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第118話 魔改造ピーチサンダー号

「コケ―ッ!? セルフィがおかしくなってるコケ―!」


 ココールも変わり果てたセルフィの姿に驚いた様子だった。

 ドラフトの時は普通の美少女エルフNPCだったのに――

 今はピンクに塗られたフルフェイスのヘルメットにクリムゾンレッドの小さなスカーフマフラーに――

 下は流石に本家みたいに海パン一丁ってわけでは無く、普通に服を着てるが……

 あ、このヘルメットの方、前にあきらが赤羽さんにあげて嫌がられてたやつじゃ……!?


「郷に入れば郷に従えと申しますし、お世話になっているギルドの流儀に従っているまでです」


 と、鉄仮面の奥から穏やかでやや能天気にも感じるような声がした。

 割と平気そうだなー……結構天然なのかこの子は。


「どうですかココール? 結構決まっていますでしょ?」

「お、おいら蓮たちの所で良かったコケー……」


 とココールは言うが、まあココールの体型だと別にヘルメット被ってもそこまで怪しくはならないな。

 むしろちょっと可愛くなるかもしれない。丸っこいニワトリの体だからな。


「セルフィさんはお兄様とお話になって意気投合されたようで、真似をしてらっしゃるの」


 と、赤羽さんが説明した。どういうセンスなんだ、ヤツと意気投合できるとは――

 しかしレベルはドラフトの時に見たレベル62のままだな。

 確かにレベル上げには苦戦しているようだ。

 まあこの子なら、何も上げなくてもレベル高いし、かなり戦えそうだが。


「はい! 抜群のレベルをお持ちの上に心がお優しくて殺生を好まない――素晴らしいお方です、私もあの方のようになりたい!」


 と、あの人の腕組みをするかっこいいポーズを真似して見せる。

 怪しい……どういうセンスなんだ。まあ本人が幸せならそれでいいが。

 他の候補で言うと悪役中の悪役(ヒール・ザ・ヒール)のアルフレッド君とかは本人真面目で凄いいい人っぽいのに、ギルドの悪さの片棒担がされて悲しんでたから、そういう意味ではセルフィちゃんの方が幸せなのかもしれない。

 いや、俺達から見たら可哀そうに……としか思えんが。


「……矢野さん、大丈夫か?」

「あーうん、まあ下は服着てるし、耐えられなくはないですし……」


 それでも若干嫌そうだが。


「ははは――じゃあまあ、早速レベル上げに行こっか?」


 気を取り直してあきらが音頭を取る。

 俺達は全員頷いて、操舵室に入った。

 ちゃんと入っとかないと吹っ飛ばされるからな――多分。

 きっちり手すりも持って踏ん張って、と。

 そうしないとどうせ前田さんがアレやるからな、アレ。


「リューはちゃんと俺につかまっとけよ」

「れんにぎゅーする~」


 舌ったらずな言葉が返って来る。

 ちょっとずつ喋れるようになって来てるなー。


「赤羽さんとセルフィもな」

「分かったコケ」

「ええ」

「わかりましたっ!」


 で――前田さんがおもむろに飛空艇の舵輪に手をかける。

 舵輪の外周の取っ手が赤くなっているのがニトロのスイッチだが、俺達のMEP(メリットポイント)を全投入した渾身のカスタムにより、赤い取っ手が8個に増えていた。

 これはもう昨日のピーチサンダー号とは似て異なる何かだな――

 いわば魔改造ピーチサンダー号ですな! 俺もこいつのパフォーマンスが楽しみだぜ。


「じゃあ、出発するわね!」


 前田さんがそう宣言し――


 がっちょん!


 やっぱな! いきなりニトロだった。予想通り!

 2回目の俺達は前田さんの行動パターンの予想がついていた。

 だから手すりにつかまって踏ん張れたが、赤羽さんとセルフィは初体験。

 俺が注意していたもののやはり油断があったらしく、思いっきりバランスを崩していた。


「きゃあっ!?」

「うわああっ!? こっちくんなですし!」


 セルフィに抱き着かれた矢野さんが、気味悪そうにしていた。

 どうにももうあのフルフェイスのヘルメット自体に拒否感を感じているらしい。


「きゃあああっ!?」


 赤羽さんも悲鳴を上げて、彼女は俺に抱き着くような格好になった。

 で、運の悪い事に俺の頬にキスするような感じになってしまった。


「す、すみません……! 失礼しました――」

「あ、ああ。大丈夫、しっかり手摺に捕まってないとヤバいぞ」


 まあ役得? なのかも知れないが――


「…………」


 あきらが物凄いジト目でこっちを見ていた。


「ち、違いますのよあきらさん! これは不幸な事故で――!」


 俺より赤羽さんの方が慌てていた。

 まあ赤羽さんは俺に興味があるわけじゃなくて、あきらと仲良くしたいわけだからな。


「わたし希美さんと仲良くなれるかもって思ったけど、あれはそういう夢だったんですね――」

「ああああ! ち、違いますのよ、それは現実ですから――!」


 哀れなくらい慌てふためいていた。

 そんな中前田さんは、がっちょんがっちょんニトロのレバーを引っ張っていた。


「はえええええええーーーコケ! 前よりとんでもなく速くなってないかコケーーー!?」

「ふふふふっ♪ ニトロが同時使用できるみたいなの! これも検証ね!」


 ニトロは発動したら30秒間加速する。

 それを切れ目なく発動すれば常時ニトロになるが、8連装を同時発動も出来るらしい。

 それが前のニトロより明らかに早い超速を生み出していたのだ。

 一瞬で他ギルドの飛空艇が『空の裂け目』の争奪戦を演じている空域にたどり着くと、同一方向に進む飛空艇をごぼう抜きしていく。

 ちょうど右前方に『空の裂け目』が生み出されていた。

 しかしこれ、直進はめちゃめちゃ早くなったがうまく方向転換できるのか――!?


「さぁ、あれに入るわよ!」


 前田さんが舵を切る。ギャリギャリ音を立てて舵輪が回る。

 船体がドリフトでもするように横に傾ぎつつ、方向転換をした。

 俺達はそれぞれに悲鳴を上げて手摺に強くしがみ付く。

 滅茶苦茶揺れる! かなりハイレベルな絶叫マシーン的な乗り心地だ!

 結果見事にピーチサンダー号は後方から他ギルドをぶち抜いて『空の裂け目』に侵入できた。


「やったわ! やったわよみんな! これでもう『空の裂け目』に入り放題よ!」


 中のインスタンスダンジョンに転送されると前田さんは喜んでいたが――


「「「「あ~~気持ち悪い……」」」」


 俺達は揺られてグロッキー状態なんだが……よく平気だな前田さんは。

 だがせっかく中に入ったし、レベル上げをしないとだ――

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