事になるが、まだ敵の手は届かない。
再び走り出して、安定して距離を稼いでいく。
「うまく行ってるコケ~!」
「……」
このまま行けば、前回のようなクリムゾン・マミーの大トレインは起こさず地上に出られる――
だが――だが何というかこう……それでいいのか感がしてきたぞ。
やったら死ぬってわけでもなく、別に助かるしなあ……前回助かったんだからな。
「頑張れー! 蓮くんココールくん!」
「今死んだら50万無駄になりますし!」
「もう半分は戻って来たわ。しっかりね!」
「なるほど便利なサークル魔法の使い方ですわね――守護竜の存在が前提ですけれども」
あきら達もデッドリー・キングの少し後方から付いて来ている。
敵のターゲットは俺かココールに集まっているため、軽い見学気分である。運動会の応援的な。
うーむ、この美少女軍団の度肝を抜いてやりたいなーと思えてくるわけで。
前回あきら達は俺とは別行動で宝物庫を荒らしに行ったから、見てないんだよなあアレを。
あの超絶的な大トレインは、一度は見ておくべきだと思うんだ!
見ごたえあるし、スクショ映えもするだろう!
というわけで――
「『ディアジルサークル』!」
今度はかなりの大範囲にサークルを展開。
不必要に大きい子の範囲の心はつまり、MP捨てである。
俺のMPは残り11になっている。
「今度のサークルはでっかいコケな~」
何も知らないココールは、見たままを述べる。
よし――準備オーケー!
「ターンオーバー!」
スキル発動! これでHP11、MPが満タンとなる。
すると――
「「「「ウオオオオォォォン!」」」」
クリムゾン・マミー レベル78 いっぱい
来た来たー! お化け屋敷の手がいっぱい壁から出てくるやつ的な感じで、大量の赤いマミーがこんにちはだ!
「コケーーーっ!? うぎゃあああああ~~コケーーー!?」
ココールがこの世の終わりかって位に絶叫していた。
「「「「きゃああああああああ~~~!?」」」」
同時に後方の美少女軍団からも絶叫。
生命感知に引っかかったのは俺だから、俺が倒れないうちはあきら達が敵に襲われる事は無い。
だが俺に向かおうとするクリムゾン・マミー達の中にもみくちゃにされていた。
「止まるなよココール! ちゃんと逃げてれば大丈夫だからな!」
「言われなくても逃げるコケ~~! これはとんでもない事コケよ~!」
「ちょっと蓮くん! 今わざとでしょ! MP足りてたよねえぇっ!?」
「でもほら凄い眺めだろ!? こんなトレインめったに見れねえぞ! せっかくだからみんなに見せようと思ってさ!」
しかし相変わらず凄い絵だ。思わず笑えて来る。
このゲームやってて一度は見たい絶景ですな。
「はっはっは! 相変わらずすげー! はははははっ!」
「もー蓮くんってば! でもホントに凄いよこれえぇっ! ある意味絶景だね、これはスクショを取らざるを得ないっ!」
うんうんやっぱり最終的にはあきらは喜んでくれたな。さすが絶景マニア。
「で、でもこれどうすんのですし!?」
「こ、こんなに倒せないわよ――!?」
「大丈夫! 外まで出れば、デッドリー・キング以外は追ってこない! 前に検証済みだからな!」
さすがに逃げ切れないのにわざわざこれをやるはずがない。
安全に逃げ切れる自信があってのおふざけである。
真の戦いは地上に出てから。前回は結局デッドリー・キングさんに負けたからな。
「出口が見えたコケ~!」
「よっしゃ! 出るぞ!」
俺達は大古墳の外の地上へと飛び出した。
するとデッドリー・キング以外の敵は、見えない壁に阻まれて外に出てこれず取り残される。前に見た通りの現象だ。
「本当ですわね――敵が止まりましたわ……!」
赤羽さんが取り残されたモンスターの群れを振り返って言う。
そんな中、金ピカの鎧のデッドリー・キングだけが、外まで俺達を追走してきた。
「来たな――! さぁ俺達の戦いはこれからだ!」
「うわぁ……! なんかすっごい次が無さそうだね、それ!」
俺の軽口にしっかり反応してくれるあきらである。
さぁ――やるぞ!




